プロ野球選手が異世界に転移したら向こうでも野球をやるハメに… 〜主砲の一振り Another story

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試合よりも乱闘

ガラの悪い連中

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そんなミゼル・ベルセルクの中心選手は、センターを守るゲーリー・ハミルトン外野手。


野球の実力も然る事乍ら、ケンカの腕前も滅法強く、昨年はホーランド・ソーサラーとの試合中に乱闘を起こし、ソーサラーの選手4人を病院送りにした程の荒くれ者だ。


ハミルトンの次に厄介な人物は、サードを守るボブ・ガイル内野手。


常にハミルトンと行動を共にし、乱闘が始まれば真っ先に突っ込んでいく切込隊長的な存在。


彼もケンカの腕前はかなりのもので、現在までに8回の退場処分を受けている。




「とんでもねぇヤツらだな…」


「そうなのよ、まともに戦えば勝てる相手なのに、アイツらは変に威嚇してくるから、選手たちは恐れて自分のプレーが出来なくなるのよ」


「プロなのに、対戦相手にビビってどうすんだよ」


呆れるしかなかった。



「ビビるって言うけど、威嚇だけじゃなく、プレー中に仕掛けてくる事が多いのよ!
しかも、審判の死角になるような場所から仕掛けるから…」



「だったら、やり返せばいいだけの話だろ」


するとミリアは大きく首を横に振った。


「とんでもないっ、やり返せるワケないでしょ!
そんな事したら、何倍になって返ってくるか…」


「そんな仕返しされたのかよ?」


「いや、された事ないけど…でも、やりかねないわよ、ヤツらなら」



(何だ、そりゃ?単にビビってるだけだろうが)


恐怖心を植え付けられているらしい。






そして馬車はヴィーツ王国に着いた。




「さて、着いたか…って、皆暗い顔してんなぁ。
まるでお通夜じゃん」


近衛の言う通り、チームメイトの顔色が悪い。


「はァ…着いたのかよ…オレ、この連戦は出たくないな」


ウィルがボソッと呟く。



「オレもだよ、カントクに言って欠場にしてもらおうかな」


「オレもそうしてもらおうかな」


「あぁ~、やりたくねぇよ~っ!」


他のチームメイトも口々に休みたいと言い始める。



「マジかよ、そんなにビビってるのかよ」


近衛には理解出来なかった。



すると外ではクレアの大きな声が聞こえた。


「チョット、何すんのよっ!」



「ん、何だ何だ?」


馬車から身を乗り出して見ると、クレアが数人の男に囲まれていた。


肩には近衛のバットケースを掛けている。



「元気がイイねぇ、このメイドは」


「たまんねぇな、オイッ!」


「そんなモン、ほっぽり出してオレらと遊びに行こうぜ」


どうやらタチの悪い連中にナンパされてるらしい。



「アァ~、ウザっ!こんな連中、一瞬で吹き飛ばしてやりたいけど」


女神の頃なら、魔力で吹き飛ばす事も造作もないのだが、人間に変えられてしまったせいで能力は0になってしまった。



「ほら、お嬢さんコッチに来いよ」


ひょろ長の男がクレアの肩に手を置いた。


「触るんじゃないわよ、ブサイクのクセに!」


気の強いクレアは手を払いのける。



「コノヤロー、ブサイクとは随分な言い草じゃねぇか」


「ヤッちまうか、コイツ」


男たちは力づくでクレアを押さえつけようとした。



「いやぁ~っ!」


クレアはケースからバットを取り出しブンブンと振り回した。



「危ねぇ、何しやがんだ!」


「おい、早く捕まえろ!」



誰も助けに入らない。



「何やってんだ、アイツは」



これはヤバいと思い、近衛が馬車から降りて助けに入ろうとした。
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