Baseball Freak 主砲の一振り 7

開幕！

例の親子

中邑はフォークが冴え渡り、初回から三者連続三振とエンジン全開。


フォームも昨年と比較して躍動感に溢れ、ストレート、変化球共にキレは抜群。


Dodgersの先発大園も得意のスライダーが冴え、1番城戸をファーストゴロ、2番白石をレフトフライ、3番唐澤をショートゴロと三者凡退に抑えた。





ちょうどその頃、一塁側内野スタンドでは白髪にサングラス、口ひげをたくわえた老人と、まん丸の坊主頭にメガネを掛けた茶坊主みたいな二人が試合を観戦していた。



「Glanzは良い選手が多いな。さすが、昨年の日本一チームだ」


老人が腕組みしながら言う。


「私わかります(^^)
良い選手は朝の朝食をしっかり食べます(^_^)

朝の朝食に納豆、ハムカツサンド、コーンポタージュにカツ丼ありですか？ち！」



「うるせぇ、黙って観てろ！この、デコ助が！」


茶坊主が意味不明な事を言うと、老人は黙れと一喝する。


老人の正体は名古屋99ersの前監督で、かつてはGlanzの前身、静岡ピストルズの監督でもある、ナダウ・ヤマオカ氏と、茶坊主の正体は消滅してしまった幻の球団、埼玉ギャランドゥのスター選手、宇棚ひろしの親子だ。


ナダウ・ヤマオカこと、宇棚 珍太郎は同じく埼玉ギャランドゥの名選手で、数々のタイトルを手中に収めた天才バッター。

現役時代、【昼夜問わずのリーディングヒッター】【下半身もホームラン王】【ヤリ逃げ盗塁王】という程の好き者で、地方遠征の際、全国にいる現地妻に種をばらまき、隠し子を何人も作った。


その一人がひろしなのだが、実際は血の繋がらない親子。


その昔、遠征先で知り合った妊婦とのツーショットを撮られ、それをネタに脅迫してきた輩の妻が妊婦で、珍太郎は多額の手切れ金を輩に渡し、妊婦との関係を終わりにしろと忠告。


輩はそれに従い、妊婦は珍太郎の援助により出産。

名前をひろしと名付けた。


ひろしは幼少の頃から珍太郎に野球の英才教育を受け、少年時代には名だたるスラッガーとしてプロの注目を浴びた。


その後、ドラフト1位でギャランドゥに入団。


監督でもある珍太郎との親子鷹でギャランドゥの優勝に貢献。


プロ1年目で個人タイトルを総ナメし、珍太郎を凌ぐ天才プレイヤーと呼ばれたが、あまりにも早熟過ぎた故に、ハタチを過ぎてから成績は下り坂に。


最終的には、野球のルールさえ分からない程の超絶ダメプレイヤーに変わり果て、堪忍袋の緒が切れた珍太郎は試合後、ベンチ前で【元祖ヘソで投げるバックドロップ】を炸裂させ、珍太郎は監督を辞任。


ひろしもひっそりと球界を去り、ギャランドゥは間もなく消滅。



珍太郎は球界との関係を断ち切っていたが、ある日自宅で洋モノのセクシー女優の動画を観ているうちに、

「そうだ、アメリカ行こう」


と思い、急遽アメリカに渡ったのはいいが、パツキン女に相手にされず、暇つぶしにマイナーリーグの試合を観戦しているうちに、


「ヘッタクソだなぁ、オレがコーチすれば見違える程に上達するのに」

と思い、マイナーリーグで打撃コーチに就任。


数年後には、メジャーリーグで日本人初のヘッドコーチとなり、帰国後は静岡ピストルズの監督として、現在GMの榊や現監督の中田、天才バッター櫻井 大翔を育てた。


片やひろしの方は、相も変わらずSNSでクソまずい朝食の写真をアップしている。





「私わかります(^^)」


「何が？」


「静岡はサーカー大国です(^^)」


ちなみにサーカーとは、サッカーの事だ。



「何で、こんなアホを養子縁組してしまったんだろ」


嘆く珍太郎、息子のひろしは相変わらずのマヌケだが、この観戦は何を意味するのやら…