84 / 84
新戦力
天才の復活2(最終話)
しおりを挟む
吉川はその当時を思い出しながら静かな口調で答えた。
「あの時は本当にご迷惑をお掛けしました」
吉川は深々と頭を下げ、話を続けた。
「自分の発言で球界を混乱させ、ファンの方達にもご迷惑掛けてしまった。
その事に関して言えば、全ての責任は私にあります。
ファンの方々、その節は誠に申し訳ありませんでした」
再度頭を下げた。
吉川が頭を下げる度にフラッシュが焚かれる。
「私は4年前に引退会見を開いて日本球界から離れてアメリカに渡しました。
マイナーリーグのコーチをして、ゆくゆくはヤマオカ監督の様にメジャーで日本人コーチになる事を夢見てました。
そんな時にヤマオカ監督がシーズン中にもかかわらず、アメリカまで来て私に現役復帰をして欲しいとの要請がありました。
私は現役を退いた身。ましてや日本に帰るだなんて、世間が許してくれるはずも無いと、お断りしました。
その際、ヤマオカ監督は私にこんな事を言いました。
【キミの手で翔田の二刀流を終わらせて欲しい】と。
確かに彼はキングダム時代の後輩でもあり、チームに欠かせない中心選手でした。
同時に球界を代表するスーパースターで、未来の野球選手でもある少年たちの目標でもあります。
私は今でも彼の二刀流には反対です。
それは以前にも申し上げましたが、彼は一年おきに投手と野手を交互にやってます。
それが如何に危険な事なのか…
その疲労は我々が想像する以上の疲労です。
まだ若いとは言え、そのツケは間違いなく返ってくるはずです。
このままでは、彼は早い時期に現役を退く事となります。
私はもう、彼の先輩ではありません。
同じ野球選手として、そして私の願いでもある二刀流を止めて、投手なり野手なり一本に専念して欲しい。
その為に私は99ersの一員となって彼の二刀流を終わらせるつもりです」
真っ直ぐに前を見て翔田への思いを告げた。
ヤマオカは吉川の言葉に頷く。
「では、吉川選手が現役復帰した最大の理由は翔田選手の二刀流をご自身で終わらせる為だと仰るワケですね?」
「そのつもりです」
力強く答えた。
「奇しくも明日からはホームでキングダムとの連戦がスタートする。
吉川くんは早速チームに合流して明日から試合に出場してもらう。
4年というブランクがあるが、マイナーでコーチをしていた時も欠かさずトレーニングを続けていたお陰で身体は十分に仕上がってる。
とにかく明日からのキングダム戦は彼の再デビューとして、華々しい活躍を期待してるよ」
満足そうな表情で締め括った。
「スゲーな、ヤマオカのとっつあん!吉川を早速試合で使うつもりなのかよ」
「現役時代と全く変わらない体型でしたね。
彼にとって、4年というブランクはそれ程ネックにはならないと思います」
櫻井は吉川の復活を警戒する。
「いくら天才だと言われても、4年もブランクがあれば試合勘も鈍るし、以前の様には動けないだろう」
榊は吉川を単なる客寄せパンダという好奇の目で捉えた。
「いえ、彼は活躍しますよ。
試合に遠ざかっているとは言え、短時間で修正するはずです」
「まさか~っ!確かにコイツは才能あるけど、才能だけで言えば、唐澤や結城だって引けを取らないぜ!
それに、お前の現役時代と比べてもお前の足元にも及ばないじゃん」
吉川があのまま日本球界に残れば、歴代最多安打を記録する櫻井と同様の活躍をしただろうという見方も多い。
だが櫻井はそれを否定する。
「ホントの天才は彼ですよ。
少なくとも、唐澤くんや結城くんでさえも吉川くんの才能には敵いません。
もし彼がリタイアせずにキングダムに残っていたら…
間違いなくボクの記録を更新するはずです」
櫻井の見立てでは、吉川は唐澤や結城と言ったスラッガーよりも、遥かに上回る程の能力を持ち合わせている。
「お前より天才というのかよ?
