Baseball Freak 主砲の一振り 7

sky-high

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目指せ勝率5割

120km/hの本格派

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さいたま S Villageの開幕戦とあって、スタジアムは超満員。


名物のレフトスタンドに設置してある温泉では、湯に浸かりながら観戦している客が大勢だ。


【1回の表、マーリンズの攻撃は 1番センター高野…背番号1】


ブレーブスのウグイス嬢と違い、さいたま S Villageのウグイス嬢はハキハキとした口調でアナウンスする。



マーリンズのリードオフマン、高野が左打席に入った。


昨年は打率304 本塁打16 打点53 盗塁47で盗塁王を獲得。

出塁率も高く、理想のリードオフマンとも言える。



それを迎え撃つのは、プロ初登板となるドラフト2位の皐月。


【右の真咲】と呼ばれるだけあって、緩急自在のピッチングがマーリンズ打線にどこまで通用するのか。



「これがプロのマウンドか…」


不思議と緊張はしてない。


強心臓だからこそ、120km/h台のボールでバッターを抑える自信がある。


テイクバックの小さいオーバースローから第1球を投げた。


これは高目に外れてボール。


スピードガンは126km/hと表示。


(何だ、この球…スピードガンより速く感じるぞ)


打席に立つと、球速以上に速く感じる。


皐月はフォーシームジャイロとツーシームジャイロの二種類を投げ分ける。


今投げたのはフォーシームジャイロで、初速と終速の差が少ない。


それ故に球速よりも速く感じる。


(厄介なボールだな)


ただのルーキーではない、高野はそう思った。


皐月はテンポ良く2球目を投げた。


今度は外寄りのボールだ。


(甘い…)


高野はバットを合わせた。


だが、手元で急激に減速して縦に変化した。


ボールがバットを避けたように見える。


「ストライクワン!」


「落ちた…」


確かに捕らえたハズなのに、ボールはするりとバットを掻い潜った。


まるで縦のスライダーの様な変化だ。


「アレが変化するんだからなぁ…大したモンだよ」


投手出身の榊でさえ、理解不能なボールだ。


「私わかります(^^)」


またもやひろしが口を挟む。


「オメーは喋んなくていい!」


「ジャイロボーラーはいないという説もありますが、極稀に存在するんですち!
朝の朝食に…」


「黙れ、クソ坊主が!」


ドガッ…


「ウギャっ」


延髄斬りをお見舞いした。



カウントはワンボール、ワンストライク。


比村がサインを出す。


ひろしが正捕手の滝沢ではなく比村を起用したのは、皐月との相性が抜群という理由だ。



そして皐月も比村のリードに全幅の信頼を寄せている。


サインに頷き、3球目を投げた。


先程よりも遅く、回転のかかったボールが山なりに弧を描く。


「遅っ…」


あまりの遅さにバットが先に出てしまう。


「ストライクツー!」


ジャイロボールから一転して、89km/hのナックルカーブが真ん中低めに決まった。


「何てボールだ…」


テイクバックが小さく、投げる直前までグラブで隠すようなフォームのせいで、直球と変化球の見分けがつかない。


そのせいで、バッターは緩急自在のピッチングに翻弄される。


球速差の大きいピッチングのせいで軟投派のイメージだが、皐月本人は自身を本格派ピッチャーだと豪語する。


「120km/h台の球だから軟投派と呼ばれるのはおかしい。
自分はストレートを主体とした本格派ピッチャーだ」


と主張する。


120km/h台のスピードだが、ストレートでグイグイ押すピッチングが持ち味だから、本格派に部類するというのが彼の持論だ。



(次で仕留めてやれ)


比村のサインに頷き、4球目を投げた。


フォーシームジャイロだ。


高野は待ってましたとばかりにスイングする。


「エッ…」


ボールを上手く捕らえたハズだが、思った以上に球威があるせいで、セカンドの真正面に転がった。


二塁を守る石川が捕って一塁へ。


「アウト!」


高野をセカンドゴロに仕留めた。



「あのスピードで力負けするのか…」


皐月の投げるジャイロボールは威力がある。


ジャイロ回転しているせいなのか、上手く芯に捕えないと球威に負けて前に飛ばない。


120km/h台でも、ジャイロボールで威力があって球種の見分けがつかない。


これが皐月のピッチングだ。
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