Baseball Freak 主砲の一振り 7

ストーブリーグ

FAの目玉

ロビンソンの代わりは、今年ケガで1年棒に振った吉岡   武尊（よしおかたける）が復活する為、その穴埋めは十分期待出来る。


吉岡は強肩強打の三塁手で、ロビンソンよりも高い打率を残せる。

守備も安定しており、不安な面よりも期待感の方が上回る。



一方、ルイスの穴埋めは新外国人に期待が掛かるのだが、外国人選手はムラが多く成績にも顕著に現れる。


そこで、中田監督はオフにFA宣言した名古屋99ersの城戸 裕次郎（きどゆうじろう）外野手獲得に名乗りを上げた。


 城戸は9年目の30歳。


今季は打率.293 本塁打16 打点46 盗塁26 出塁率.386 OPS.837の成績を挙げ、99ersのリードオフマンとして地区優勝に貢献した。



過去には盗塁王と最多安打のタイトルを獲得し、3割を5度、ゴールドグラブ賞2回、ベストナイン3回を受賞するリーグ屈指の外野手だ。


中田は城戸にライトのポジションを用意し、打順も1番で固定するつもりだ。



盟友でもある、GMの榊 恭輔（さかききょうすけ）、ヘッドコーチの勅使川原 統（てしがわらおさむ）も城戸獲得に異論は無く、諸手を挙げて賛成した。





だが1つ問題点がある。


仮に城戸を獲得すれば、99ersは金銭補償より人的補償を選ぶだろう。


そうなれば、誰がプロテクトから外れるのか…

その点は納得がいくまで会議を重ねるしかないのだが、かなり困難を極めるだろう。





そして城戸との初交渉が行われた。


城戸獲得に名乗りを上げた球団は東北マーリンズ、SAITAMA Glanz、京都Super Phoenix、高松マリナーズ、Fukuoka Dodgersの5球団。


それぞれ破格の条件で我がチームに引き入れようとする。



Glanzは4年契約で16億プラスインセンティブという金額を提示した。



城戸は埼玉出身でGlanzは正に打って付けのチームでもある。



ただ、他球団との交渉も慎重に行っていきたいと伝え、初交渉は話を聞くだけで終了した。





「ウチに来ると思うか？」


「さぁな」


「わかんねぇよ、コレばっかりは」


とにかく誠心誠意、我がチームに必要だという事を説くしかない。




そして城戸との初交渉の2日後、Glanzの財前 貴博（ざいぜんたかひろ）外野手が現役引退を発表した。


財前は3年前にメジャーリーグ カリフォルニア・ロケッツからGlanzの前身 武蔵野スカイウォーカーズに入団。

開幕戦で史上初のサイクルホームランを達成し、その勢いのまま三冠王に輝きMVPを受賞した。


その後は助監督を兼任しながら代打の切り札として活躍したが、メジャー時代に網膜剥離の手術を行ったが後遺症で視力の低下によりバッティングにも影響が及び、引退を決意した。




「世話になったな、とっつぁん…」


「勿体ねぇな、まだまだやれるじゃねえか」


「バカ言うなよ、野球ってのは打って、走って、守るのが出来て1人前じゃん。
今のオレァ、それが満足に出来なくなったんだよ」


財前からすれば、その1つでも欠けていれば野球とは呼べない。


そんな考えを持っているのだから、今の状態ではグラウンドに立つことが精一杯だ。




 財前は来季からGlanzの二軍監督に就任。


これに伴い、今季まで二軍監督をしていた井原は来季から一軍のバッテリーコーチとして辣腕を振るう。




Glanzが新たに生まれ変わる時がきた。