いくら何でも、それは買いかぶりってもんだろ」
しかし櫻井は首を横に振る。
「世の中にはボクたちが想像を越えるような人物像がまだまだいるって事なんですよ」
記録はいつか更新されるもの。
それが少し速まるかどうかの問題ないで、大した事ではない。
そんな事よりも、先ずはレボリューションズに勝ち越しをしなければならない。
明日からレボリューションズの本拠地でもある、ISHINフィールドで三連戦がスタートする。
どうなる事やら…
終わり
「あの時は本当にご迷惑をお掛けしました」
吉川は深々と頭を下げ、話を続けた。
「自分の発言で球界を混乱させ、ファンの方達にもご迷惑掛けてしまった。
その事に関して言えば、全ての責任は私にあります。
ファンの方々、その節は誠に申し訳ありませんでした」
再度頭を下げた。
吉川が頭を下げる度にフラッシュが焚かれる。
「私は4年前に引退会見を開いて日本球界から離れてアメリカに渡しました。
マイナーリーグのコーチをして、ゆくゆくはヤマオカ監督の様にメジャーで日本人コーチになる事を夢見てました。
そんな時にヤマオカ監督がシーズン中にもかかわらず、アメリカまで来て私に現役復帰をして欲しいとの要請がありました。
私は現役を退いた身。ましてや日本に帰るだなんて、世間が許してくれるはずも無いと、お断りしました。
その際、ヤマオカ監督は私にこんな事を言いました。
【キミの手で翔田の二刀流を終わらせて欲しい】と。
確かに彼はキングダム時代の後輩でもあり、チームに欠かせない中心選手でした。
同時に球界を代表するスーパースターで、未来の野球選手でもある少年たちの目標でもあります。
私は今でも彼の二刀流には反対です。
それは以前にも申し上げましたが、彼は一年おきに投手と野手を交互にやってます。
それが如何に危険な事なのか…
その疲労は我々が想像する以上の疲労です。
まだ若いとは言え、そのツケは間違いなく返ってくるはずです。
このままでは、彼は早い時期に現役を退く事となります。
私はもう、彼の先輩ではありません。
同じ野球選手として、そして私の願いでもある二刀流を止めて、投手なり野手なり一本に専念して欲しい。
その為に私は99ersの一員となって彼の二刀流を終わらせるつもりです」
真っ直ぐに前を見て翔田への思いを告げた。
ヤマオカは吉川の言葉に頷く。
「では、吉川選手が現役復帰した最大の理由は翔田選手の二刀流をご自身で終わらせる為だと仰るワケですね?」
「そのつもりです」
力強く答えた。
「奇しくも明日からはホームでキングダムとの連戦がスタートする。
吉川くんは早速チームに合流して明日から試合に出場してもらう。
4年というブランクがあるが、マイナーでコーチをしていた時も欠かさずトレーニングを続けていたお陰で身体は十分に仕上がってる。
とにかく明日からのキングダム戦は彼の再デビューとして、華々しい活躍を期待してるよ」
満足そうな表情で締め括った。
「スゲーな、ヤマオカのとっつあん!吉川を早速試合で使うつもりなのかよ」
「現役時代と全く変わらない体型でしたね。
彼にとって、4年というブランクはそれ程ネックにはならないと思います」
櫻井は吉川の復活を警戒する。
「いくら天才だと言われても、4年もブランクがあれば試合勘も鈍るし、以前の様には動けないだろう」
榊は吉川を単なる客寄せパンダという好奇の目で捉えた。
「いえ、彼は活躍しますよ。
試合に遠ざかっているとは言え、短時間で修正するはずです」
「まさか~っ!確かにコイツは才能あるけど、才能だけで言えば、唐澤や結城だって引けを取らないぜ!
それに、お前の現役時代と比べてもお前の足元にも及ばないじゃん」
吉川があのまま日本球界に残れば、歴代最多安打を記録する櫻井と同様の活躍をしただろうという見方も多い。
だが櫻井はそれを否定する。
「ホントの天才は彼ですよ。
少なくとも、唐澤くんや結城くんでさえも吉川くんの才能には敵いません。
もし彼がリタイアせずにキングダムに残っていたら…
間違いなくボクの記録を更新するはずです」
櫻井の見立てでは、吉川は唐澤や結城と言ったスラッガーよりも、遥かに上回る程の能力を持ち合わせている。
「お前より天才というのかよ?
いくら何でも、それは買いかぶりってもんだろ」
しかし櫻井は首を横に振る。
「世の中にはボクたちが想像を越えるような人物像がまだまだいるって事なんですよ」
記録はいつか更新されるもの。
それが少し速まるかどうかの問題ないで、大した事ではない。
そんな事よりも、先ずはレボリューションズに勝ち越しをしなければならない。
明日からレボリューションズの本拠地でもある、ISHINフィールドで三連戦がスタートする。
どうなる事やら…
終わり
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる