Baseball Freak 主砲の一振り 7

sky-high

文字の大きさ
上 下
69 / 183
インターカンファレンス前半

めんそーれ沖縄!その3

しおりを挟む
クロフォードはゆっくりと時間をかけて靴紐を結び直す。


「いつまでやってんだよっ!早くしろよ!」


猪木は苛立ちの声を上げる。


「自分のこと棚に上げて、何言ってんだ!」


「お前が今までやってきた事だろうが!」


「お前はよくて、他人がやっちゃいけないのかよ!」


Glanzベンチからヤジが飛ぶ。


「うるせぇ、外野は黙れっ!」


気の長いタイプだと思われがちだが、実はかなり気の短いタイプだ。


あまりの自己中心的な考えに呆れるしかない。


クロフォードが靴紐を結び、再びバットを構えた。


イライラしている猪木はサインも交換せずに初球を投げた。


「おい、まだサインも出てないのに…」


キャッチャーの新垣は慌ててミットを構えるが、ノーサインのせいで高めのストレートを捕り損なう。


「痛っ…」


ボールが左肩に当たり、新垣がうずくまる。


慌ててトレーナーが駆け寄りアイシングスプレーを噴射する。


「ぐぁっ…」


プロテクターを付けてるとはいえ、148 km/hのストレートがダイレクトに当たったのだから、激痛が走る。


当の猪木は当てたにもかかわらず、マウンド上で苛立っている。


「ったく、そのぐらいの球なら捕れよっ!」


当てて申し訳ないと謝るどころか、捕り損ねた新垣を詰る。


「アイツ、どうしようもねぇヤツだな」


さすがの榊も目に余る行動に顔をしかめる。


しばらくして痛みが引いたのか、新垣が左肩をグルグル回す。


「大丈夫そうか?」


「ハイ、何とか…」


骨には異常はなさそうだ。


交代はせず、新垣は再びマスクを被った。


プレーが再開した。


「ったく、どいつもこいつもイライラしてくんなぁ!」


冷静になるどころか、更に苛立つ猪木。


「私わかります(^^)
クロフォード選手はバットを振ることなく、フォアボールで塁に出ます(^ ^)」


「それだけ冷静さを欠いてるって事か」


「んだな(^^)」


その予言通り、猪木はストレートのフォアボールを与える。



ワンアウト、ランナー一塁という場面で迎えるバッターは3番の白石。


榊は白石にもタイムをかけるよう指示する。


猪木はマウンドの土を蹴り飛ばし、完全に冷静さを失っている。


いつもの猪木とは違い、別人の様に荒れている。


打席に入った白石が新垣に声を掛ける。


「大丈夫すか?」


「あぁ、何とか…」


まだ痛みはあるようだ。


「マウンドに行かなくていいんすか?」


「ほっときゃいいんだ、あんなバカは」


吐き捨てるように言い放つ。


「ワガママが過ぎるエースだな」


気の毒に、と思うがこれも勝負だ。


マウンド上でカッカしている猪木は何度もサインに首を振る。


業を煮やしたのか、自らサインを出し初球を投げた。


すると、高めに大きく外れたボールが頭上を越えバックネット裏への大暴投。

慌てて新垣がボールを追うが、一塁ランナークロフォードは悠々と二塁へ。



「テメー一人で野球やってんじゃねえんだぞ!少しは頭冷やせ!」


新垣が一喝する。


「うるせぇ、お前は黙ってボール捕ってりゃいいんだ!」


何を言っても逆効果だ。


「ありゃ交代させた方がいいぞ」


その言葉が届いたのか、監督の喜屋武(きゃんが) ベンチから出て交代を告げた。


【マシンガンズ、ピッチャーの交代です】


「アララ、もう交代だってよ」


【ピッチャー猪木に代わりまして…内間…ピッチャー内間。背番号20】


喜屋武は猪木を諦め、リリーフの内間を投入。


「ふざけんなっ!まだアウト一つしか取ってないのに交代かよっ!」


猪木の怒りは収まらない。


その瞬間、マウンドまで駆け寄った喜屋武が鳩尾(みぞおち)に膝蹴りを見舞った。


「グヘッ…」


苦悶の表情を浮かべた猪木は崩れ落ち、のたうち回っている。


「お前はしばらくの間、二軍で反省してろっ!」


物凄い剣幕で猪木を一喝するとベンチに戻った。


喜屋武は沖縄空手の有段者であり、普段は温厚だが、怒らせたらヤバいとも言われる人物でもある。


猪木は両脇をトレーナーとコーチに支えられ、すごすごとベンチに引き下がった。


「怖ぇな、あの監督は!」


「あの人、怒らせたらヤバいって球界じゃかなり有名っすよ!」


「そうなの?」


「沖縄の米兵数人と喧嘩してあっという間にKOしたって武勇伝もある程だし」


「恐ろしいな…」


この事が原因でマシンガンズは意気消沈し、Glanzの連勝で沖縄から埼玉へ移動した。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

処理中です...