プロ野球選手が異世界に転移したら向こうでも野球をやるハメに… 〜主砲の一振り Another story

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ベスパネット・ワイズスというチーム

何処の出身なの?

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ミリアに呼ばれ、近衛は部屋に入った。

「こちらへどうぞ」


木目調のテーブルを挟み、対面に座った。


(それにしても…なんつー格好してんだ)


目のやり場に困る。


球団関係者というよりも、女戦士の様な出で立ちだ。


(コイツ、普段からこんなの着てるのかよ)


ビキニアーマーにマントという格好。


この世界ではこれがフツーなのか、それともここでは流行りなのか。


(あんまり見るのよそう)


イヤらしい目で見るな、と言われそうな気がして目を逸らした。



「コノエ=カツヤ…カツヤと呼んでいい?」


「好きなようにどうぞ」


「そう…ワタシの事はミリアって呼んで」


「了解」



ミリアは書類を見せた。



「ここに書いてある通り、カツヤの報酬額は毎月金貨1枚と銀貨50枚。
年間に払う額は、合計で白金一枚と金貨5枚ね」


「キンカ…ん?」


この国の貨幣の価値がイマイチ分からない。



「不服なの?」


「いや、そうじゃなく…何か、ピンとこなくて」



「トライアウトに合格して、これだけの報酬を貰えるなんて、フツーじゃ有り得ない事なのよ」


合格した3人の中で近衛の額は破格らしい。


「へぇ、そうなんだ」


「…ねぇ、カツヤ。アナタ、出身は何処?」


「しゅ、出身?」


どう答えればよいのやら。


「アナタのその黒い髪といい、他の選手と比べて次元の違うプレーを見てると、フィレニア国の住人じゃない気がするんだけど」


異世界では黒髪が珍しいみたいだ。


「ん~、出身は日本なんだが…」


「ニホン…?それはどの辺りにある国?」


ミリアは地図を広げた。


その地図は見慣れない地形だらけが載っている。


(…これがこの世界の地図かよ…サッパリ分からん!)


「カツヤ…アナタの国は何処?」


何処と言われても、この地図には載ってない。


「まぁ、遠国っていうか…遠い場所から来たってとこかな」


「この地図だと、どこら辺なの?」


(知らねぇっつ~の!)


しつこいヤツだ。



「いや、だから…この辺りだよ」


テキトーに地図の右下を指した。



「エッ、トルム国なの?それなら、ここの隣じゃない」


指した場所はフィレニア国の隣、トルム国だと言う。



「違っ…ここは生まれた場所で、育った場所はここだよ」


今度は左上にある孤立した小さな島を指した。


「ローランド国?ここがカツヤの育った国?」


「あ、あぁ…そうだよ。オレは生まれてすぐ、このローランド国に移住したんだ」


「確かに遠国だわね…でも、この国にニホンなんて地名は書いてないわよ」


「そ、それは、向こうの言葉でそう呼んでいるんだよ」


「へぇ、そうなんだぁ…まぁ、カツヤが遠い国からフィレニア国に来たというのは分かったわ」



どうにか納得してもらった。



「じゃあ、もう一度最初から説明するけど…」


改めてミリアからこの国の貨幣やチームに関する事を教わった。




そこで分かった事は、この世界では野球の事を《エクストリームボール》と呼び、来月からエキサイティングリーグというペナントレースが開幕する。


エキサイティングリーグは、10チームが120試合を戦い抜く、1リーグ制の公式戦だ。



各チーム25人のベンチ入りだが、成績が下降すると即刻戦力外通告を受け、毎月開催されるトライアウト合格者と入れ替わるシステムを採用。


ちなみに、この世界では二軍という概念は無く、年中チーム内で選手の入れ替わりが行われている。



そして貨幣の事だが、


白金貨=金貨10枚

金貨=銀貨100枚

銀貨=銅貨100枚

銅貨=約100円相当


近衛の1ヶ月金貨1枚と銀貨50枚を日本円に換算すると、約150万円となり、年俸だと白金貨1枚と金貨5枚で約1500万円という計算になる。

(※この世界は10ヶ月で1年という計算になる)


ブルーソックス時代の年俸は約850万で、こっちの方がより多く貰える。


(コッチの生活も悪くないかもな)



活躍次第では更に報酬額がアップし、日本円にして数億円もの金額を手にする事も可能だ。




こうして、ベスパネット・ワイズス入団の契約が終わり、翌日からチームメイトと合流して来月の開幕に向けて練習がスタートする。



毎年最下位のワイズスを建て直すのは容易じゃないが、元の世界に戻る為には頑張るしかない。

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