Baseball Freak 主砲の一振り 7

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インターカンファレンス後半

のっけから敬遠

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石川をバックドアで見逃しの三振に抑え、続くは漆黒の弾丸クロフォード。

左打席に入り、グリップをやや高めに上げ、ユラユラと先端を動かせタイミングをとっている。



今年来日した助っ人外国人の中で、最も優秀な選手と称される。


ここまでの成績は、打率.298 本塁打5 打点38 盗塁6と安定しており、日本の野球に慣れれば、もっと高い数字を挙げる事も可能だ。



ワンアウトを取って少し気が楽になった登坂。


ロジンを手にする様子も幾分リラックスしているように見える。



サインが決まり、登坂が初球を投げた。


外寄りのフォーシームが空気を切り裂く様に唸りを上げてズバッと決まった。


「ストライクワン!」


センター後方のオーロラビジョンには151 km/hと表示された。


クロフォードは球筋を見ているのか、微動だにせず。



だが、クロフォードは2球目のスライダーに手を出し、あえなくショートゴロに倒れる。



「さぁ、これからだ見せ場は」


翔田がほくそ笑む。


3番白石がゆっくりと打席に向かう。


同時に翔田がベンチから出て主審に告げると、主審は白石に一塁へ向かうよう促す。



「エッ?」


「ウソっ!」


「何で敬遠?」


Glanzのベンチは呆気にとられている。


場内アナウンスで白石に対して申告敬遠が行われた旨を説明すると、スタンドからブーイングが沸き起こった。


当の白石は首を傾げながら一塁へ向かった。

それもそのハズ、初回でしかも白石を歩かせ、現在打率、本塁打トップの徳川と勝負とは何とも解せない采配だ。



「…え、白石さん歩かせてオレと勝負?」

徳川はネクストバッターズサークルで鳩が豆鉄砲食らった様な顔をしている。


「何考えてんだ、翔田のヤツ。
白石歩かせて、徳川と勝負とは」


誰だって不思議に思う。


「私わかります(^ ^)」


「おぅ、説明してくれや!」


珍しく榊が食いつく。


「翔田監督は徳川選手よりも、白石選手の方が要注意と考えて歩かせたですち」


「とは言えさぁ、まだ初回でピンチにもなってないのに、いきなり敬遠って…」


「それが作戦です(^_^)
この試合で徳川選手を心理的に揺さぶって完全に抑えようとする考えですち!」


「なんつー作戦だ」


「カッカしなけりゃいいんだが」


コーチ陣は徳川の精神状態を懸念する。


「何とかなるですち!」


ひろしは楽観的だ。


「やい、茶坊主!何とかなるって、どう何とかなるんだよ?」


「何とかすると思いますち!」


「テキトーな事言ってんじゃねぇ!」


バキッ…


「グヘッ…」


ショートレンジからのラリアットを見舞った。


「おい、徳川!エンリョするこたぁねぇ!舐められた分、倍にして返してやれ!
何なら、空振りしたフリしてバット投げつけてやれ!」


監督が一番カッカしている。


ツーアウトランナー一塁という場面で徳川が打席に入った。


舐められたというより、何でこんな事をするのか?という腑に落ちない表情をしている。


マウンド上の登坂は全て納得したうえで白石を敬遠した。


崇拝する翔田の采配なら無条件で従うからだ。


サインが決まり、初球を投げた。


ギアが上がったのか、先程よりも球威のあるフォーシームがインサイドに決まる。


「ストライクワンっ!」


155 km/hと表示された。


徳川はバットを正面に突き出すような構えで見送る。


これまで結城を彷彿させるようなフォームだったが、ここへきて若干フォームを改造した。


この方がどのコースに来てもスムーズにバットが出るらしい。


登坂はテンポ良く2球目を投げた。


もう1球フォーシームをやや外寄りに投じた。


「ボールワンっ!」


僅かに低めに外れた。


「落ち着いてるみたいだな」


徳川はポーカーフェイスで構えている。


3球目、今度はスライダーが低めギリギリに。


「ストライクツー!」


打つ気が無いのか、一度もバットを振っていない。


そして4球目、外へのスプリットを投じる。


徳川はこれを見送った。


「ストライクスリー!」


一度もバットを振らず、見逃しの三振を喫した。


「何やってんだ!」


「ヤル気無くしたのか?」


徳川は無表情でベンチに下がった。


1回の表、Glanzは一塁残塁で攻撃を終了した。
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