Baseball Freak 主砲の一振り 7

インターカンファレンス前半

強打とインサイドワーク

ドルフィンズの先発若月は今年12年目を迎える30歳のベテラン。

球速は140に満たないが、コーナーを突くピッチングと大きく縦に沈むチェンジアップに、大小二種類のカーブとこれまた二種類のスライダーで相手を打ち取るのが持ち味。


そのピッチングを生かすのが、マスクを被る八幡の役目だ。


若月は昨年、防御率3.37でチームの12勝をマーク。


決して速くないボールでここまでの成績を挙げたのは他ならぬ八幡のリードのお陰だ。


若月だけじゃない、他の投手も八幡がボールを受けてくれる事で防御率も勝ち星もアップしている。


低迷を続けている原因は、親会社が球団に対してそれ程協力的ではない事だ。


戦力補強は球団にとって勝敗を左右するに等しい。


だが、親会社が協力的ではないと、十分な戦力を整える事が出来ない。


今年は経営陣が一新した事が吉と出た為に、西地区2位まで躍進した。




夕暮れ時、薄暮の空の中で試合は始まった。


若月は初回に先頭の石川を空振りの三振に仕留め、2番クロフォードをカーブでショートゴロ、3番白石に対してはインコース膝元に決まる、クロスファイヤーボールでレフトフライに打ち取り三者凡退に抑える。


一方、Glanzの先発反町は立ち上がりが悪く、先頭の小池をフォークで三振に抑えるものの、4割バッター黒見にはフルカウントからのフォアボールで塁に出す。


そして、シュート系の球には滅法強い池畑を迎える。



試合前、池畑に対しては全打席歩かせてもいいというひろしのアドバイスを受けたが、初回から歩かせるのはプロとして如何なものか、という想いが頭を過ぎる。


迷った挙句、ここは勝負しかないと判断し、真っ向勝負に挑む。


(シュート系の球を投げなきゃいいだけで、ここはアウトコース勝負で打ち取ろう)


比村は外中心の配球を組み立てる。


初球、カットボールが外角を突いてワンストライク。


2球目は外低めいっぱいに153 km/hのフォーシームを投げたが、僅かに外れてワンボール。


3球目、今度は外の高めへ148 km/hのフォーシームが決まり、ワンボール、ツーストライクと追い込む。


ここで一度、ボールになるフォーシームを再度外へ。


池畑はこれをスイングするも、打球は右に切れてファール。


(アウトコースを打つのも上手いじゃんか！)


比村は苦肉の策としてド真ん中のストレートを要求した。


(困った時はド真ん中。これが有効なんだよなぁ)


意表を突いたド真ん中なら打たれる心配は無いだろう、というのが比村の考えだ。


反町はサイン通りにド真ん中へ153 km/hのフォーシームを投げた。


「甘いわ！」


池畑は待ってましたとばかりにフルスイング。


「ヤベぇ！」


しまった、と思ったが打球はグーンと角度を付けてレフトスタンドへ一直線。


「やられた…」


ひろしの忠告を無視するんじゃなかった…と嘆いても後の祭り。


池畑の先制6号ツーランでドルフィンズが2点先制。



初回からピンチとなった。、