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新戦力
説得2
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「アナタは確か、ヤマオカさんでは…」
何故こんな場所に…と吉川は困惑する。
「はじめまして!
私、宇棚ひろし言います(^-^)
私、静岡出身です(^-^)
静岡はサーカー大国です!
私、カレーはルーから作りますち!」
「えっ…ち?ちって、何?」
余計困惑する。
「テメーは黙ってろ!ったく、お前が口を挟むとロクな事がない」
ホントにそう思う…
「あの、この方は?」
「んー、まぁ…何つーか、オレの息子ってヤツ?」
紹介するのも躊躇する。
「えっ、息子さんと言えば確か、今は無き埼玉ギャランドゥの主砲だった…宇棚ひろし!さん?」
まさか、こんなふざけたヤツがかつて日本球界の至宝と呼ばれたスラッガーとは。
「あー、コイツはピークを迎えたのがあまりにも早すぎただけに、後は坂を下る様に落ちぶれてしまって、最終的にはルールさえ分からなくなったアホになっちまったがな」
ひろしはハタチをピークに、年々成績が下降。
追い打ちをかける様に、週刊誌がひろしのスキャンダルをスクープ。
その内容は、ひろしは未だに女性経験が無い、即ちチェリーだという記事を載せた。
球場では、ひろしをチェリーとか、ドーテーといったヤジを飛ばすファンが急増。
ギャランドゥは連敗街道を突き進む要因となった。
「そうでしたか、この方がヤマオカさんのご子息でしたか」
「私、GMやってます(^-^)
GMとは、CMのいとこです(^-^)
そういう事です!ち!」
「はぁ…」
どうリアクションしていいのか分からない様子だ。
「ま、まぁそんなワケだ」
「有名ですからね、お二人は」
「いや、ハハハ」
「それで、最後にバックドロップかましてそれが原因で引退したんですよね、確か?」
「いや、まぁ…その、アレは若気の至りというか」
「で、ヤマオカさんもそれを最後に監督の座を降りたんでしたっけ?」
「も、もういいじゃないかその話は…」
その日もひろしの意味不明な行動で試合は大敗を喫し、もう辞めた!とばかりに、ひろしを元祖ヘソで投げるバックドロップでKO。
それが原因でひろしは現役を引退し、ヤマオカは姿を消した。
そして埼玉ギャランドゥは経営難で消滅となった。
「私わかりま…」
「喋るんじゃねぇ、このバカ!」
ヤマオカが話を遮る。
どうせ、朝食がどうのこうと言う、チンプンカンプンな事を言い出すのだろうと思い、喋らせないようにした。
「えっと…今日はどういったご要件で?」
そろそろ本題に戻そう。
「…う、うん。吉川くん単刀直入に言うが、どうかウチのチームで現役復帰してもらえないだろうか?」
「現役に戻れという事ですか?」
「うむ。実はかくかくしかじかで…」
ヤマオカはこれまでの経緯を話した。
話の途中でひろしが間に入ってくるが、ヤマオカは投げっぱなしジャーマンでひろしをKOした。
「へ…へぇ、あのブラックスがチーム名を変えて、ヤマオカさんが監督に就任したというワケですか」
「そういう事なんだ。
そこでキミを是非ともウチの中心選手として復帰してもらいたいんだ。
どうだろうか」
吉川は苦笑する。
「わざわざ日本からそんな冗談を言いにここまで来たんですか?」
「ふっ、冗談か…確かに今のキミからすれば、オレの言うことは冗談にしか聞こえないだろう。
だが、オレは本気だぜ。
キミはまだ現役を退くような年齢ではない。
メジャーのコーチになるのが目標らしいが、それはもう少し先延ばしにしてもいいのではないか?
キミが選手として完全燃焼した後でも遅くはないだろう?」
「こんな所まで御足労で申し訳ないのですが…自分はもう、日本の野球に興味が無いんです」
吉川の意思は固い。
「そう言うだろうと思った。
吉川くん、もうキングダムにはあのオーナーは居ない。
去年でオーナーの座を退き、今は悠々自適な隠居生活を送っているよ」
キングダムのオーナー釜は昨年でオーナーを娘婿の穴流 志和雄(あなるしわお)に譲り、球界を去った。
吉川にとって忌々しい存在が居なくなったというワケだ。
だが吉川は首を横を振る。
「そうでしたか…でも、もうそんな事はどうでもいいんです。
ボクはマイナーでメジャーを目指している若者達に指導する事が生き甲斐なんです。
ボクの教えで彼らがメジャーに昇格する。
この事が今のボクにとって、最大の喜びなんです」
吉川の指導でメジャーに昇格した選手は多い。
それが吉川の使命でもあり、生き甲斐でもある。
「ウーン…どうしてもダメだと言うのか」
「えぇ…誠に申し訳無いのですが…」
吉川は深々と頭を下げる。
「ではこういうのはどうだろうか」
ヤマオカは一策を思いつく。
「?…」
「キミを選手兼任コーチとして迎え入れたい。
どうだろう、グラウンド内ではキミが監督して手腕を振るって欲しい」
吉川はハハハハっ、と笑った。
「ヤマオカさん…それこそタチの悪い冗談ですよ。
コーチをしながら選手をやるなんて、そんな器用なマネは出来ませんよ。
コーチというのは、そんな片手間で出来るもんじゃない。
他の人はどう思うか知りませんが、ボクは二足のわらじなんて有り得ません」
キングダム時代から二刀流を掲げた翔田を否定しただけあって、兼任という肩書きを嫌う。
だが、ヤマオカもここで引き下がるワケにはいかない。
何故こんな場所に…と吉川は困惑する。
「はじめまして!
