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6月オールスターファン投票
でたらめなリード
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陽が長くなった為か、まだ明るさが残る甲府の上空の下、試合はスタートした。
相変わらず喘ぎ声の様なアナウンスをするウグイス嬢のコールでトップバッターの石川が打席に入る。
インターカンファレンス期間に打率を.304まで上げ、理想のリードオフマンに近づき、オールスターファン投票の途中経過では二塁手部門で1位という活躍ぶり。
だが、ファン投票1位の石川でも先発山本の立ち上がりを攻める事が出来ず苦戦。
山本は153 km/hのストレートにファントムスプリットと呼ばれるフォークであっという間にワンアウトを取った。
【2番ん、指名打者ぁ~、クロフォードぉ~ 24】
スタンドから失笑が漏れる。
ネクストバッターズサークルから悠然とクロフォードが打席に向かう。
こちらもオールスターファン投票の外野手部門では3位と好評。
常に全力プレーの優良外国人とあって、評価はSランク。
だが、彼もまた山本のファントムスプリットの前に空振り三振。
【3番ん…ショートぉ、白石ぃ~…背番号ぉ、5ぉ~っ!】
ウグイス嬢の顔をお目にかかりたいと思うのは大勢いるはず。
現在最多得票を獲得して、名実ともに日本一のショートストップとなった白石がバッターボックスに入った。
山本との対決は新たな名勝負となる予感。
山本もそれを意識してるのか、白石との対決に自然とギアが入る。
初球ボール、2球目はストレートが決まりワンナッシングの平行カウント。
3球目、今度はスライダーがアウトコースギリギリに決まる。
白石は何を狙ってるのか、まだ一度もバットを振らない。
4球目、154 km/hのストレートがインコースに。
白石はバットを合わせたが、打球が三塁側ファールスタンドへ飛び込む。
カウントはワンボール、ツーストライク。
そして5球目、今度は緩いカーブを投じた。
白石はタイミングが外れたのか、バットが出ず見逃しの三振に倒れた。
「私わかります(^ ^)」
始まった…
「今ので何が分かるんだよ?」
「白石選手はファントムスプリットを狙ってますち!」
「いくらアイツでも、あの球を打つのはムリだろう」
「私分かります(^^)」
一体、1日何回言えばいいのだろうか。
「何度も言うな!」
「白石選手は、山本投手の決め球を打つ事によって、ブレーブスの勢いを止めようとしてますち!」
「…確かに、エースの決め球を打てば意気消沈するけど」
投手出身の榊だけに、エースの決め球を打てば相手チームの勢いを止める事は出来るという考えは同意する。
しかし、決め球を打つというのはかなり至難の業で、いくら天才と謳われる白石でも難しい。
「それよりも、チームの勝利が第一だろうが!フォークよりも、ストレート一本に絞って打てばいいだけの話だろ!」
「んだな(^ ^)」
あっさり納得すんなよ…
1回の表、Glanzは三者凡退に終わり、その裏ブレーブスの攻撃はトップバッターの室井が打席に入る。
マウンド上は今年の開幕投手を務めた東山。
榊から伝授された、縦に大きく変化するカーブを有効に使い、ここまで4勝1敗、防御率2.76と好調を維持する。
東山が第1球を投げた。
のっけから落差のある縦のカーブだ。
「ストライクワン!」
まさか、初球からカーブを投げてくるとは思わず、室井は固まったまま手が出ず。
(ヘヘッ、ストレートと思ったんだろうが、そう簡単に投げるワケにはいかないっつーの!)
マスクを被る比村は室井の構えを見て、ストレート狙いと読んでカーブのサインを出した。
Glanzの正捕手は滝沢だが、予想外のリードでバッターを翻弄するのは比村の方が上だ。
(最初の球がカーブとはな…となると、次は緩急をつけるためにストレートを投げてくるだろう)
室井はストレートに的を絞った。
躍動感溢れるフォームから2球目を投げた。
「またカーブ…」
室井は裏をかかれ、バットが出ない。
「ストライクツーっ!」
2球続けてカーブを要求した。
(クソッ、小馬鹿にしやがって!)
