Baseball Freak 主砲の一振り 7

5月 交流戦前

クセを見抜く力

アルバラードを必死になだめようとしている内野陣とは対照的に、櫻井監督はベンチで落ち着いた表情を浮かべている。


まるでこれも想定内だとばかりに。


「あのピッチャーは中盤以降は攻略するのは難しいです(^^)
私情報処理の専門学校で心理カンセラー習ってました(^_^)」


「意味不明過ぎるぞ！」


「攻略するなら今のうちです(^ ^)
朝の朝食に麻婆豆腐、カプレーゼ、讃岐うどんありですか？」


「で、どう攻略すんだよ？（飯の事はスルーしておこ）」


「簡単ですち！(^_^)
あのピッチャーは、ストレートを投げる際、テイクバック時にグラブがやや下向きになるですち！」


いとも簡単にクセを見抜いた。


「エェ…それ、ホントかよ！」


「んだな(^ ^)」


「じゃあ、もう少しフォームを観察してから攻略した方が…」


「そのクセが表れるのは序盤だけですち！」


財前の言葉を遮るように割って入った。


「んん？どゆこと？」


「あのピッチャーは立ち上がりが悪いから、序盤は投げながら軌道修正してますち！しかし、中盤になれば制球は安定してクセは無くなってますち！」


「何じゃ、そりゃ？」


ひろしが言うには、アルバラードのピッチングは序盤に荒れ球を投げながら慣らしていき、コントロールが定まる中盤以降はクセと共に荒れ球が消えてしまうそうな。



「なんつーか…敵に回しても、味方につけても厄介なピッチャーだな」


「じゃあ、そのグラブの向きを見るようにすれば打てるって事でしょ？」


畑中はクロフォードに伝えようとした。


「でも、あのピッチャーのモーションは速くてグラブの向きを判断するのは難しいですち！」


「じゃあ、意味ねぇじゃんか！」


「んだな(^^)」


「テメー、ふざけてんのか！」


「違いますムッシュ(^ ^)」


「だから、ムッシュと呼ぶな！」


ひろしは男性をムッシュ、女性をマダムと呼ぶ。


例え相手が子供だろうが、JKだろうが…



「クロフォード選手の打席でグラブ以外に判るポイントを見つけるですち(^^)」



「どうやって…」


「それを皆で探しますち！」


という事で、クロフォードの打席でアルバラードの一挙手一投足を食い入るように見た。