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6月オールスターファン投票
偶然の産物
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「何だ、ありゃ?」
榊も目を丸くしていた。
バッターの唐澤は勿論、当の東山さえも呆気にとられている。
(今、揺れながら落ちたよな…オレ、こんな球投げた事あったっけ?)
久々に投げたせいか、縫い目に指を掛けてなかった。
その影響なのか、無回転で揺れながら落ちた…つまり、偶然の産物というワケだ。
「私わかります(^ ^)」
「んじゃ、何であんな変化したんだよ?」
「あれこそが、ファントムスプリットですち!」
「はァ?!」
言われてみれば、ユラユラと揺れてストーンと落ちる軌道はファントム(幽霊)の様だ。
「私比村選手にアドバイスしました(^ ^)
負担かけないようアドバイスしましたち」
「どんなアドバイスしたんだよ?」
比村に送ったアドバイスとは、以前投げていたパームやワンシーム、フォークといった変化球を中心にしたリードをする事だった。
その中から、予想だにしない新球を編み出す可能性を見てている。
ひろしの読みはズバリ的中し、無回転のフォークが誕生した。
「コリャ、スゲーや…まるでナックルみたいだ」
東山は変化球マニアでもある。
150を超えるストレートで三振を奪うよりも、自由自在に操る変化球で打ち取る事を好む。
常に変化球の事ばかり考え、自分に合った変化球は何かを日夜研究している。
その反面、飽きっぽい性格で新球をマスターしては封印、また新たな変化球をマスターしては封印を繰り返すせいで、未だにウイニングショットが無いのが欠点。
榊から伝授された落差のあるカーブをマスターしたものの、(コレがオレの決め球…何か違うな) と違和感を感じていた。
「東山選手の持ち球は、二種類のストレートと、ムッシュが教えたカーブにスライダー、カットボールにチェンジアップ、スクリューと呼ぶシンカーですち!」
「そんだけ球種があれば、もっと勝ち星が増えるだろうに」
「んだな(^_^)」
球種は豊富だが、このままでは器用貧乏になってしまう。
「あのヤロー、オレが教えたカーブを決め球にすりゃいいのに、何が不満なんだよ!」
「東山選手は自分が編み出した変化球を決め球にしたいんですち!
朝の朝食に、もずく酢とガーリックトースト、グリーンスムージーにとんこつラーメンありですか?」
「食い合わせが悪すぎるわっ!」
バキッ…
「グエッ!」
至近距離からのボマイェを叩き込んだ。
「という事は、今投げた無回転のフォークが決め球になるっていうのか」
「ん、…んだな(^ ^)」
「テメーはしばらく寝てろ!」
話が脱線したが、カウントはツーボール、ワンストライク。
「ユウキ、今のはナックルか?」
唐澤は比村に問いかけた。
「ナックル?いや、ナックルは投げれないハズなんですが」
東山は何度かナックルにチャレンジしたが、一度も成功した事が無い。
「投げた本人すら分からないって事か」
これはかなり手こずるな、と唐澤は思った。
(次も同じ球で…いや、待てよ。偶然かもしれないし、ここは他の球で様子を見るのがいいかも)
失投する可能性が高いと感じ、他の球を要求した。
東山もそれに従い、4球目を投げた。
今度はアウトコース低めに変化するシンカーだ。
唐澤はバットを合わせるが、打球は三塁線に切れてファール。
これでツーナッシングとなった。
(次どうする?ストレートか、それともカーブか…いや、ここは一か八か、さっきのフォークで仕留めるか……………………………………ヨシ、決めた!)
比村がサインを出した。
東山は大きく頷き、5球目を投げた。
「また揺れたっ…」
先程の無回転フォークだ。
「クッ…」
唐澤は軌道を予測しながらバットを振り抜くが、インコース低めに変化した。
「うゎっ…」
ボールはミットに当たって後逸。
慌てて比村がボールを捕ると、バットを手に立ちつくしている唐澤にタッチ。
「アウト!」
(さっきよりも大きく揺れて落ちた…アイツ、とんでもない球を身につけやがった)
眉間に皺を寄せ、険しい表情でベンチに戻った。
天才唐澤を抑えツーアウト。
次は現役最高の右打者鬼束の登場だ。
榊も目を丸くしていた。
バッターの唐澤は勿論、当の東山さえも呆気にとられている。
(今、揺れながら落ちたよな…オレ、こんな球投げた事あったっけ?)
