Baseball Freak 主砲の一振り 7

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梅雨入り 6月後半

ヤンキース対策

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Glanzのスターティングメンバー


1 (二) 石川 8
2 (中) クロフォード24
3 (遊) 白石 5
4 (一) 徳川 23
5 (指) 麻生 22
6 (左) 乃木 50
7 (三) 山下 57
8 (右) 藤村 46
9 (補) 比村 27


   (投) 降谷 14 


Glanzはヤンキース対策として、不測の事態にも対応出来るメンバーをスタメンに連ねた。


特に下位打線の乃木、山下、藤村、比村の4人はバリバリの武闘派でもあり、ヤンキー揃いのヤンキースを前にしても一歩も引くこと無く、乱闘も辞さない構えだ。


最近は鳴りを潜めているヤンキースだが、何時またラフプレーを仕掛けてくるか分からない。


そうなる事を予測したメンツを揃え、野球でもケンカでも五分に渡り合える猛者で固めた。




対するヤンキースのスターティングメンバー


1 (遊) 久住 7
2 (中) 国分 1
3 (補) 与那嶺 22
4 (右) 王 88
5 (一) 山本 3
6 (三) 若菜 4
7 (指) 不破 9
8 (左) 前田 5
9 (二) 林 0


   (投) 澁谷 14


ヤンキースは今年から台湾出身の助っ人二人をレギュラーで起用している。


セカンドを守る呉 明晋(ウー ミンチン)は俊足好打のスイッチヒッター。

今年は恐怖の9番バッターとして、打率.286をマーク。

出塁率も高く、塁に出れば積極的な走塁で13個の盗塁を成功させる。


もう一人は、4番を打つ王 明賜(ワン ミンス)は左の長距離砲で、ホームランランキング3位の18本をマーク。


引っ張り専門のプルヒッターで三振が多いのが欠点だが、選球眼は悪くない。


この二人は陳ヘッドコーチが直々にアドバイスして日本の野球に対応出来るプレーを身につけた。





「なぁ、青幇」

「どうしたネ、朋友」


ヤンキースベンチでは守山と陳が話をしている。


「かつては黄金時代を築いたヤンキースが、今では東地区最下位という体たらくだ…
全く、嘆かわしい事だ」


「ホントね、オレたちが現役の頃は何度も連覇したというのに」


その中心選手だった二人だけに、今の順位は歯がゆいに違いない。


「そろそろ首位のチームをぶっ叩いておかないとな」


「フッ…それなら心配いらないヨ。
ちゃんと手は打ってあるネ」


陳がニヤッと笑みを浮かべ、助っ人の両選手を呼んだ。


「您叫我了嗎,教練?(お呼びでしょうか、コーチ?)」


呉と王は直立不動で陳の前に立つ。


「打碎它(ぶっ潰せ)」


「知道了(承知しました)」




片や、そんな物騒な企みを知らぬGlanzベンチでは、相変わらずひろしが能天気に口を開く。


「私わかります(^ ^)」


「アァ?何がだ」


「今日は勝てるような気がしますち!」


「気がしますじゃなくて、勝たなきゃなんないの!分かる?」


「んだな(^^)」



何が言いたいのやら。




ヤンキース先発の澁谷はここまで3勝2敗、防御率は3.73の成績。


得意のスライダーでバッターを打ち取るのが持ち味だが、今年は新たにシンカー気味に沈むチェンジアップをマスターしてピッチングの幅を広げた。


【あぁ~…1回の表、Glanzの攻撃はぁ~…えぇーと、誰だコイツ…1番セカンド石川ぁ~…背番号8ぃ】


やる気の無いウグイス嬢のアナウンスでトップバッターの石川が打席に入る。


マスクを被る与那嶺が石川をジロリと見た。


「何だよ、ジロジロと見やがって」


石川が訝しげな表情をする。


「いや、別に…」


与那嶺は目つきが悪い。


普段からガンを飛ばすような目をしているせいで、ケンカを売ってると勘違いされやすい。


それが原因でケンカに明け暮れ、いつしかケンカの強さも著しく上達した。


(コイツら、今まで大人しかったけど、いつ仕掛けてくるか油断がならねぇ)


石川は警戒した。


初球から危険球スレスレのビーンボールを投げてくる可能性も十分ある。


与那嶺のサインに頷き、ノーワインドアップから第1球を投げた。


(ほら来た…)


石川の読み通り、インコース顔面スレスレのストレートが襲う。


「おぉ~、危ねぇ!」


石川はスウェーバックの要領で頭を後ろに引いた。


「あのヤロー、いきなり仕掛けてきやがったか!」


麻生がバット片手にベンチから飛び出す。


「おい、早まるんじゃない!」


財前が止めに入る。


「何を言うとんじゃ!ありゃあ、明らかな危険球じゃろうが!」


「そうだとしても、証拠は無いだろ」


マウンドでは、澁谷がしきりにロジンを手にしている。


手が滑ったという事か。


「ワザとらしいマネしくさって!アレは明らかに狙ったボールじゃ!」


球速は148 km/hをマーク。


手が滑ったにしてはスピードの乗ったボールだ。



「とうとう本性を出しやがったな」


石川がニヤッと笑みを浮かべた。
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