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梅雨入り 6月後半
とんだ結末
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【3番…ショート白石…背番号5…】
徐々にやる気の無いトーンでアナウンスされた白石が静かに打席に入る。
ここまでの成績は、打率.332 本塁打12 打点36 出塁率は.401と天才の名に相応しい数字を残している。
「オォ、天才バッターの登場だ。お手柔らかに頼むぜ」
「…」
与那嶺が話しかけても、白石はシカトしている。
「おい、何シカトしてんだよ」
「…」
いくら話しかけても返事をしない。
(クソ生意気なヤツだ。遠慮しねぇで、初球から脅してやれ)
例によって、ブラッシュボールを要求した。
(個人的な恨みだけで危険球スレスレの球要求してくんじゃねぇよ!)
澁谷にとしては、何の恨みも無いバッターに対して、ブラッシュボールを投げるのはどうかと疑問に思っていた。
「おい、早く投げろよ!」
ホームプレートから与那嶺が促す。
「ったく、ふざけやがって」
この二人はいつも息が合わない。
モヤモヤした気持ちを抱えながらも初球を投げた。
胸元を突くボールだが、それ程危険ではない。
白石はワザと仰け反る。
「ボールワン!」
「アレェ、天才バッターのクセに避け方が下手くそだな」
与那嶺はその様子を見て嘲笑う。
「…」
白石は無言のまま、何事も無かったかのようにバットを構えた。
「お坊ちゃまには厳しすぎたコースだったかな」
「さっきからベラベラとうるせぇヤツだな…こんなのが正捕手なんて、ヤンキースも大した事ないな」
「アァ!テメー、今何つった?」
与那嶺の表情が一変した。
「気にするなよ、独り言だ」
涼しい顔で言い放つ。
(コイツは痛い目に遭わなきゃならんみたいだな)
今度は膝元を直撃するコースを要求した。
(アイツ、絶対野球するつもりはないんだな)
澁谷は呆れて何も言う気すら起こらなかった。
(この回チェンジになったら、キャッチャーを交代してもらおう)
こんなヤツとバッテリーを組みたくない、心底そう思った。
そして2球目を投げた。
足元を襲う143 km/hのストレート。だが、白石はそれを振り払うかのようなスイングでカット。
ゴツ…
次の瞬間、白石のバットが与那嶺の側頭部を直撃。
「ウグァ…」
与那嶺は頭を抑えて倒れている。
ヘルメットを被っていたとは言え、バットのヘッドが頭部を直撃した。
「テ、テメー…今のはワザとだろ」
「ワザと?そんなバカな!そもそも、お前がそんな近くにいるから当たるんだろうが!」
白石は気づかれないよう、少しづつ打席の後ろに下がっていた。
この位置で大振りすれば、与那嶺の頭部に当たる事になる。
「ふざけやがって…」
側頭部を抑えながら起き上がる。
「主審、今のは何らかの妨害になりますか?」
白石は主審に問いかけた。
「いや、今のは不可抗力だ」
主審は問題ないと言う。
「ふざけんなよ!今のは完全な守備妨害だろ!」
すると主審は与那嶺にこう告げた。
「何が守備妨害だ!さっきから危険なコースばかり投げさせてるのはお前の指示だろ!」
「グッ…」
「退場にならないだけありがたいと思え!」
主審は一喝した。
「あぁ、主審。いっその事、退場にしてくれませんかね?コイツ、ぶつけようとするコースばかり要求するんで」
味方の澁谷までが与那嶺の悪事を暴露する。
「退場!」
すかさず主審が退場を宣言した。
「ウソッ!」
こうして与那嶺は退場となった。
しかし、試合は3-2で惜しくもGlanzが敗れた。
徐々にやる気の無いトーンでアナウンスされた白石が静かに打席に入る。
ここまでの成績は、打率.332 本塁打12 打点36 出塁率は.401と天才の名に相応しい数字を残している。
「オォ、天才バッターの登場だ。お手柔らかに頼むぜ」
「…」
与那嶺が話しかけても、白石はシカトしている。
「おい、何シカトしてんだよ」
「…」
いくら話しかけても返事をしない。
(クソ生意気なヤツだ。遠慮しねぇで、初球から脅してやれ)
例によって、ブラッシュボールを要求した。
(個人的な恨みだけで危険球スレスレの球要求してくんじゃねぇよ!)
澁谷にとしては、何の恨みも無いバッターに対して、ブラッシュボールを投げるのはどうかと疑問に思っていた。
「おい、早く投げろよ!」
ホームプレートから与那嶺が促す。
「ったく、ふざけやがって」
この二人はいつも息が合わない。
モヤモヤした気持ちを抱えながらも初球を投げた。
胸元を突くボールだが、それ程危険ではない。
白石はワザと仰け反る。
「ボールワン!」
「アレェ、天才バッターのクセに避け方が下手くそだな」
与那嶺はその様子を見て嘲笑う。
「…」
白石は無言のまま、何事も無かったかのようにバットを構えた。
「お坊ちゃまには厳しすぎたコースだったかな」
「さっきからベラベラとうるせぇヤツだな…こんなのが正捕手なんて、ヤンキースも大した事ないな」
「アァ!テメー、今何つった?」
与那嶺の表情が一変した。
「気にするなよ、独り言だ」
涼しい顔で言い放つ。
(コイツは痛い目に遭わなきゃならんみたいだな)
今度は膝元を直撃するコースを要求した。
(アイツ、絶対野球するつもりはないんだな)
澁谷は呆れて何も言う気すら起こらなかった。
(この回チェンジになったら、キャッチャーを交代してもらおう)
こんなヤツとバッテリーを組みたくない、心底そう思った。
そして2球目を投げた。
足元を襲う143 km/hのストレート。だが、白石はそれを振り払うかのようなスイングでカット。
ゴツ…
次の瞬間、白石のバットが与那嶺の側頭部を直撃。
「ウグァ…」
与那嶺は頭を抑えて倒れている。
ヘルメットを被っていたとは言え、バットのヘッドが頭部を直撃した。
「テ、テメー…今のはワザとだろ」
「ワザと?そんなバカな!そもそも、お前がそんな近くにいるから当たるんだろうが!」
白石は気づかれないよう、少しづつ打席の後ろに下がっていた。
この位置で大振りすれば、与那嶺の頭部に当たる事になる。
「ふざけやがって…」
側頭部を抑えながら起き上がる。
「主審、今のは何らかの妨害になりますか?」
白石は主審に問いかけた。
「いや、今のは不可抗力だ」
主審は問題ないと言う。
「ふざけんなよ!今のは完全な守備妨害だろ!」
すると主審は与那嶺にこう告げた。
「何が守備妨害だ!さっきから危険なコースばかり投げさせてるのはお前の指示だろ!」
「グッ…」
「退場にならないだけありがたいと思え!」
主審は一喝した。
「あぁ、主審。いっその事、退場にしてくれませんかね?コイツ、ぶつけようとするコースばかり要求するんで」
味方の澁谷までが与那嶺の悪事を暴露する。
「退場!」
すかさず主審が退場を宣言した。
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こうして与那嶺は退場となった。
しかし、試合は3-2で惜しくもGlanzが敗れた。
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