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ペナントレース
問題児がまた一人
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翌日はデーゲームの為、午後2時に試合がスタートした。
スカイウォーカーズの先発は今年初登板の北乃。
対するレッズはエースの与謝野。
この日は与謝野の制球力が冴え、スカイウォーカーズ打線を翻弄する。
エースのピッチングに打線も応える。
3回に5番ハミルトンが北乃のナックルカーブをタイミング良く捕え、今シーズン第一号ソロで先制。
スカイウォーカーズは5回に2番筧がライト線を破るツーベースヒットで出塁するが、3番財前がフォアボールで歩き、4番鬼束はサードへのゲッツーでチャンスをモノに出来ず。
逆にレッズは6回に、9番与謝野がランナー二塁の場面で、北乃の決め球ナックルパームをセンター前に弾き返し、追加点を奪う。
北乃はこの回で降板。
与謝野は投打に渡り活躍。
最終回も危なげなく3人で抑え、2対0で完封勝利を飾った。
北乃は被安打8、2失点。与四球は3という内容だ。
榊としては、北乃を先発から外すかどうか迷った。
「アイツは舞から変化球を教わったけど、上手く使いこなせて無いんじゃないか」
北乃のナックルパームは、投手コーチの水卜が現役時代決め球にしていたナックル(実際はナックルではなく、パームボールの様な握り)を伝授されたが、変化量がバラバラで変化しない事も多い。
変化しない110km/h程度の棒球はバッターにとっては打ち頃で、長打を浴びて失点するパターンが多い。
「北乃はナックルパームに頼りすぎなところがありますね。どうでしょう、一度ファームでピッチングを改造させた方がいいと思うんですが?」
高峰の提案で、北乃はファームで調整する事となった。
北乃は143km/hと今のピッチャーにしては、球速が速くないが、スライダーとナックルカーブ、そして去年マスターしたナックルパームの球種で先発ローテーションの一角として活躍したが、今一つの成績で伸び悩んでいる。
「やっぱり、あの球は舞しか使いこなせないのかなぁ」
「まぁ、ファームで何かきっかけを掴めばいいんですけどね…まだ21才だし、これからに期待を込めて少し様子を見ましょう」
北乃が二軍に降格し、代わりに宇田川が一軍に昇格した。
その宇田川はチームに合流。
翌日の三戦目にはベンチ入りした。
「ふぁ~ぁ、ったく眠いなぁ…」
試合前のベンチでは、財前が眠そうな顔をしている。
「それにしても、もうすぐ試合だってのに、よく練習するよな…そんなに練習したら、疲れて試合どころじゃないだろ」
黙々と練習メニューをこなす選手達を尻目に、財前はゴロンと横になった。
試合前なんだから、必要以上の練習をしても意味が無い。
そんなに練習ばかりしたら、疲労で試合どころではない、というのが財前の考えだ。
そんな事をするなら、少しでも横になって体力を温存しておこうと目を閉じた。
すると、頭の後ろ側で大声を出す選手が。
「皆が練習をしてるのに、何で横になってるんですかっ!」
「誰だ、うるせぇな!」
財前が目を開けると、見慣れない選手が横に立っていた。
「誰だ、テメーは」
しかも、同じユニフォームを着ている。
「今日から一軍に登録された、宇田川紫苑です!」
帽子をとって、頭を下げた。
「シオン?あぁ、新人か」
財前はまた目を閉じた。
「起きて下さい!何で皆と一緒になって練習しないんですか!」
宇田川は注意する。
高校球児みたいな坊主頭で、シャープな輪郭。
目鼻立ちはクッキリして、精悍な顔つきだ。
「おい、新人…オメー、オレが誰だか分かってるのか」
「勿論知ってますよ!去年までメジャーで活躍した財前選手でしょう」
「知ってんなら、邪魔すんな!オレは眠いんだ」
「そうはいきません!一人だけ特別扱いなんて、ダメです!」
財前はムクっと起き上がり、宇田川の胸ぐらを掴んだ。
「おい、新人!テメー誰に物言ってんだ、あ?」
「相手が誰であろうと、自分は間違った事は言ってません!