久々に投げたせいか、縫い目に指を掛けてなかった。
その影響なのか、無回転で揺れながら落ちた…つまり、偶然の産物というワケだ。
「私わかります(^ ^)」
「んじゃ、何であんな変化したんだよ?」
「あれこそが、ファントムスプリットですち!」
「はァ?!」
言われてみれば、ユラユラと揺れてストーンと落ちる軌道はファントム(幽霊)の様だ。
「私比村選手にアドバイスしました(^ ^)
負担かけないようアドバイスしましたち」
「どんなアドバイスしたんだよ?」
比村に送ったアドバイスとは、以前投げていたパームやワンシーム、フォークといった変化球を中心にしたリードをする事だった。
その中から、予想だにしない新球を編み出す可能性を見てている。
ひろしの読みはズバリ的中し、無回転のフォークが誕生した。
「コリャ、スゲーや…まるでナックルみたいだ」
東山は変化球マニアでもある。
150を超えるストレートで三振を奪うよりも、自由自在に操る変化球で打ち取る事を好む。
常に変化球の事ばかり考え、自分に合った変化球は何かを日夜研究している。
その反面、飽きっぽい性格で新球をマスターしては封印、また新たな変化球をマスターしては封印を繰り返すせいで、未だにウイニングショットが無いのが欠点。
榊から伝授された落差のあるカーブをマスターしたものの、(コレがオレの決め球…何か違うな) と違和感を感じていた。
「東山選手の持ち球は、二種類のストレートと、ムッシュが教えたカーブにスライダー、カットボールにチェンジアップ、スクリューと呼ぶシンカーですち!」
「そんだけ球種があれば、もっと勝ち星が増えるだろうに」
「んだな(^_^)」
球種は豊富だが、このままでは器用貧乏になってしまう。
「あのヤロー、オレが教えたカーブを決め球にすりゃいいのに、何が不満なんだよ!」
「東山選手は自分が編み出した変化球を決め球にしたいんですち!
朝の朝食に、もずく酢とガーリックトースト、グリーンスムージーにとんこつラーメンありですか?」
「食い合わせが悪すぎるわっ!」
バキッ…
「グエッ!」
至近距離からのボマイェを叩き込んだ。
「という事は、今投げた無回転のフォークが決め球になるっていうのか」
「ん、…んだな(^ ^)」
「テメーはしばらく寝てろ!」
話が脱線したが、カウントはツーボール、ワンストライク。
「ユウキ、今のはナックルか?」
唐澤は比村に問いかけた。
「ナックル?いや、ナックルは投げれないハズなんですが」
東山は何度かナックルにチャレンジしたが、一度も成功した事が無い。
「投げた本人すら分からないって事か」
これはかなり手こずるな、と唐澤は思った。
(次も同じ球で…いや、待てよ。偶然かもしれないし、ここは他の球で様子を見るのがいいかも)
失投する可能性が高いと感じ、他の球を要求した。
東山もそれに従い、4球目を投げた。
今度はアウトコース低めに変化するシンカーだ。
唐澤はバットを合わせるが、打球は三塁線に切れてファール。
これでツーナッシングとなった。
(次どうする?ストレートか、それともカーブか…いや、ここは一か八か、さっきのフォークで仕留めるか……………………………………ヨシ、決めた!)
比村がサインを出した。
東山は大きく頷き、5球目を投げた。
「また揺れたっ…」
先程の無回転フォークだ。
「クッ…」
唐澤は軌道を予測しながらバットを振り抜くが、インコース低めに変化した。
「うゎっ…」
ボールはミットに当たって後逸。
慌てて比村がボールを捕ると、バットを手に立ちつくしている唐澤にタッチ。
「アウト!」
(さっきよりも大きく揺れて落ちた…アイツ、とんでもない球を身につけやがった)
眉間に皺を寄せ、険しい表情でベンチに戻った。
天才唐澤を抑えツーアウト。
次は現役最高の右打者鬼束の登場だ。
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