59 / 84
公式戦スタート
プロとは
しおりを挟む
立ち上がりは良かった。
しかし、一巡するとレボリューションズ打線に捕まった。
しかも、決め球のフォークを。
結局、3回をもたずに降板した。
味方打線は財前の5号ツーランで2点を返すが、多勢に無勢で財前一人では勝てない。
終わってみると、9対2で初黒星を喫した。
「オイオイ、オメーらオレの足を引っ張んなって言ったろ!
オレがいくら打ったって、オマエらが打たなきゃ勝てねえんだよ!
聞いてるのか、おいっ!」
試合後のロッカールームは昨日に引き続き財前が吠える。
「…」
さすがに今日は誰も言い返さない。
チャンスの場面で何度も凡退を繰り返し、打線が機能しない。
もし財前がいなかったら、スカイウォーカーズは完封負けを喫していただろう。
「大体、エースが何であんなに点を取られるんだよ!エースだったら、打たれても立ち直るのがフツーだろ!
それなのに、クセを見抜かれただけでバカスカ打たれやがって」
「クセ?」
結城が聞き直す。
「そうだよ、クセだよ!ウチのエース様は相手にクセを読まれてるんだよ」
財前は見抜いていた。
中邑は投球動作前に一瞬下を向く。
注意深く観察してないと見分けが付かないが、下を向くとフォークだとレボリューションズに読まれた。
「センター守ってるとよ、後ろ姿がよく見えるんだよ。
ウチのエース様はフォーク投げるって時に一瞬下を向くんだ。
ったく、そのぐらいのクセだったら、早いとこ修正しろってんだ!」
「何で、それを試合中に言わなかったんですか!
アナタが試合中にそれを指摘すれば、中邑くんは大量点を取られなくて済んだのに!」
「アホ!エースだったら、自分で気づいて修正しなきゃダメだろが!
何がエースだ、ただのバッピ(打撃投手)じゃねえかよ!」
「アンタ、チームメイトだろうが!
それをいち早く教えるのが当然だろうがっ!
それが分かれば、今日の試合は勝てたんだぞ!」
唐澤が血相を変えて詰め寄る。
だが、財前は涼しい顔をしている。
「おい、クソガキ!
テメーは高校野球でもやってるのか、あぁ?」
「何ぃ!」
「いいか、プロってのは、食うか食われるかの世界なんだっ!
例え同じチームでも、自分以外は敵と思え!
それがプロってもんだ、分かったか!」
「た、確かに…確かにアナタの言うことも一理ある。
だが、チームの勝利が何よりも最優先されるのに、それを怠ったアナタはプロとは言えない!」
結城が珍しく大声を張り上げた。
「クッククク…笑わせるねぇ、キャプテン。
プロなら、自分で何とかするのが当然なんじゃないのかい?
チームの勝負?
いいか、チームの勝利が第一というのは分かる。
しかし、勝つ事プラステメーの成績を上げなきゃ、プロはあっという間に墜ちていくんだよ!
テメーらみたいに、日本のぬるま湯に浸かった野球ごっこしてるんじゃねぇ!
オレはアメリカで一人でメジャーに這い上がってきたんだよ!
ホントに甘ちゃんだな、ったく!」
財前の言うことに誰も文句を言う者はいなかった。
日本は恵まれている環境で野球をやっている。
二軍生活でも、寮に住めば衣食住は確保出来る。
しかし、アメリカではそんなものは無い。
マイナーリーグでは、僅かな金でアメリカ本土を転々と遠征する。
過酷な日々で、精神的にも鍛えられる。
財前はマイナーからスタートしてメジャーに這い上がった。
それに比べたら、他の選手は二軍に落ちても、食うには困らない。
「プロってのは、孤独なんだよ…
誰も助けてくれねぇ。
テメーの力で何とかするしかねぇんだよ!」
バタン!と乱暴にロッカーの扉を閉めると、財前は一足先にロッカールームを出た。
「結城さん…あんなヤツの言う事なんか、真に受ける必要無いですよ」
「いや…あの人の言う通りかもしれない。
ボクたちはまだまだ甘いという事だ。
プロなんだから、自分の事は自分でやらなきゃいけない…
でも、中邑くんのクセが分かったから、次は勝てるハズだ。
さぁ、皆!今日の事は忘れて、次こそは勝とう!」
【ハイ!】
結城というキャプテンがいる限り、スカイウォーカーズの絆はそう簡単には崩れない。
だが、財前はどうだ。
(あの人がチームに溶け込めれば、スカイウォーカーズは更に強くなる)
キャプテンとしての役割が増えたような気がした。
しかし、一巡するとレボリューションズ打線に捕まった。
しかも、決め球のフォークを。
結局、3回をもたずに降板した。
味方打線は財前の5号ツーランで2点を返すが、多勢に無勢で財前一人では勝てない。
終わってみると、9対2で初黒星を喫した。
「オイオイ、オメーらオレの足を引っ張んなって言ったろ!
