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インターカンファレンス前半
めんそーれ沖縄!その3
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クロフォードはゆっくりと時間をかけて靴紐を結び直す。
「いつまでやってんだよっ!早くしろよ!」
猪木は苛立ちの声を上げる。
「自分のこと棚に上げて、何言ってんだ!」
「お前が今までやってきた事だろうが!」
「お前はよくて、他人がやっちゃいけないのかよ!」
Glanzベンチからヤジが飛ぶ。
「うるせぇ、外野は黙れっ!」
気の長いタイプだと思われがちだが、実はかなり気の短いタイプだ。
あまりの自己中心的な考えに呆れるしかない。
クロフォードが靴紐を結び、再びバットを構えた。
イライラしている猪木はサインも交換せずに初球を投げた。
「おい、まだサインも出てないのに…」
キャッチャーの新垣は慌ててミットを構えるが、ノーサインのせいで高めのストレートを捕り損なう。
「痛っ…」
ボールが左肩に当たり、新垣がうずくまる。
慌ててトレーナーが駆け寄りアイシングスプレーを噴射する。
「ぐぁっ…」
プロテクターを付けてるとはいえ、148 km/hのストレートがダイレクトに当たったのだから、激痛が走る。
当の猪木は当てたにもかかわらず、マウンド上で苛立っている。
「ったく、そのぐらいの球なら捕れよっ!」
当てて申し訳ないと謝るどころか、捕り損ねた新垣を詰る。
「アイツ、どうしようもねぇヤツだな」
さすがの榊も目に余る行動に顔をしかめる。
しばらくして痛みが引いたのか、新垣が左肩をグルグル回す。
「大丈夫そうか?」
「ハイ、何とか…」
骨には異常はなさそうだ。
交代はせず、新垣は再びマスクを被った。
プレーが再開した。
「ったく、どいつもこいつもイライラしてくんなぁ!」
冷静になるどころか、更に苛立つ猪木。
「私わかります(^^)
クロフォード選手はバットを振ることなく、フォアボールで塁に出ます(^ ^)」
「それだけ冷静さを欠いてるって事か」
「んだな(^^)」
その予言通り、猪木はストレートのフォアボールを与える。
ワンアウト、ランナー一塁という場面で迎えるバッターは3番の白石。
榊は白石にもタイムをかけるよう指示する。
猪木はマウンドの土を蹴り飛ばし、完全に冷静さを失っている。
いつもの猪木とは違い、別人の様に荒れている。
打席に入った白石が新垣に声を掛ける。
「大丈夫すか?」
「あぁ、何とか…」
まだ痛みはあるようだ。
「マウンドに行かなくていいんすか?」
「ほっときゃいいんだ、あんなバカは」
吐き捨てるように言い放つ。
「ワガママが過ぎるエースだな」
気の毒に、と思うがこれも勝負だ。
マウンド上でカッカしている猪木は何度もサインに首を振る。
業を煮やしたのか、自らサインを出し初球を投げた。
すると、高めに大きく外れたボールが頭上を越えバックネット裏への大暴投。
慌てて新垣がボールを追うが、一塁ランナークロフォードは悠々と二塁へ。
「テメー一人で野球やってんじゃねえんだぞ!少しは頭冷やせ!」
新垣が一喝する。
「うるせぇ、お前は黙ってボール捕ってりゃいいんだ!」
何を言っても逆効果だ。
「ありゃ交代させた方がいいぞ」
その言葉が届いたのか、監督の喜屋武(きゃんが) ベンチから出て交代を告げた。
【マシンガンズ、ピッチャーの交代です】
「アララ、もう交代だってよ」
【ピッチャー猪木に代わりまして…内間…ピッチャー内間。背番号20】
喜屋武は猪木を諦め、リリーフの内間を投入。
「ふざけんなっ!まだアウト一つしか取ってないのに交代かよっ!」
猪木の怒りは収まらない。
その瞬間、マウンドまで駆け寄った喜屋武が鳩尾(みぞおち)に膝蹴りを見舞った。
「グヘッ…」
苦悶の表情を浮かべた猪木は崩れ落ち、のたうち回っている。
「お前はしばらくの間、二軍で反省してろっ!」
物凄い剣幕で猪木を一喝するとベンチに戻った。
喜屋武は沖縄空手の有段者であり、普段は温厚だが、怒らせたらヤバいとも言われる人物でもある。
猪木は両脇をトレーナーとコーチに支えられ、すごすごとベンチに引き下がった。
「怖ぇな、あの監督は!」
「あの人、怒らせたらヤバいって球界じゃかなり有名っすよ!」
「そうなの?」
