Baseball Freak 主砲の一振り 7

素質はS級、素行の悪さはSSS級

恒例のバトル その2

麻生が先に仕掛けた。


オープンフィンガーグローブをはめた左ストレートが榊の顔面を襲う。


「大振りだ、バカ」


榊は余裕で躱し、バランスを崩した麻生の膝にローキックを叩き込んだ。


「グワッ…」


右膝がガクンと崩れた。


「何だよ、呆気ねぇ…」


その右膝をステップにして、得意のシャイニングウィザードを顔面にぶち込んだ。


「ングッ…」


しかし、倒れまいと必死に堪える。


「よく耐えたな…だが、これで終わりだ」


素早く背後に回り、両腕を首に巻き付ける。


「ガハッ…」


あっという間にチョークスリーパーで喉仏を潰すように締める。


「参ったしろ…お前に残された道は二つ。あの世に行くか、タップするか」


更に締め上げる。


徐々に視界がボヤけ、息が出来ない。


「グ、…ギブアップなんてするか、ワレェ…」


「あっそ」


更に力を込めた。


「ンンンン…ガハッ…」


これ以上締めるとホントにあの世行きになる。



「ったく、しょうがねぇな」


人殺しになるワケにはいかない。


榊はチョークスリーパーの体勢から通常のスリーパーホールドへ移行した。


両腕が頸動脈を締める。


「ぐ、ぐるじぃ…」


必死にもがくが、もがけばもがく程、頸動脈に食い込む。


やがて抵抗する力も弱まり、ダラーンとした状態に。


「落ちたな」


麻生は何も出来ず、締め落とされた。



「ヘッ、少しは頑張るかと思ったんだが…所詮は今の選手だ、オレらの頃に比べたらまだまだだな」


時間にして僅か1分足らず…


さすが最凶サウスポーと呼ばれるだけある。






完膚なきまでに叩きのめした榊だったが、あのバトルは無効だと麻生は吠える。


それどころか、榊は反則ばっかのチキン野郎だと、あることないことを吹き込んだ。



「テメー、あのタイマンはインチキだとか吹いてやがるな、あぁ？」


「あの時は調子が悪かったんじゃ！今ならワシの方が強いけん！」



「懲りねぇヤツだな」



というわけでリターンマッチを開始したが、前回同様1分足らずで榊が圧勝。



「クソーっ、何で勝てんのじゃ！ワシャ、広島じゃ敵無しと言われとっんじゃけん…」


「よぉ、広島のチンピラ。今のオメーは、井の中の蛙大海を知らずってヤツよ」


「ワシが井の中の蛙じゃと！」


「あったりめーだ、上には上がいるってのを覚えとけ、バカタレ！」



「クっ…」


珍しくド正論を言う榊に何も言えなかった。


（クソッタレが…こうなったら、卑怯もヘッタクレもない、兵隊作って大勢でぶちのめしてやる！これは戦争じゃ、要はタマ取ればええんじゃ！）


広島を舞台としたヤクザ映画を観すぎた影響か。



1体1では勝ち目が無いと判断した麻生は手下を作ろうと、コーチ陣を抱き込む作戦に出た。


しかし、ヘッドコーチの財前や野手総合コーチの畑中といった武闘派の返り討ちに遭い撃沈。


「ひょっとしてコイツ、凄く弱いんじゃないか？」


「とんだ身の程知らずだな」


あっという間に瞬殺された。



「おい、チンピラ！これで分かったか、お前はこれからウチのやり方に従ってもらうからな、いいな！」


「何で勝てんのじゃぁ～っ！！」


懲りない麻生だった。