オレがいくら打ったって、オマエらが打たなきゃ勝てねえんだよ!
聞いてるのか、おいっ!」
試合後のロッカールームは昨日に引き続き財前が吠える。
「…」
さすがに今日は誰も言い返さない。
チャンスの場面で何度も凡退を繰り返し、打線が機能しない。
もし財前がいなかったら、スカイウォーカーズは完封負けを喫していただろう。
「大体、エースが何であんなに点を取られるんだよ!エースだったら、打たれても立ち直るのがフツーだろ!
それなのに、クセを見抜かれただけでバカスカ打たれやがって」
「クセ?」
結城が聞き直す。
「そうだよ、クセだよ!ウチのエース様は相手にクセを読まれてるんだよ」
財前は見抜いていた。
中邑は投球動作前に一瞬下を向く。
注意深く観察してないと見分けが付かないが、下を向くとフォークだとレボリューションズに読まれた。
「センター守ってるとよ、後ろ姿がよく見えるんだよ。
ウチのエース様はフォーク投げるって時に一瞬下を向くんだ。
ったく、そのぐらいのクセだったら、早いとこ修正しろってんだ!」
「何で、それを試合中に言わなかったんですか!
アナタが試合中にそれを指摘すれば、中邑くんは大量点を取られなくて済んだのに!」
「アホ!エースだったら、自分で気づいて修正しなきゃダメだろが!
何がエースだ、ただのバッピ(打撃投手)じゃねえかよ!」
「アンタ、チームメイトだろうが!
それをいち早く教えるのが当然だろうがっ!
それが分かれば、今日の試合は勝てたんだぞ!」
唐澤が血相を変えて詰め寄る。
だが、財前は涼しい顔をしている。
「おい、クソガキ!
テメーは高校野球でもやってるのか、あぁ?」
「何ぃ!」
「いいか、プロってのは、食うか食われるかの世界なんだっ!
例え同じチームでも、自分以外は敵と思え!
それがプロってもんだ、分かったか!」
「た、確かに…確かにアナタの言うことも一理ある。
だが、チームの勝利が何よりも最優先されるのに、それを怠ったアナタはプロとは言えない!」
結城が珍しく大声を張り上げた。
「クッククク…笑わせるねぇ、キャプテン。
プロなら、自分で何とかするのが当然なんじゃないのかい?
チームの勝負?
いいか、チームの勝利が第一というのは分かる。
しかし、勝つ事プラステメーの成績を上げなきゃ、プロはあっという間に墜ちていくんだよ!
テメーらみたいに、日本のぬるま湯に浸かった野球ごっこしてるんじゃねぇ!
オレはアメリカで一人でメジャーに這い上がってきたんだよ!
ホントに甘ちゃんだな、ったく!」
財前の言うことに誰も文句を言う者はいなかった。
日本は恵まれている環境で野球をやっている。
二軍生活でも、寮に住めば衣食住は確保出来る。
しかし、アメリカではそんなものは無い。
マイナーリーグでは、僅かな金でアメリカ本土を転々と遠征する。
過酷な日々で、精神的にも鍛えられる。
財前はマイナーからスタートしてメジャーに這い上がった。
それに比べたら、他の選手は二軍に落ちても、食うには困らない。
「プロってのは、孤独なんだよ…
誰も助けてくれねぇ。
テメーの力で何とかするしかねぇんだよ!」
バタン!と乱暴にロッカーの扉を閉めると、財前は一足先にロッカールームを出た。
「結城さん…あんなヤツの言う事なんか、真に受ける必要無いですよ」
「いや…あの人の言う通りかもしれない。
ボクたちはまだまだ甘いという事だ。
プロなんだから、自分の事は自分でやらなきゃいけない…
でも、中邑くんのクセが分かったから、次は勝てるハズだ。
さぁ、皆!今日の事は忘れて、次こそは勝とう!」
【ハイ!】
結城というキャプテンがいる限り、スカイウォーカーズの絆はそう簡単には崩れない。
だが、財前はどうだ。
(あの人がチームに溶け込めれば、スカイウォーカーズは更に強くなる)
キャプテンとしての役割が増えたような気がした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる