プロ野球選手が異世界に転移したら向こうでも野球をやるハメに… 〜主砲の一振り Another story

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ベスパネット・ワイズスというチーム

圧勝

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試合は序盤の3回が終わったところで、0対5とAチームの一方的な展開と化していた。


何故、こんなに点差が開いたのか?


近衛が見つけた弱点とは、Bチームの4番マーモセットの存在だった。


マーモセットは確かにチーム1の長打力だが、その反面低打率で三振の数もかなり多い。


オマケに守備範囲は狭く鈍足となれば、そこに目をつけないワケが無い。


近衛のアドバイスで、Aチームの選手は三塁側へ執拗なバント攻撃でマーモセットを翻弄した。


タダでさえフットワークの悪いマーモセットがいいようにあしらわれ、バッティングでは汚名挽回とばかりにブンブン振り回すが、キャッチャーワイクーの変化球主体のリードにバットは空を切る。



Aチームはイシュー、近衛の1,2番コンビで出塁、盗塁とBチーム守備陣を引っ掻き回し、エラー絡みを含む5得点を挙げ、序盤で勝負あり。


終わってみれば、1対8のワンサイドゲームでAチームが圧勝。


イシューが5打数3安打、1四球、2盗塁を決め、近衛は4打数4安打、2四球、4打点に1盗塁という大活躍。


反対に、マーモセットは4打数ノーヒット、3三振を喫し、守っては2失策と散々な結果に終わった。






「クソっ、何で敗けなんだっ!
おいっ、オマエらが打たないから敗けたんだ!
敗けたのはオマエらのせいだ!」


ベンチでマーモセットの怒声が鳴り響く。



「な、何言ってんですか!アンタは三振ばっかじゃないか!」


チームメイトが反論する。



「何だと、オレのせいで敗けたって言うのか!」


「オマケに、エラーして点を取られたじゃないか!
アンタのせいで敗けたようなモンだろうが!」



「コノヤロー…オレに歯向かうとはいい度胸だな」


マーモセットが相手の胸ぐらを掴んだ。


「止めろ、コイツの言う通りだ!」


「アァ、誰だ!」


監督のミラージュが止めに入った。



「置物扱いのアンタがしゃしゃり出てくんじゃねぇよ!」



こんな役立たずの監督より、オレの方が偉いんだとばかりに誇示する。


「守ってはエラーを連発、打席では三振を繰り返すだけ…
そんな疫病神が他のヤツらにどうこう言える立場かっ!!」



「クッ…」


監督の正論にぐうの音も出ない。


監督は更に続ける。



「マーモセット…お前は4番を打つ資格は無い!そして、サードのポジションも剥奪する!これは監督命令だ!」



「何ぃ、今までこのチームを引っ張ってきたのは誰だと思ってんだ!」



「笑わせるな、たかだかホームラン20本打っただけのお前がチームを引っ張ってきただと?
打率.206、三振の数は147個とワーストのお前が主砲面するんじゃないっ!!」


マーモセットの昨季の打率は.206 三振は147とワーストワンだ。


チーム1のホームランを打ったが、たまに打つホームランよりも確実性のあるバッティングに欠けている。



「…オレは、チームの為を思って」


「チームの為なら、もう少し考えたバッティングをしたらどうなんだ?
ただやみくもに力一杯振り回すだけのバッティングなんか、クソの役にも立たないんだ!」


「マジか…」


ベスパネット・ワイズスはマーモセットに忖度するチームだった。


誰も何も言わないせいで、マーモセットが付け上がり、天狗になってしまった。


最下位の要因はマーモセットの存在でもあった。









「アレで気づかなきゃ、コレだな」


その様子を見ていた近衛は、クビを切るジェスチャーをしていた。



「コノエさん…ボクと同じ新人なのに、まるでチームのキャプテンみたいだ」



「そんな事はないよ。ただ、頭に描いた戦法を試してみたかっただけさ」


「でも、それが見事に的中するなんて!コノエさんは今まで何処でプレーしてきたんですか?」


イシューの質問にどう答えていいのやら。



「何処でって…そりゃ、ここからかなり離れた国でプレーしてただけだよ」



「ほぉ、遠い国でプレーか。一体何処の国でプレーしてたんだ?」


「エッ?」


「か、監督…」


監督がいつの間にか後ろに立っていた。



「コノエ…お前のプレーはとても洗練されたチームプレーだ。
何処でそんなプレーを学んだんだ?」



「いや、それは…あの、ローランド国っていう、かなり遠い場所で学んだもので」


ミリアの時と同じ国の名を言った。



「ローランド国…あんな所でエクストリームボールが流行ってるとは聞いた事無いんだが」


「あぁ~、流行ってはないですけど、そこそこ普及してるんすよ」


テキトーな事を言ってごまかした。




何はともあれ、近衛はマーモセットとの勝負に勝ち、早くもワイズスの中心選手として一目置かれるようになった。

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