「沖縄の米兵数人と喧嘩してあっという間にKOしたって武勇伝もある程だし」
「恐ろしいな…」
この事が原因でマシンガンズは意気消沈し、Glanzの連勝で沖縄から埼玉へ移動した。
「いつまでやってんだよっ!早くしろよ!」
猪木は苛立ちの声を上げる。
「自分のこと棚に上げて、何言ってんだ!」
「お前が今までやってきた事だろうが!」
「お前はよくて、他人がやっちゃいけないのかよ!」
Glanzベンチからヤジが飛ぶ。
「うるせぇ、外野は黙れっ!」
気の長いタイプだと思われがちだが、実はかなり気の短いタイプだ。
あまりの自己中心的な考えに呆れるしかない。
クロフォードが靴紐を結び、再びバットを構えた。
イライラしている猪木はサインも交換せずに初球を投げた。
「おい、まだサインも出てないのに…」
キャッチャーの新垣は慌ててミットを構えるが、ノーサインのせいで高めのストレートを捕り損なう。
「痛っ…」
ボールが左肩に当たり、新垣がうずくまる。
慌ててトレーナーが駆け寄りアイシングスプレーを噴射する。
「ぐぁっ…」
プロテクターを付けてるとはいえ、148 km/hのストレートがダイレクトに当たったのだから、激痛が走る。
当の猪木は当てたにもかかわらず、マウンド上で苛立っている。
「ったく、そのぐらいの球なら捕れよっ!」
当てて申し訳ないと謝るどころか、捕り損ねた新垣を詰る。
「アイツ、どうしようもねぇヤツだな」
さすがの榊も目に余る行動に顔をしかめる。
しばらくして痛みが引いたのか、新垣が左肩をグルグル回す。
「大丈夫そうか?」
「ハイ、何とか…」
骨には異常はなさそうだ。
交代はせず、新垣は再びマスクを被った。
プレーが再開した。
「ったく、どいつもこいつもイライラしてくんなぁ!」
冷静になるどころか、更に苛立つ猪木。
「私わかります(^^)
クロフォード選手はバットを振ることなく、フォアボールで塁に出ます(^ ^)」
「それだけ冷静さを欠いてるって事か」
「んだな(^^)」
その予言通り、猪木はストレートのフォアボールを与える。
ワンアウト、ランナー一塁という場面で迎えるバッターは3番の白石。
榊は白石にもタイムをかけるよう指示する。
猪木はマウンドの土を蹴り飛ばし、完全に冷静さを失っている。
いつもの猪木とは違い、別人の様に荒れている。
打席に入った白石が新垣に声を掛ける。
「大丈夫すか?」
「あぁ、何とか…」
まだ痛みはあるようだ。
「マウンドに行かなくていいんすか?」
「ほっときゃいいんだ、あんなバカは」
吐き捨てるように言い放つ。
「ワガママが過ぎるエースだな」
気の毒に、と思うがこれも勝負だ。
マウンド上でカッカしている猪木は何度もサインに首を振る。
業を煮やしたのか、自らサインを出し初球を投げた。
すると、高めに大きく外れたボールが頭上を越えバックネット裏への大暴投。
慌てて新垣がボールを追うが、一塁ランナークロフォードは悠々と二塁へ。
「テメー一人で野球やってんじゃねえんだぞ!少しは頭冷やせ!」
新垣が一喝する。
「うるせぇ、お前は黙ってボール捕ってりゃいいんだ!」
何を言っても逆効果だ。
「ありゃ交代させた方がいいぞ」
その言葉が届いたのか、監督の喜屋武(きゃんが) ベンチから出て交代を告げた。
【マシンガンズ、ピッチャーの交代です】
「アララ、もう交代だってよ」
【ピッチャー猪木に代わりまして…内間…ピッチャー内間。背番号20】
喜屋武は猪木を諦め、リリーフの内間を投入。
「ふざけんなっ!まだアウト一つしか取ってないのに交代かよっ!」
猪木の怒りは収まらない。
その瞬間、マウンドまで駆け寄った喜屋武が鳩尾(みぞおち)に膝蹴りを見舞った。
「グヘッ…」
苦悶の表情を浮かべた猪木は崩れ落ち、のたうち回っている。
「お前はしばらくの間、二軍で反省してろっ!」
物凄い剣幕で猪木を一喝するとベンチに戻った。
喜屋武は沖縄空手の有段者であり、普段は温厚だが、怒らせたらヤバいとも言われる人物でもある。
猪木は両脇をトレーナーとコーチに支えられ、すごすごとベンチに引き下がった。
「怖ぇな、あの監督は!」
「あの人、怒らせたらヤバいって球界じゃかなり有名っすよ!」
「そうなの?」
「沖縄の米兵数人と喧嘩してあっという間にKOしたって武勇伝もある程だし」
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