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梅雨入り 6月後半
やっぱり乱闘
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「ソッチがその気なら、コッチも別モードでやらせてもらうぜ」
「アァ、、何だ、別モードって?」
そう言うと、石川はバットをやや上段に構え、覆い被さる様なフォームで待ち構える。
「何だありゃ?あの構えじゃ、ストライクゾーンでも当たるんじゃないか?」
気でも狂ったか、とばかりに澁谷は鼻で笑った。
「オイオイ…打てないからって、変な構えで当たりにいこうとしてないか?」
「いいから、サッサとサイン出せよ。
コッチは構えてんだからよ」
Glanzのキャプテンという立場上、ハデな事は控えてきたが、大学時代は武闘派で鳴らしてきた強者だ。
あまり知られてないが、石川は柔道の有段者で、ケンカでは無類の強さを発揮する。
「デケー口叩くのも今のうちだ」
与那嶺がサインを出した。
澁谷はロジンを再び手にし、入念に馴染ませてから2球目を投げた。
再びインコース、今度は足元目掛けて146 km/hのストレートが唸りをあげる。
すると、石川はボールを避けながらバットがすっぽ抜けた様に見せかけ、投げつけた。
「っ!…」
バットはクルクル回りながら澁谷の右肩付近に飛んできた。
咄嗟に避けたが、一歩間違えたら大怪我どころではない。
「テメーっ!今の狙ったろ!」
澁谷が激高してマウンドから下りてきた。
「悪ぃな、手が滑ったんだよ。これでおあいこだからいいじゃんかよ」
今のでチャラだと主張する。
「ふざけんな、何がチャラだ!ワザとのクセしやがって!」
「だったら、証拠はあるのかよ?」
「グッ…」
「これでお互い様だろ!変なマネせず、堂々と勝負してみろよ!」
「何ぃ!」
「それとも、打たれるのが怖いからぶつけようとしてんのか?」
石川は尚も挑発する。
「やってやろうじゃねぇか!テメーなんざ、三振で抑えてやらぁ!」
澁谷は頭に血が上っている。
「おい、落ち着け!カッカしたから、アイツの思うつぼだぞ!」
与那嶺がマウンドに駆け寄り、澁谷を落ち着かせている。
「でもよぉ!」
「でもじゃねぇよ!ここでキレたら、アイツの思うつぼだぞ!」
「キレてないですよ」
「うるせえ黙れ!」
どうにか澁谷をなだめすかし、落ち着きを取り戻した。
「アレで気を取り直したつもりかよ」
石川は見逃さなかった。
落ち着きを取り戻したかのように見えるが、澁谷はかなりの短気だ。
「よぉ、少しは頭冷やしたか?」
「んだと、コラァ!」
石川は次の球にヤマを張った。
(次もストレート、しかも甘く入ったコースになるハズ)
しかし、リードするのは与那嶺だ。
与那嶺の出すサインは、もう一度威嚇する為にインコースを要求した。
(マジかよ…これ投げたら、危険球で退場食らうんじゃねぇか)
澁谷もやや躊躇したが、先程バットを投げつけられた恨みもある。
(当てなきゃ大丈夫だろ)
そう思い、再びインコースへ投げた。
(またインコースか)
読みが外れた石川は咄嗟にバットを出すが、ボールは右前腕部に当る。
「ウグッ…」
「ストライクツー!」
だが審判の判定はストライクだった。
「オォ、ラッキー♪」
「ふざけんな、どこがストライクだよ!当たってんじゃねぇか!」
石川が抗議をするが判定は覆らない。
「バカか、おまえは!スイングしたら、当たってもストライクになるだろうが!そんな事も分かんねえで野球やってんかよw」
与那嶺の言う通り、いくらボールが当たっても、バットを振ればストライクと宣告させる。
「…んな事は分かってらぁ!オレが言いたいのは、今の球もワザと当てにいったんだろうって事だ!」
「今の球は打てると判断したからバットを振ったんじゃなのか?」
主審が石川に問う。
「そ、それは読みが外れただけで」
「何れにせよ、振ったからにはストライクと言わざるを得ない」
主審は毅然とした態度だ。
「ハ、ハイ…」
(このバーカ!こんなヤツは外の変化球でカンタンに打ち取ってやれ)
今ので冷静さを欠いた石川は、外の変化球にも簡単に手を出すだろうと読んだ。
案の定、石川は外に逃げるチェンジアップを引っ掛けセカンドゴロに倒れた。
「クソッタレが!」
悔しさを滲ませベンチへ下がる。
「何とか危険球退場にならずに済んだ…
たまにはアイツのリードも頼りになるなぁ」
澁谷はマウンド上でほくそ笑む。