むしろ、間違ってるのはアナタです!」
毅然とした態度で言い放つ。
「ギャーギャーうるせぇんだよ!」
宇田川を突き飛ばした。
ドガッとベンチに倒れ込むと、再度胸ぐらを掴んだ。
「何意気がってんだ、このクソガキ!テメーがオレに指図するなんて、100年早えんだ!」
しかし宇田川も負けてない。
「そんなにメジャーリーガーがエライんですかっ!
エラけりゃ、何やってもいいんですかっ!
そんなの、オレは納得しません」
「やかましいっ!」
拳を振り上げた瞬間、中田が止めに入った。
「止めろ、お前ら!何やってんだ、一体!」
中田は宇田川を起こした。
「コーチ、何でこの人だけ特別扱いなんですか?
おかしいですよ、こんなのって」
「何なんだ、コイツは!さっきから、ゴチャゴチャとうるせえヤツだな」
「止めろって言ってんだろ!」
中田は二人を引き離す。
「ったく、コッチは眠いんだ!こんな所じゃおちおち寝てられねぇや」
そう言うと、財前はベンチの奥へ引っ込んだ。
「逃げるのかアンタ!アンタだけ練習しないなんて、オレは許さないぞ!」
宇田川は大声を上げて追いかけようとする。
「待てっ、宇田川!」
中田が宇田川を羽交い締めにする。
「離せぇ!オレは間違ってないぞ~っ!」
その様子を聞きつけ、練習していた選手達が何事かと集まった。
「何だ何だ?」
「何騒いでんだ?」
「何かあったんすか?」
宇田川はまだ暴れている。
「離せ~っ!おい、アンタ!アンタ一体、何様気取りだ!」
「やかましいっ、静かにしろっ!」
選手達はポカーンとしている。
それにしても、面倒臭いヤツが一軍に昇格したもんだ…
スカイウォーカーズの先発は今年初登板の北乃。
対するレッズはエースの与謝野。
この日は与謝野の制球力が冴え、スカイウォーカーズ打線を翻弄する。
エースのピッチングに打線も応える。
3回に5番ハミルトンが北乃のナックルカーブをタイミング良く捕え、今シーズン第一号ソロで先制。
スカイウォーカーズは5回に2番筧がライト線を破るツーベースヒットで出塁するが、3番財前がフォアボールで歩き、4番鬼束はサードへのゲッツーでチャンスをモノに出来ず。
逆にレッズは6回に、9番与謝野がランナー二塁の場面で、北乃の決め球ナックルパームをセンター前に弾き返し、追加点を奪う。
北乃はこの回で降板。
与謝野は投打に渡り活躍。
最終回も危なげなく3人で抑え、2対0で完封勝利を飾った。
北乃は被安打8、2失点。与四球は3という内容だ。
榊としては、北乃を先発から外すかどうか迷った。
「アイツは舞から変化球を教わったけど、上手く使いこなせて無いんじゃないか」
北乃のナックルパームは、投手コーチの水卜が現役時代決め球にしていたナックル(実際はナックルではなく、パームボールの様な握り)を伝授されたが、変化量がバラバラで変化しない事も多い。
変化しない110km/h程度の棒球はバッターにとっては打ち頃で、長打を浴びて失点するパターンが多い。
「北乃はナックルパームに頼りすぎなところがありますね。どうでしょう、一度ファームでピッチングを改造させた方がいいと思うんですが?」
高峰の提案で、北乃はファームで調整する事となった。
北乃は143km/hと今のピッチャーにしては、球速が速くないが、スライダーとナックルカーブ、そして去年マスターしたナックルパームの球種で先発ローテーションの一角として活躍したが、今一つの成績で伸び悩んでいる。
「やっぱり、あの球は舞しか使いこなせないのかなぁ」
