Baseball Freak 主砲の一振り 7

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偶然の産物

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「何だ、ありゃ?」

榊も目を丸くしていた。


バッターの唐澤は勿論、当の東山さえも呆気にとられている。


(今、揺れながら落ちたよな…オレ、こんな球投げた事あったっけ?)


久々に投げたせいか、縫い目に指を掛けてなかった。


その影響なのか、無回転で揺れながら落ちた…つまり、偶然の産物というワケだ。


「私わかります(^ ^)」


「んじゃ、何であんな変化したんだよ?」


「あれこそが、ファントムスプリットですち!」


「はァ?!」


言われてみれば、ユラユラと揺れてストーンと落ちる軌道はファントム(幽霊)の様だ。


「私比村選手にアドバイスしました(^ ^)
負担かけないようアドバイスしましたち」


「どんなアドバイスしたんだよ?」


比村に送ったアドバイスとは、以前投げていたパームやワンシーム、フォークといった変化球を中心にしたリードをする事だった。


その中から、予想だにしない新球を編み出す可能性を見てている。


ひろしの読みはズバリ的中し、無回転のフォークが誕生した。



「コリャ、スゲーや…まるでナックルみたいだ」


東山は変化球マニアでもある。


150を超えるストレートで三振を奪うよりも、自由自在に操る変化球で打ち取る事を好む。


常に変化球の事ばかり考え、自分に合った変化球は何かを日夜研究している。


その反面、飽きっぽい性格で新球をマスターしては封印、また新たな変化球をマスターしては封印を繰り返すせいで、未だにウイニングショットが無いのが欠点。


榊から伝授された落差のあるカーブをマスターしたものの、(コレがオレの決め球…何か違うな) と違和感を感じていた。


「東山選手の持ち球は、二種類のストレートと、ムッシュが教えたカーブにスライダー、カットボールにチェンジアップ、スクリューと呼ぶシンカーですち!」


「そんだけ球種があれば、もっと勝ち星が増えるだろうに」


「んだな(^_^)」


球種は豊富だが、このままでは器用貧乏になってしまう。


「あのヤロー、オレが教えたカーブを決め球にすりゃいいのに、何が不満なんだよ!」


「東山選手は自分が編み出した変化球を決め球にしたいんですち!
朝の朝食に、もずく酢とガーリックトースト、グリーンスムージーにとんこつラーメンありですか?」


「食い合わせが悪すぎるわっ!」


バキッ…


「グエッ!」


至近距離からのボマイェを叩き込んだ。


「という事は、今投げた無回転のフォークが決め球になるっていうのか」


「ん、…んだな(^ ^)」


「テメーはしばらく寝てろ!」




話が脱線したが、カウントはツーボール、ワンストライク。


「ユウキ、今のはナックルか?」



唐澤は比村に問いかけた。


「ナックル?いや、ナックルは投げれないハズなんですが」


東山は何度かナックルにチャレンジしたが、一度も成功した事が無い。


「投げた本人すら分からないって事か」

これはかなり手こずるな、と唐澤は思った。



(次も同じ球で…いや、待てよ。偶然かもしれないし、ここは他の球で様子を見るのがいいかも)


失投する可能性が高いと感じ、他の球を要求した。


東山もそれに従い、4球目を投げた。


今度はアウトコース低めに変化するシンカーだ。


唐澤はバットを合わせるが、打球は三塁線に切れてファール。


これでツーナッシングとなった。


(次どうする?ストレートか、それともカーブか…いや、ここは一か八か、さっきのフォークで仕留めるか……………………………………ヨシ、決めた!)


比村がサインを出した。


東山は大きく頷き、5球目を投げた。


「また揺れたっ…」


先程の無回転フォークだ。


「クッ…」


唐澤は軌道を予測しながらバットを振り抜くが、インコース低めに変化した。


「うゎっ…」


ボールはミットに当たって後逸。

慌てて比村がボールを捕ると、バットを手に立ちつくしている唐澤にタッチ。


「アウト!」



(さっきよりも大きく揺れて落ちた…アイツ、とんでもない球を身につけやがった)


眉間に皺を寄せ、険しい表情でベンチに戻った。


天才唐澤を抑えツーアウト。


次は現役最高の右打者鬼束の登場だ。
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