【2番…センター?誰この黒人…あぁクロフォードぉ?背番号24!】
やる気の無いアナウンスでクロフォードが打席に向かった。
「アァ、、何だ、別モードって?」
そう言うと、石川はバットをやや上段に構え、覆い被さる様なフォームで待ち構える。
「何だありゃ?あの構えじゃ、ストライクゾーンでも当たるんじゃないか?」
気でも狂ったか、とばかりに澁谷は鼻で笑った。
「オイオイ…打てないからって、変な構えで当たりにいこうとしてないか?」
「いいから、サッサとサイン出せよ。
コッチは構えてんだからよ」
Glanzのキャプテンという立場上、ハデな事は控えてきたが、大学時代は武闘派で鳴らしてきた強者だ。
あまり知られてないが、石川は柔道の有段者で、ケンカでは無類の強さを発揮する。
「デケー口叩くのも今のうちだ」
与那嶺がサインを出した。
澁谷はロジンを再び手にし、入念に馴染ませてから2球目を投げた。
再びインコース、今度は足元目掛けて146 km/hのストレートが唸りをあげる。
すると、石川はボールを避けながらバットがすっぽ抜けた様に見せかけ、投げつけた。
「っ!…」
バットはクルクル回りながら澁谷の右肩付近に飛んできた。
咄嗟に避けたが、一歩間違えたら大怪我どころではない。
「テメーっ!今の狙ったろ!」
澁谷が激高してマウンドから下りてきた。
「悪ぃな、手が滑ったんだよ。これでおあいこだからいいじゃんかよ」
今のでチャラだと主張する。
「ふざけんな、何がチャラだ!ワザとのクセしやがって!」
「だったら、証拠はあるのかよ?」
「グッ…」
「これでお互い様だろ!変なマネせず、堂々と勝負してみろよ!」
「何ぃ!」
「それとも、打たれるのが怖いからぶつけようとしてんのか?」
石川は尚も挑発する。
「やってやろうじゃねぇか!テメーなんざ、三振で抑えてやらぁ!」
澁谷は頭に血が上っている。
「おい、落ち着け!カッカしたから、アイツの思うつぼだぞ!」
与那嶺がマウンドに駆け寄り、澁谷を落ち着かせている。
「でもよぉ!」
「でもじゃねぇよ!ここでキレたら、アイツの思うつぼだぞ!」
「キレてないですよ」
「うるせえ黙れ!」
どうにか澁谷をなだめすかし、落ち着きを取り戻した。
「アレで気を取り直したつもりかよ」
石川は見逃さなかった。
落ち着きを取り戻したかのように見えるが、澁谷はかなりの短気だ。
「よぉ、少しは頭冷やしたか?」
「んだと、コラァ!」
石川は次の球にヤマを張った。
(次もストレート、しかも甘く入ったコースになるハズ)
しかし、リードするのは与那嶺だ。
与那嶺の出すサインは、もう一度威嚇する為にインコースを要求した。
(マジかよ…これ投げたら、危険球で退場食らうんじゃねぇか)
澁谷もやや躊躇したが、先程バットを投げつけられた恨みもある。
(当てなきゃ大丈夫だろ)
そう思い、再びインコースへ投げた。
(またインコースか)
読みが外れた石川は咄嗟にバットを出すが、ボールは右前腕部に当る。
「ウグッ…」
「ストライクツー!」
だが審判の判定はストライクだった。
「オォ、ラッキー♪」
「ふざけんな、どこがストライクだよ!当たってんじゃねぇか!」
石川が抗議をするが判定は覆らない。
「バカか、おまえは!スイングしたら、当たってもストライクになるだろうが!そんな事も分かんねえで野球やってんかよw」
与那嶺の言う通り、いくらボールが当たっても、バットを振ればストライクと宣告させる。
「…んな事は分かってらぁ!オレが言いたいのは、今の球もワザと当てにいったんだろうって事だ!」
「今の球は打てると判断したからバットを振ったんじゃなのか?」
主審が石川に問う。
「そ、それは読みが外れただけで」
「何れにせよ、振ったからにはストライクと言わざるを得ない」
主審は毅然とした態度だ。
「ハ、ハイ…」
(このバーカ!こんなヤツは外の変化球でカンタンに打ち取ってやれ)
今ので冷静さを欠いた石川は、外の変化球にも簡単に手を出すだろうと読んだ。
案の定、石川は外に逃げるチェンジアップを引っ掛けセカンドゴロに倒れた。
「クソッタレが!」
悔しさを滲ませベンチへ下がる。
「何とか危険球退場にならずに済んだ…
たまにはアイツのリードも頼りになるなぁ」
澁谷はマウンド上でほくそ笑む。
【2番…センター?誰この黒人…あぁクロフォードぉ?背番号24!】
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