The Baseball 主砲の一振り 続編1

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公式戦スタート

チームの輪を乱す

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開幕二連勝という、スタートダッシュを切ったにもかかわらず、チームの雰囲気は最悪だった。

財前の加入で、チームがまとまらない。



こんな調子でペナントを乗り切れるのだろうか。




チーム内に不協和音が生じてるのを、櫻井は察知していた。



財前という異端児がチームを掻き乱すという事は、想定内だった。


だが、それを乗り越えた時に、このチームは今より強くなると確信している。


二連覇を成し遂げる為には、今のうちに膿を出さなきゃならない。





翌日の開幕三戦目はデーゲームで行われた。


レボリューションズの先発は右の白井。


スカイウォーカーズはエースの中邑が初登板する。


レボリューションズのスタメンは

1センター 結城(司)
2レフト 清水
3サード 佐藤
4ファースト ロドリゲス
5ライト 仙道
6セカンド 香坂
7ライト マイク中村
8キャッチャー 青田
9ピッチャー白井


今日は5番にケガから復帰した仙道がライトを守る。


仙道は今年プロ9年目の28才。

超高校級スラッガーとして4球団が競合の末、レボリューションズがドラフト1位で指名した。


1年目の4月下旬に一軍登録を果たすと、レギュラーとして定着し、打率0.287 ホームラン21 打点79 盗塁18の成績を挙げる。


以降はレボリューションズの主砲として、3割30本をコンスタントに記録する。一昨年、開幕して間もない頃、打球を追ってセンターの松村と交錯。

左膝靭帯断裂の大怪我を負い、復帰は絶望的と言われた。

だが地道にリハビリを重ね、奇跡的に復活。


走攻守三拍子揃った主砲が再起に懸ける。



対するスカイウォーカーズのスタメンは

1ファースト 結城
2ショート 筧
3センター 財前
4セカンド 鬼束
5サード 毒島 
6ライト 唐澤
7レフト 森高
8ピッチャー 中邑
9キャッチャー 七海


今日は正捕手の保坂をベンチスタートにさせ、二番手捕手の七海がマスクを被る。



「しかしまぁ、こうやって見ると、とても連勝したチームの雰囲気じゃないよな」


どんよりとした雰囲気。


選手達の表情は沈んだままだ。


一人だけ陽気にはしゃいでいる選手がいた。


財前だ。


「さぁ~てと、今日もオレがヒーローになろうかなぁ。
スカイウォーカーズを牽引するスーパースター、その名も財前貴博!
なんて、見出しになるかもしれないなぁ、こりゃ」



「元気なのはアイツだけか」


「えぇ…その原因を作ってるというのに、無神経なのか、それともタフな精神なのか」


中田と櫻井が半ば呆れた表情をしている。




マウンド上の中邑は今年から投球スタイルを変えた。


縦のスライダーを封印する代わりに、ツーシームとカットボールを多投するスタイルにチェンジした。


元々器用なタイプで、少し投げただけで完全に自分のものにしてしまう。


縦のスライダーは変化量が大きいが、通打される事も多い。

中邑が打たれた本塁打の約3割は縦のスライダー。


打たれないピッチングをするには、縦のスライダーを封印するしかない。




七海がマウンドで中邑と打ち合わせをしている。


「こんなもんでいいか?」


「そうですね、基本リードは七海さんに任せますよ」


「そうか…もし、オレのリードがおかしいと思ったら、遠慮無く首を振ってくれ」


「了解っす」




サインを確認して守備についた。



1回の表、レボリューションズの攻撃は1番センター結城。



「プレイボール!」


午後1時、主審の手が上がり試合は始まった。





「さぁ、本日も武蔵野スカイウォーカーズ対長州レボリューションズの試合が始まりました。
解説はいつもの様に、武蔵野テレビ専属解説者の玉井尻さん、実況は私、鉾田珍之助がお送りします。
玉井尻さん、よろしくお願いします」


「ん…あぁ、もう試合始まったの?」


「えぇ、今主審がプレイボールと宣言しました」


「オレさぁ、昨夜寝てないんだよ」


「おやおや、徹夜ですか?何をしていたんですか?」


眠たそうな顔をしている。

というより、めんどくせえとでも言いたげな表情だ。


「いや~、昨日はちょっとキャバクラに行ったんだけどな、そこのナンバーワンの杏里って娘がもう、スゲー可愛いのよ!
そんで、延長延長と気がついたら朝になってて…
まぁ、LINE交換したし、今日も試合が終わったら店に行こうかなぁ、なんて思ったりしてな…
ウワハハハハハ!」


とんでもねぇ解説者だ。


「さぁ、今日は珍しく玉井尻さんが上機嫌です。
マウンド上はスカイウォーカーズのエース中邑。
今日が初登板です。
昨年は16勝7敗、防御率は3.06
リーグ優勝、そして日本一にも輝いたワケですが、玉井尻さん。
この中邑はどうご覧になられますか?」


「…zzz~、グォー、グォー…」


「玉井尻さん、玉井尻さん!」


ほこちんは寝ている玉井尻を起こした。


「ンゴっ…んー、何だもうメシか?」


「違いますよっ!これから試合開始です!」


「何だよ…コッチは眠いんだからさ、解説なんて誰がやっても一緒だから、ほこちんやってくれよ」


「ダメですって!起きて下さい!」


すると放送席に榊が乱入した。


「おぉーっと!去年に引き続き、榊監督が試合中にもかかわらず放送席に乱入です!」


「お、おい!テメー、試合はどうしたんだ!」


玉井尻は後ずさりした。


「おい、タマキン!」


「タマキンじゃない、玉井尻だと言ってるだろうが!」


マヌケな呼び名だ。


「テメー、今年もいい加減な解説しやがって!」


榊は玉井尻を抱えると、滞空時間の長い垂直落下式のブレーンバスターをかました。


ドゴッ!


「ムギュ~っ!!」


「おぉーっと、榊監督の垂直落下式ブレーンバスターが炸裂っ!」


玉井尻は頭から床に突き刺さったまま、垂直の状態でKO。


「ギャハハハハハハ!
テメーの様なインチキ解説者はとっとと消えちまえ!」


テレビカメラを見つけると、榊はアップで勝ち名乗りを挙げ、マイクをブン取った。



「アイアムゴッド!」


プロレスLOVEのポーズをとり、大見得を切る。



「えーっと…一旦CMです」


という訳で、CMらしい。
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