Baseball Freak 主砲の一振り 7

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梅雨入り 6月後半

とんだ結末

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【3番…ショート白石…背番号5…】

徐々にやる気の無いトーンでアナウンスされた白石が静かに打席に入る。


ここまでの成績は、打率.332 本塁打12 打点36 出塁率は.401と天才の名に相応しい数字を残している。



「オォ、天才バッターの登場だ。お手柔らかに頼むぜ」


「…」


与那嶺が話しかけても、白石はシカトしている。


「おい、何シカトしてんだよ」


「…」


いくら話しかけても返事をしない。


(クソ生意気なヤツだ。遠慮しねぇで、初球から脅してやれ)


例によって、ブラッシュボールを要求した。



(個人的な恨みだけで危険球スレスレの球要求してくんじゃねぇよ!)


澁谷にとしては、何の恨みも無いバッターに対して、ブラッシュボールを投げるのはどうかと疑問に思っていた。



「おい、早く投げろよ!」


ホームプレートから与那嶺が促す。


「ったく、ふざけやがって」


この二人はいつも息が合わない。


モヤモヤした気持ちを抱えながらも初球を投げた。


胸元を突くボールだが、それ程危険ではない。


白石はワザと仰け反る。


「ボールワン!」


「アレェ、天才バッターのクセに避け方が下手くそだな」


与那嶺はその様子を見て嘲笑う。


「…」


白石は無言のまま、何事も無かったかのようにバットを構えた。


「お坊ちゃまには厳しすぎたコースだったかな」


「さっきからベラベラとうるせぇヤツだな…こんなのが正捕手なんて、ヤンキースも大した事ないな」


「アァ!テメー、今何つった?」


与那嶺の表情が一変した。


「気にするなよ、独り言だ」


涼しい顔で言い放つ。



(コイツは痛い目に遭わなきゃならんみたいだな)


今度は膝元を直撃するコースを要求した。



(アイツ、絶対野球するつもりはないんだな)


澁谷は呆れて何も言う気すら起こらなかった。


(この回チェンジになったら、キャッチャーを交代してもらおう)


こんなヤツとバッテリーを組みたくない、心底そう思った。


そして2球目を投げた。


足元を襲う143 km/hのストレート。だが、白石はそれを振り払うかのようなスイングでカット。


ゴツ…


次の瞬間、白石のバットが与那嶺の側頭部を直撃。


「ウグァ…」


与那嶺は頭を抑えて倒れている。


ヘルメットを被っていたとは言え、バットのヘッドが頭部を直撃した。



「テ、テメー…今のはワザとだろ」


「ワザと?そんなバカな!そもそも、お前がそんな近くにいるから当たるんだろうが!」


白石は気づかれないよう、少しづつ打席の後ろに下がっていた。


この位置で大振りすれば、与那嶺の頭部に当たる事になる。


「ふざけやがって…」


側頭部を抑えながら起き上がる。


「主審、今のは何らかの妨害になりますか?」


白石は主審に問いかけた。


「いや、今のは不可抗力だ」


主審は問題ないと言う。



「ふざけんなよ!今のは完全な守備妨害だろ!」


すると主審は与那嶺にこう告げた。



「何が守備妨害だ!さっきから危険なコースばかり投げさせてるのはお前の指示だろ!」


「グッ…」


「退場にならないだけありがたいと思え!」


主審は一喝した。


「あぁ、主審。いっその事、退場にしてくれませんかね?コイツ、ぶつけようとするコースばかり要求するんで」


味方の澁谷までが与那嶺の悪事を暴露する。



「退場!」


すかさず主審が退場を宣言した。



「ウソッ!」



こうして与那嶺は退場となった。


しかし、試合は3-2で惜しくもGlanzが敗れた。
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