「まぁ、ファームで何かきっかけを掴めばいいんですけどね…まだ21才だし、これからに期待を込めて少し様子を見ましょう」
北乃が二軍に降格し、代わりに宇田川が一軍に昇格した。
その宇田川はチームに合流。
翌日の三戦目にはベンチ入りした。
「ふぁ~ぁ、ったく眠いなぁ…」
試合前のベンチでは、財前が眠そうな顔をしている。
「それにしても、もうすぐ試合だってのに、よく練習するよな…そんなに練習したら、疲れて試合どころじゃないだろ」
黙々と練習メニューをこなす選手達を尻目に、財前はゴロンと横になった。
試合前なんだから、必要以上の練習をしても意味が無い。
そんなに練習ばかりしたら、疲労で試合どころではない、というのが財前の考えだ。
そんな事をするなら、少しでも横になって体力を温存しておこうと目を閉じた。
すると、頭の後ろ側で大声を出す選手が。
「皆が練習をしてるのに、何で横になってるんですかっ!」
「誰だ、うるせぇな!」
財前が目を開けると、見慣れない選手が横に立っていた。
「誰だ、テメーは」
しかも、同じユニフォームを着ている。
「今日から一軍に登録された、宇田川紫苑です!」
帽子をとって、頭を下げた。
「シオン?あぁ、新人か」
財前はまた目を閉じた。
「起きて下さい!何で皆と一緒になって練習しないんですか!」
宇田川は注意する。
高校球児みたいな坊主頭で、シャープな輪郭。
目鼻立ちはクッキリして、精悍な顔つきだ。
「おい、新人…オメー、オレが誰だか分かってるのか」
「勿論知ってますよ!去年までメジャーで活躍した財前選手でしょう」
「知ってんなら、邪魔すんな!オレは眠いんだ」
「そうはいきません!一人だけ特別扱いなんて、ダメです!」
財前はムクっと起き上がり、宇田川の胸ぐらを掴んだ。
「おい、新人!テメー誰に物言ってんだ、あ?」
「相手が誰であろうと、自分は間違った事は言ってません!
むしろ、間違ってるのはアナタです!」
毅然とした態度で言い放つ。
「ギャーギャーうるせぇんだよ!」
宇田川を突き飛ばした。
ドガッとベンチに倒れ込むと、再度胸ぐらを掴んだ。
「何意気がってんだ、このクソガキ!テメーがオレに指図するなんて、100年早えんだ!」
しかし宇田川も負けてない。
「そんなにメジャーリーガーがエライんですかっ!
エラけりゃ、何やってもいいんですかっ!
そんなの、オレは納得しません」
「やかましいっ!」
拳を振り上げた瞬間、中田が止めに入った。
「止めろ、お前ら!何やってんだ、一体!」
中田は宇田川を起こした。
「コーチ、何でこの人だけ特別扱いなんですか?
おかしいですよ、こんなのって」
「何なんだ、コイツは!さっきから、ゴチャゴチャとうるせえヤツだな」
「止めろって言ってんだろ!」
中田は二人を引き離す。
「ったく、コッチは眠いんだ!こんな所じゃおちおち寝てられねぇや」
そう言うと、財前はベンチの奥へ引っ込んだ。
「逃げるのかアンタ!アンタだけ練習しないなんて、オレは許さないぞ!」
宇田川は大声を上げて追いかけようとする。
「待てっ、宇田川!」
中田が宇田川を羽交い締めにする。
「離せぇ!オレは間違ってないぞ~っ!」
その様子を聞きつけ、練習していた選手達が何事かと集まった。
「何だ何だ?」
「何騒いでんだ?」
「何かあったんすか?」
宇田川はまだ暴れている。
「離せ~っ!おい、アンタ!アンタ一体、何様気取りだ!」
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