Baseball Freak 主砲の一振り 7

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ストーブリーグ

縦のシュート

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キャンプも中盤に入り、各選手の順調な仕上がりを見せる。


そんなある日、ドラフト1位の反町が唐澤と何やら話をしていた。


「唐澤さん!」


「ん?どうした、レン」


「実は、唐澤さんと1打席勝負をして欲しいんです」


「勝負?」


突然な申し出に、唐澤は少し戸惑いの表情を浮かべる。



「あ、いや…別に変な考えは無いです。ただ、自分の球が一流選手に通用するかどうか、それを確かめたくて」


「そりゃ、ドラフト1位なんだし、通用すると思ったからこの世界に入ったんだろ」


「そうじゃなく、自分が考案した変化球が通用するかどうか…それを唐澤さんの目で判断して欲しいんです、お願いします!」


そう言うと、深々と頭を下げた。



「変化球って、どんな球なんだ?」


「ん~、まぁ…一言で言えば縦の変化なんですが」


「フォークとは別の変化球なのか?」


反町のフォークはプロでも通用すると言われる程のキレと変化だ。


「ハイ…多分、フォークよりも落差があります」


フォークより縦に変化する球とは。



「そんなに変化するのか…ヨシ、じゃあ勝負しよう」



「ありがとうございます!」


唐澤に礼を言うと、早速準備を始めた。



「ヨシ、準備はいいか?」


「あ、ハイ!大丈夫です」


「じゃあ始めよう!1打席のみだからな」


「わかりました」


滝沢がキャッチャーとなり、1打席のみの勝負が始まった。



「んじゃあ、オレが審判をやるとしよう」


中田監督が審判を買って出た。


選手やコーチ達はベンチ前やバックネットで勝負を見守る。



反町の持ち球は、158km/hのフォーシームとツーシーム、140中盤のカットボールにSFF気味に速く落差のあるフォークボールの4種類。


その気になれば、カーブやスライダー、チェンジアップ等も投げられるのだが、器用貧乏になりたくないと思い、必要ではない変化球を極力省いた結果、4種類の持ち球となった。



サインが決まり、ワインドアップから力強いスリークォーターのフォームで初球を投げた。


指先から放たれたボールは、物凄い速さでアウトコースギリギリに決まった。



「ストライクワンっ!」



「ほぉ~、154km/hだってよ」


スピードガンを持つ勅使川原が驚いた表情をする。


「仕上がりは上々ってとこだな」


これなら開幕一軍も夢じゃない、中田はそう思った。



(さて、次はどんな球を投げてくるんだ)


唐澤は悠然と見送った。


ハナからストレートやフォークには見向きもせず、反町の編み出した新球に狙いを定めている。



反町の顔つきが変わった。


(ヨシ、試してみよう)



新球を投げるつもりだ。


ゆったりとしたワインドアップモーションから2球目を投げた。



ギューン、と初球よりも回転の掛かったボールがベース手前で急激に下に変化した。


「なっ、…」


唐澤は思わず声を上げた。



「オット…」


滝沢は辛うじてボールをキャッチ。


「えーっと、今のはストライクかな」


ボールの変化に気を取られ、判定が曖昧になった。



「何だ、このボールは」


唐澤の目には、落ちるというより、下へ伸びるという球筋に見えた。



その軌道はフォークとは違い、変化量もかなり大きい。



「縦のスライダーみたいな変化だな」


「ですけど、少し変化が違うような」


縦のスライダーならば、スライダー回転しながら縦に変化するが、この球はスライダー回転はしていない。



「おーい、反町!もう1球投げてみろ」


「ハイ」


中田の指示通り、再び新球を投げた。



グイーン、と回転数の高いボールが鋭角的に縦に変化した。



しかも、落差が大きい。



「これは縦のシュートと呼ぶべきか…そんな軌道ですね」


バックネットで見ていた白石がこう評した。



「あぁ、確かに!縦の変化に目が行きがちだけど、少し外側にスライドしながら落ちたよ」


唐澤には僅かにシュートしながら鋭く落ちたように見えた。



「シンカーじゃないのか?」


「いや、シンカーならばもう少し緩く変化するだろ」



縦のシュート…それにしても、とんでもない変化球みたいだ。
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