Baseball Freak 主砲の一振り 7

sky-high

文字の大きさ
上 下
80 / 183
6月オールスターファン投票

でたらめなリード

しおりを挟む
陽が長くなった為か、まだ明るさが残る甲府の上空の下、試合はスタートした。


相変わらず喘ぎ声の様なアナウンスをするウグイス嬢のコールでトップバッターの石川が打席に入る。



インターカンファレンス期間に打率を.304まで上げ、理想のリードオフマンに近づき、オールスターファン投票の途中経過では二塁手部門で1位という活躍ぶり。



だが、ファン投票1位の石川でも先発山本の立ち上がりを攻める事が出来ず苦戦。


山本は153 km/hのストレートにファントムスプリットと呼ばれるフォークであっという間にワンアウトを取った。


【2番ん、指名打者ぁ~、クロフォードぉ~ 24】


スタンドから失笑が漏れる。


ネクストバッターズサークルから悠然とクロフォードが打席に向かう。




こちらもオールスターファン投票の外野手部門では3位と好評。


常に全力プレーの優良外国人とあって、評価はSランク。


だが、彼もまた山本のファントムスプリットの前に空振り三振。



【3番ん…ショートぉ、白石ぃ~…背番号ぉ、5ぉ~っ!】


ウグイス嬢の顔をお目にかかりたいと思うのは大勢いるはず。



現在最多得票を獲得して、名実ともに日本一のショートストップとなった白石がバッターボックスに入った。


山本との対決は新たな名勝負となる予感。



山本もそれを意識してるのか、白石との対決に自然とギアが入る。



初球ボール、2球目はストレートが決まりワンナッシングの平行カウント。



3球目、今度はスライダーがアウトコースギリギリに決まる。



白石は何を狙ってるのか、まだ一度もバットを振らない。


4球目、154 km/hのストレートがインコースに。


白石はバットを合わせたが、打球が三塁側ファールスタンドへ飛び込む。


カウントはワンボール、ツーストライク。


そして5球目、今度は緩いカーブを投じた。


白石はタイミングが外れたのか、バットが出ず見逃しの三振に倒れた。


「私わかります(^ ^)」


始まった…


「今ので何が分かるんだよ?」


「白石選手はファントムスプリットを狙ってますち!」



「いくらアイツでも、あの球を打つのはムリだろう」


「私分かります(^^)」


一体、1日何回言えばいいのだろうか。


「何度も言うな!」


「白石選手は、山本投手の決め球を打つ事によって、ブレーブスの勢いを止めようとしてますち!」


「…確かに、エースの決め球を打てば意気消沈するけど」


投手出身の榊だけに、エースの決め球を打てば相手チームの勢いを止める事は出来るという考えは同意する。


しかし、決め球を打つというのはかなり至難の業で、いくら天才と謳われる白石でも難しい。


「それよりも、チームの勝利が第一だろうが!フォークよりも、ストレート一本に絞って打てばいいだけの話だろ!」


「んだな(^ ^)」


あっさり納得すんなよ…




1回の表、Glanzは三者凡退に終わり、その裏ブレーブスの攻撃はトップバッターの室井が打席に入る。


マウンド上は今年の開幕投手を務めた東山。


榊から伝授された、縦に大きく変化するカーブを有効に使い、ここまで4勝1敗、防御率2.76と好調を維持する。


東山が第1球を投げた。


のっけから落差のある縦のカーブだ。


「ストライクワン!」


まさか、初球からカーブを投げてくるとは思わず、室井は固まったまま手が出ず。

(ヘヘッ、ストレートと思ったんだろうが、そう簡単に投げるワケにはいかないっつーの!)


マスクを被る比村は室井の構えを見て、ストレート狙いと読んでカーブのサインを出した。


Glanzの正捕手は滝沢だが、予想外のリードでバッターを翻弄するのは比村の方が上だ。


(最初の球がカーブとはな…となると、次は緩急をつけるためにストレートを投げてくるだろう)


室井はストレートに的を絞った。


躍動感溢れるフォームから2球目を投げた。


「またカーブ…」


室井は裏をかかれ、バットが出ない。


「ストライクツーっ!」


2球続けてカーブを要求した。


(クソッ、小馬鹿にしやがって!)


室井は思わず後ろを振り返り、比村を睨みつけた。


「ん?…どうしました?」


比村は飄々とした表情で返球した。


「随分ふざけたリードしてるじゃないか」



「ふざけたリードで抑えるワケないでしょう」


肝が据わってるというか、図太い神経の持ち主なのか、比村は動じない。


(こりゃストレート投げる必要はないな)


次の球で決めるつもりだ。


東山が3球目を投げた。



3球続けてカーブだ。


「マジかよ…」


今度こそストレートだと読んだ室井は3球続けてカーブを投げてこないだろうと思った。


「ストライクスリーっ!アウト!」


初っ端から三球三振するとは思いもよらないハズ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

処理中です...