室井は思わず後ろを振り返り、比村を睨みつけた。
「ん?…どうしました?」
比村は飄々とした表情で返球した。
「随分ふざけたリードしてるじゃないか」
「ふざけたリードで抑えるワケないでしょう」
肝が据わってるというか、図太い神経の持ち主なのか、比村は動じない。
(こりゃストレート投げる必要はないな)
次の球で決めるつもりだ。
東山が3球目を投げた。
3球続けてカーブだ。
「マジかよ…」
今度こそストレートだと読んだ室井は3球続けてカーブを投げてこないだろうと思った。
「ストライクスリーっ!アウト!」
初っ端から三球三振するとは思いもよらないハズ。
相変わらず喘ぎ声の様なアナウンスをするウグイス嬢のコールでトップバッターの石川が打席に入る。
インターカンファレンス期間に打率を.304まで上げ、理想のリードオフマンに近づき、オールスターファン投票の途中経過では二塁手部門で1位という活躍ぶり。
だが、ファン投票1位の石川でも先発山本の立ち上がりを攻める事が出来ず苦戦。
山本は153 km/hのストレートにファントムスプリットと呼ばれるフォークであっという間にワンアウトを取った。
【2番ん、指名打者ぁ~、クロフォードぉ~ 24】
スタンドから失笑が漏れる。
ネクストバッターズサークルから悠然とクロフォードが打席に向かう。
こちらもオールスターファン投票の外野手部門では3位と好評。
常に全力プレーの優良外国人とあって、評価はSランク。
だが、彼もまた山本のファントムスプリットの前に空振り三振。
【3番ん…ショートぉ、白石ぃ~…背番号ぉ、5ぉ~っ!】
ウグイス嬢の顔をお目にかかりたいと思うのは大勢いるはず。
現在最多得票を獲得して、名実ともに日本一のショートストップとなった白石がバッターボックスに入った。
山本との対決は新たな名勝負となる予感。
山本もそれを意識してるのか、白石との対決に自然とギアが入る。
初球ボール、2球目はストレートが決まりワンナッシングの平行カウント。
3球目、今度はスライダーがアウトコースギリギリに決まる。
白石は何を狙ってるのか、まだ一度もバットを振らない。
4球目、154 km/hのストレートがインコースに。
白石はバットを合わせたが、打球が三塁側ファールスタンドへ飛び込む。
カウントはワンボール、ツーストライク。
そして5球目、今度は緩いカーブを投じた。
白石はタイミングが外れたのか、バットが出ず見逃しの三振に倒れた。
「私わかります(^ ^)」
始まった…
「今ので何が分かるんだよ?」
「白石選手はファントムスプリットを狙ってますち!」
「いくらアイツでも、あの球を打つのはムリだろう」
「私分かります(^^)」
一体、1日何回言えばいいのだろうか。
「何度も言うな!」
「白石選手は、山本投手の決め球を打つ事によって、ブレーブスの勢いを止めようとしてますち!」
「…確かに、エースの決め球を打てば意気消沈するけど」
投手出身の榊だけに、エースの決め球を打てば相手チームの勢いを止める事は出来るという考えは同意する。
しかし、決め球を打つというのはかなり至難の業で、いくら天才と謳われる白石でも難しい。
「それよりも、チームの勝利が第一だろうが!フォークよりも、ストレート一本に絞って打てばいいだけの話だろ!」
「んだな(^ ^)」
あっさり納得すんなよ…
1回の表、Glanzは三者凡退に終わり、その裏ブレーブスの攻撃はトップバッターの室井が打席に入る。
マウンド上は今年の開幕投手を務めた東山。
榊から伝授された、縦に大きく変化するカーブを有効に使い、ここまで4勝1敗、防御率2.76と好調を維持する。
東山が第1球を投げた。
のっけから落差のある縦のカーブだ。
「ストライクワン!」
まさか、初球からカーブを投げてくるとは思わず、室井は固まったまま手が出ず。
(ヘヘッ、ストレートと思ったんだろうが、そう簡単に投げるワケにはいかないっつーの!)
マスクを被る比村は室井の構えを見て、ストレート狙いと読んでカーブのサインを出した。
Glanzの正捕手は滝沢だが、予想外のリードでバッターを翻弄するのは比村の方が上だ。
(最初の球がカーブとはな…となると、次は緩急をつけるためにストレートを投げてくるだろう)
室井はストレートに的を絞った。
躍動感溢れるフォームから2球目を投げた。
「またカーブ…」
室井は裏をかかれ、バットが出ない。
「ストライクツーっ!」
2球続けてカーブを要求した。
(クソッ、小馬鹿にしやがって!)
室井は思わず後ろを振り返り、比村を睨みつけた。
「ん?…どうしました?」
比村は飄々とした表情で返球した。
「随分ふざけたリードしてるじゃないか」
「ふざけたリードで抑えるワケないでしょう」
肝が据わってるというか、図太い神経の持ち主なのか、比村は動じない。
(こりゃストレート投げる必要はないな)
次の球で決めるつもりだ。
東山が3球目を投げた。
3球続けてカーブだ。
「マジかよ…」
今度こそストレートだと読んだ室井は3球続けてカーブを投げてこないだろうと思った。
「ストライクスリーっ!アウト!」
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