プロ野球選手が異世界に転移したら向こうでも野球をやるハメに… 〜主砲の一振り Another story

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ベスパネット・ワイズスというチーム

ボスキャラ登場?

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「うぅぅぅ…調子に乗って食い過ぎた」


主人の作った夕飯を「美味いっ!」と何度もおかわりしたせいで、腹が脹れてしまった。


部屋に戻りベッドに横たわっていると、窓から月の光が照らしている。


この世界は夜になると、双弦の月(ダブルムーン)といって2つの月が空に浮かび上がる。


地球と比べて月までの距離が近いせいか、月の光が幾分眩しい。


毎月中旬の3日間は2つの満月で日中と変わらぬ光が照らしている。


その為、街灯は少なく月明かりでも十分な明るさだ。



上弦と下弦の半月が少し赤く色付いている。




ぼんやりと月を眺めながら、これからの事を考えた。



「早く元の世界に戻りたいけど…何せ、チームメイトがどんなヤツかも知らないし、見た事も無いしなぁ…こんなんで優勝目指すとは、無謀過ぎるだろ」



来月の開幕へ向け、チームメイトとの顔合わせは勿論、コミュニケーションも取らないといけない。



明日は早速、チームメイトとの顔合わせを行う。




「なるようになるしかないか…」



目を閉じ、ゆっくりと深い眠りについた。






翌朝、近衛は宿で朝食を摂った後、ワイズスの本拠地でもあるラインハルト神殿に向かった。


宿から神殿までは徒歩で約30分程。



馬車に乗ればもう少し速く着くのだが、散歩がてら歩いて行った。


何せ、文明がかなり遅れた世界だけに、電車や車なんて乗り物は存在しない。



「それにしても、スタジアムじゃなく、神殿とは」



この世界では、野球は国技として知られているが、元々は神が考案した競技と言い伝えられ、神が観戦する為にという理由で神殿と呼ばれている。


しかも、神殿というだけあって、日本やメジャーの様に売店や売り子の姿は見当たらない。


神殿は神聖なる場所という事もあって、一切の飲食を禁じられている。


ただ例外で、喉の乾きを潤す水を飲むことだけは許されている。




そうこうしているうちに、神殿の入口までたどり着いた。


「この前はミリアがグラウンドにワープしたけど」


グラウンドまで行くにはどこを通っていいのやら。


入口でウロウロしていると、選手らしきガタイのいい青年が大きなバッグを肩にかけてコチラにやって来た。


(選手かな…)


声を掛けてみた。


「あの…実は今日からこのチームの一員になるコノエ=カツヤという者だけど、グラウンド内に行くにはどうやって行けばいいのやら」



その青年は近衛を頭の先からつま先まで見ている。


「トライアウトに合格した新人か?」


「えぇ、今日からヨロシクお願いします」


すると、青年は右手を差し出しながら答えた。


「オレはウィル=スパイク。ベスパネット・ワイズスに入団して今年で4年目になる」


「じゃあ…ヨロシク、ウィル。オレの事はカツヤって呼んでください」


「そうか。じゃあ、カツヤ。オレの後に付いてこい」


「ハイ…」


ウィルの案内で神殿内へ入った。



ウィルはライトを守る選手で、打順は主に6番を打っている。


チームで唯一3割をマークするバッターで、長打は少ないがヒットを量産するアベレージヒッター。


足はやや遅いが、強肩で守備は良い方だ。



「オレの隣が空いてるから、そこを使えばいい」


「ハイ、ありがとうございます」


ロッカールームに入り、ウィルの隣のロッカーを使用した。



すると、ドアが勢いよく開き、上半身がヘラクレスの様な筋骨隆々な男が大股で入ってきた。



「おはようございます、マーモさん!」


着替えを止め、ウィルが直立不動で挨拶をした。



「おぅ、ウィル!ん?隣のヤツは新人か?」


訝しげな表情で近衛を見る。


「あ…申し遅れました。この度、トライアウトに合格した、コノエ=カツヤと申します。よろしくお願いします」


多分、このチームのボス的存在だろう。



近衛もウィルに従って挨拶をした。



「フン、新人か…オレのプレーを見て、よく勉強するんだぞ」


いかにもお山の大将的なキャラクターだ。
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