Baseball Freak 主砲の一振り 7

勝負の年

例によってキャンプイン

2月1日。

今日から各球団はペナントに備えキャンプをスタートする。

Glanzは毎年沖縄にてキャンプを行う。


今年はリーグ優勝、ならびに日本一奪還を目指す。

そしてユニフォームも一新。

ホーム用は白地にグリーンのロゴがプリントされたユニフォームで、ビジター用は上半身が赤地に白とブルーのロゴマークがプリントされている。


ヘルメットは鮮やかなブルーメタリック仕上げになっている。


背中は背番号の数字のみで、ネームプリントは廃止した。


榊曰く、「背番号を見て、どの選手か分かるようにならなきゃプロじゃない」という一言で決まった。


背番号は顔でもあるというのが持論らしい。



キャンプ地では、榊の後ろをついて回る小柄のとっちゃんぼうやが目立つ。


「おい、何でいちいち付いてくるんだよ！」


邪険にあしらう。


だが、小柄なとっちゃんぼうやは意に介せず、常に笑顔だ。


「私わかります(^_^)監督補佐は監督でもあります(^^)
朝の朝食に、ハムエッグ クリームチャウダー 天丼にサバの味噌煮ありですか？」


「やかましい、そんな食い合わせの悪いもん食ったら、腹壊すわ！」


「んだな(^_^)」


「あ”ぁ～、イラつくヤツだな！」


今年から監督補佐として宇棚ひろしがピッタリ背後に付いている。


まるで座敷わらしみたいだ。


「よぉ、恭ちゃん。オレはこんな茶坊主と一緒に付いてかなきゃなんないのかよ？」


今度はGM補佐の前監督中田が榊の側にいる。


榊一人にGM補佐と監督補佐が付いているのは甚だ疑問だが、この球団なら何があっても不思議ではない。


「知らねぇよ、何でこんな円柱みたいな頭したヤツがオレの側近なんだよ、ったく！」


ひろしの父親でもある、ナダウ・ヤマオカこと宇棚珍太郎が球団社長に就任する条件として、ひろしをチームに帯同させて欲しいという要求を球団側が承諾したのが原因だ。


「コイツは何でここにいるのかすら分かってないんじゃないか」


中田の言う通り、ひろしはキャンプ地に来た意味すら分からない。


「これでも、レジェンド級の名選手なのになぁ…何でこんなに劣化したのやら」


そのレジェンドクラスのひろしと榊は高校時代、特大のホームランを打たれた。


当時、榊は高校三年生でひろしは1級下の二年生。


夏の予選準決勝で榊率いる高校と4番を打っていたひろしの高校が対戦。


試合は4対1で榊の高校が勝利したが、ひろしのホームランで1点を失った。


榊にとっては、一個下の相手に打たれた事が唯一の汚点で、リベンジの機会を伺っていた。


その後、ひろしはドラフト1位で埼玉ギャランドゥに入団。

1年目からタイトルを独占し、史上最高のプレイヤーとして賞賛を浴びた。


一方、榊は高校卒業後に社会人野球で頭角を現し、東京キングダム（現東京KINGDOM）に入団。


これで高校の時の借りを返せると意気込んだが、ひろしは既に力が衰え、オマケに監督である珍太郎に試合後バックドロップを食らい、球界を去った。


齢ハタチにして急激に衰えたひろしを、名だたる研究家が様々な検査を行ったが、どこも異常は無く、出た結果が【突然変異】との事。


早熟なサラブレッドがあっという間に衰え、見た目も縮小して茶坊主に変わり果てたという、絶対に有り得ない劣化を遂げた。



そんな男が数十年後に再び交わるとは、榊も頭が痛いだろう。