Baseball Freak 主砲の一振り 7

インターカンファレンス後半

KINGDOMに入るべき選手

1回の表、Glanzは無得点で終了。


その裏、KINGDOMの攻撃はトップバッターの稲葉。

マウンド上の降谷はこれが8試合目の先発。

前回、ウォーリアーズ戦では無四球完封勝利を挙げ、勢いに乗る。


降谷はのっけからエンジン全開。

1番稲葉をフォークで三振を奪うと、2番与田は力のあるストレートがバットをへし折りファーストゴロ。

3番浅倉には縦のスライダーで空振り三振に斬って三者凡退で終了。


このまま序盤は投手戦へ突入した。


試合が動いたのは6回の裏、KINGDOMは5番ロドリゲスが左中間への二塁打を放ち、ノーアウトから得点のチャンスの場面。

6番小室は縦のスライダーに空振り三振を喫し、ワンアウトランナー二塁で7番尹の打席となった。


降谷は初球ストレートでストライクを取り、2球目はフォークを投じるが、尹はこれをファール。


3球目、カットボールが少し真ん中に入ったところを見逃さずライトへ弾き返した。


森高が懸命に追いつき、本塁へ送球するがロドリゲスの足が一瞬速く、KINGDOMは1点を先制した。


この1点が決勝点となり、KINGDOMは小刻みな継投策で1点を守り、最後は抑えの翔田が3人で抑え、1-0でKINGDOMが初戦を制した。


この試合、白石は4回打席に入ったが全て敬遠され、反対に徳川は4打数0安打、4三振と抑え込まれた。


試合後、翔田は記者団の質問に答え、

「明日も白石くんを全て歩かせる。
卑怯だと言われようが、これも作戦。
勝つためにはなんだってする」

とコメント。


この発言が物議を醸し、プロだから正々堂々勝負しろ！と批判を受けた。


尚、敗れたGlanzサイドは、榊が

「作戦なんだろ？勝つためには仕方ないんじゃないの？
コッチも勝つために試合してるワケだし、それなりの手を打たなきゃならないしな」

と肯定的なコメントを残して球場を後にした。



とは言え、明日も白石を全打席敬遠となれば球場に駆けつけたファンも黙ってないし、下手をすれば暴動になり兼ねない。


その為には徳川が打たなきゃならないのだが。




翌日の第2戦はGlanzが皐月、KINGDOMは左腕の日比野が先発。


スタメンはKINGDOMに変更はなし。


対するGlanzは


1(二) 石川 8
2(中) ｸﾛﾌｫｰﾄﾞ24
3(遊) 白石 5
4(一) 徳川 23
5(右) 森高 7
6(三) 南方 1
7(指) 城戸 6
8(左) 麻生 22
9(補) 火村 27

(投) 皐月 26

6番からの下位打線に変更はあるが、上位打線に変更は無い。



「よぉ、茶坊主！白石と徳川の打順変えた方が良かったんじゃないのか？」


スタメンを考えるのはひろしだ。


だが、ひろしは敢えて二人の打順を変えなかった。


「私わかります(^ ^)」


「必ずそれ言わないとダメなのかよ」


毎回不思議に思う。


「今日は徳川選手は打ちます(^^)
私予言の先生言われます(^ ^)」


「ホントに打つのかよ？昨日だって、全くバット振ってないじゃないかよ」


昨日は4三振だったが、一度もバットを振ってない。


「大丈夫です(^^)
この敬遠策が失敗だったと後悔するですち！」


「だといいけど…」


榊の不安をよそに、ひろしは明るい表情で答える。

というか、いつも能天気なのだが。


一方、KINGDOMベンチでは翔田がジッと腕を組みながらGlanzベンチに鋭い視線を送る。


(白石拓海…本来ならば、我がKINGDOMに入るべき逸材だった…だが、敵になったからには、とことん抑える！
この敬遠策はその第一歩だ)


翔田は白石こそが現役最高の選手だと信じて疑わない。


唐澤や結城といった天才バッターよりも、白石の才能はその二人をも凌駕する程の逸材と惚れ込む程だ。


だからこそ、KINGDOM王国に白石が必要なのだ。


チームには昨年49本を打ってホームラン王に輝いた棚橋樹が翔田に代わるKINGDOMの中心選手として期待をかけているが、本心は白石を獲得して攻守の軸に据えるのが理想形だった。


翔田は棚橋のバッティングに関しては、

「お前が参考にするのは白石のバッティングだ。
他の選手のマネはしなくていい、マネするのは白石のバッティングだけだ」

とアドバイスしている。

その甲斐あって、棚橋は着実に成長を遂げ、打率も3割超えをマークした。


手に入れられないのなら、手も足も出ないよう、徹底的に抑えてやろう、という目論見だ。



そして今、試合がスタートした。