私、宇棚ひろし言います(^-^)
私、静岡出身です(^-^)
静岡はサーカー大国です!
私、カレーはルーから作りますち!」
「えっ…ち?ちって、何?」
余計困惑する。
「テメーは黙ってろ!ったく、お前が口を挟むとロクな事がない」
ホントにそう思う…
「あの、この方は?」
「んー、まぁ…何つーか、オレの息子ってヤツ?」
紹介するのも躊躇する。
「えっ、息子さんと言えば確か、今は無き埼玉ギャランドゥの主砲だった…宇棚ひろし!さん?」
まさか、こんなふざけたヤツがかつて日本球界の至宝と呼ばれたスラッガーとは。
「あー、コイツはピークを迎えたのがあまりにも早すぎただけに、後は坂を下る様に落ちぶれてしまって、最終的にはルールさえ分からなくなったアホになっちまったがな」
ひろしはハタチをピークに、年々成績が下降。
追い打ちをかける様に、週刊誌がひろしのスキャンダルをスクープ。
その内容は、ひろしは未だに女性経験が無い、即ちチェリーだという記事を載せた。
球場では、ひろしをチェリーとか、ドーテーといったヤジを飛ばすファンが急増。
ギャランドゥは連敗街道を突き進む要因となった。
「そうでしたか、この方がヤマオカさんのご子息でしたか」
「私、GMやってます(^-^)
GMとは、CMのいとこです(^-^)
そういう事です!ち!」
「はぁ…」
どうリアクションしていいのか分からない様子だ。
「ま、まぁそんなワケだ」
「有名ですからね、お二人は」
「いや、ハハハ」
「それで、最後にバックドロップかましてそれが原因で引退したんですよね、確か?」
「いや、まぁ…その、アレは若気の至りというか」
「で、ヤマオカさんもそれを最後に監督の座を降りたんでしたっけ?」
「も、もういいじゃないかその話は…」
その日もひろしの意味不明な行動で試合は大敗を喫し、もう辞めた!とばかりに、ひろしを元祖ヘソで投げるバックドロップでKO。
それが原因でひろしは現役を引退し、ヤマオカは姿を消した。
そして埼玉ギャランドゥは経営難で消滅となった。
「私わかりま…」
「喋るんじゃねぇ、このバカ!」
ヤマオカが話を遮る。
どうせ、朝食がどうのこうと言う、チンプンカンプンな事を言い出すのだろうと思い、喋らせないようにした。
「えっと…今日はどういったご要件で?」
そろそろ本題に戻そう。
「…う、うん。吉川くん単刀直入に言うが、どうかウチのチームで現役復帰してもらえないだろうか?」
「現役に戻れという事ですか?」
「うむ。実はかくかくしかじかで…」
ヤマオカはこれまでの経緯を話した。
話の途中でひろしが間に入ってくるが、ヤマオカは投げっぱなしジャーマンでひろしをKOした。
「へ…へぇ、あのブラックスがチーム名を変えて、ヤマオカさんが監督に就任したというワケですか」
「そういう事なんだ。
そこでキミを是非ともウチの中心選手として復帰してもらいたいんだ。
どうだろうか」
吉川は苦笑する。
「わざわざ日本からそんな冗談を言いにここまで来たんですか?」
「ふっ、冗談か…確かに今のキミからすれば、オレの言うことは冗談にしか聞こえないだろう。
だが、オレは本気だぜ。
キミはまだ現役を退くような年齢ではない。
メジャーのコーチになるのが目標らしいが、それはもう少し先延ばしにしてもいいのではないか?
キミが選手として完全燃焼した後でも遅くはないだろう?」
「こんな所まで御足労で申し訳ないのですが…自分はもう、日本の野球に興味が無いんです」
吉川の意思は固い。
「そう言うだろうと思った。
吉川くん、もうキングダムにはあのオーナーは居ない。
去年でオーナーの座を退き、今は悠々自適な隠居生活を送っているよ」
キングダムのオーナー釜は昨年でオーナーを娘婿の穴流 志和雄(あなるしわお)に譲り、球界を去った。
吉川にとって忌々しい存在が居なくなったというワケだ。
だが吉川は首を横を振る。
「そうでしたか…でも、もうそんな事はどうでもいいんです。
ボクはマイナーでメジャーを目指している若者達に指導する事が生き甲斐なんです。
ボクの教えで彼らがメジャーに昇格する。
この事が今のボクにとって、最大の喜びなんです」
吉川の指導でメジャーに昇格した選手は多い。
それが吉川の使命でもあり、生き甲斐でもある。
「ウーン…どうしてもダメだと言うのか」
「えぇ…誠に申し訳無いのですが…」
吉川は深々と頭を下げる。
「ではこういうのはどうだろうか」
ヤマオカは一策を思いつく。
「?…」
「キミを選手兼任コーチとして迎え入れたい。
どうだろう、グラウンド内ではキミが監督して手腕を振るって欲しい」
吉川はハハハハっ、と笑った。
「ヤマオカさん…それこそタチの悪い冗談ですよ。
コーチをしながら選手をやるなんて、そんな器用なマネは出来ませんよ。
コーチというのは、そんな片手間で出来るもんじゃない。
他の人はどう思うか知りませんが、ボクは二足のわらじなんて有り得ません」
キングダム時代から二刀流を掲げた翔田を否定しただけあって、兼任という肩書きを嫌う。
だが、ヤマオカもここで引き下がるワケにはいかない。
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