27 / 84
チャンピオンズカップ
第一戦
しおりを挟む
翌日の那覇市の天気は雨となったが、開閉式屋根のシーサードームには約4万人と超満員に膨れ上がった。
マシンガンズがリーグ初優勝とあって、熱狂的な沖縄のファンは試合前からテンションが高い。
両チームのスターティングラインナップが発表された。
スカイウォーカーズは
1ライト ラファエル
2センター 唐澤
3ファースト 結城
4セカンド 鬼束
5サード 毒島
6レフト 中山
7指名打者 畑中
8キャッチャー 保坂
9ショート 筧
マシンガンズのスタメンは
1ショート 照屋
2セカンド 下平
3サード 比嘉
4ライト ボーン
5指名打者 吉原
6ファースト 知念
7キャッチャー 新垣
8センター 平良
9レフト 玉城
マシンガンズは1番から4番まではペナントレース時の打順だが、5番以降は調子の良い選手を起用した。
マシンガンズ監督の喜屋武は、昨年まで現役最年長野手としてマシンガンズでプレーし、引退して今年から監督に就任。
万年最下位のチームを改革する為、大幅な戦力補強を行った。
高校の後輩でメジャーリーガーだった比嘉を獲得。
同時にボーン、ルーガーというバリバリのメジャーリーガーの獲得にも成功。
ドラフトでは、大学NO.1左腕との呼び声高い猪木 貴教を引き当てる。
現役メジャーリーガーを3人獲得する事によって、チーム内に蔓延るぬるま湯体質を払拭させた。
今年は優勝とまではいかないが、Aクラスには入れるだろうという計算が嬉しい誤算でリーグを制覇した。
物事を俯瞰的に見る喜屋武は、戦力補強と同時にコンバートも積極的に行う。
比嘉が入るまでのサードは照屋だったが、守備範囲の広さと強肩を買われショートへ。
ファーストを守っていた吉原は俊足を生かした守備に適してるとセンターにコンバートされた。
新陳代謝を図るため、新人の起用も行う。
結果的には投手では猪木が、打者では知念が一軍に定着するまで成長した。
猪木は今シーズン11勝を挙げ、知念は規定打席には届かなかったが、打率299 ホームラン17 打点74 盗塁18と将来を期待できるバッターに成長した。
そのマウンド上には先発の猪木が投球練習を終え、キャッチャーの新垣と入念な打ち合わせをしている。
「おい、また試合中にトイレとか言ってタイムかけるなよ」
「えっ、大丈夫ですよ。トイレにも行ってきたし、水分補給もしましたから」
猪木は試合中にもかかわず、急にタイムをかけてトレイに行ったり、水分補給をして審判に厳重注意されている。
本人は自覚してないが、空気の読めないヤツとして対戦チームから罵声を浴びる事も多々ある。
インサイドワークとして意図的に行っているのか、それとも天然故の行動なのか、それは本人だけが知る事なのだが…
打ち合わせが終わり、新垣が本塁に戻った。
【1回の表、スカイウォーカーズの攻撃は1番ライト ラファエル 背番号9】
ビジター用のピンストライプのユニフォームを着たラファエルが右打席に入る。
時刻は午後1時、主審の手が挙がりプレイボール。
外野席はマシンガンズの応援団が様々な鳴り物を用いて応援している。
沖縄ならではの三線や三板(さんば)エイサー太鼓を鳴らし、他の球場よりも幾分騒がしく感じる。
(うるさい…何なんだ、この鳴り物は?気が散るじゃないか)
ラファエルはこの鳴り物に些かナーバスになっている。
メジャーではこのような鳴り物の応援は無い。
アメリカでも騒がしく応援するケースはあるが、投球の際は静かになるのがマナーだ。
しかし、日本ではお構い無しに鳴り物を鳴らす。
シーサードームの名物でもある鳴り物がラファエルにとっては苦痛だ。
(次の打席はヘッドフォンをしよう)
ラファエルはそう思った。
そんな様子をマスク越しから観察していた新垣は、インコースへボールになるスライダーを要求した。
猪木が頷いて第一球を投げた。
新垣の要求通り、インコース膝元へボールになるスライダーだ。
ラファエルは初球から振ってきたが、芯を外されボテボテのサードゴロ。
比嘉が難なく捌いて一球でアウトをとった。
「damn it!(クソッタレめ!)」
ラファエルは怒りを露にした。
いつもならばじっくりとボールを見る待球スタイルだが、マシンガンズ応援団の鳴り物に集中力を欠いていた。
怒りが収まらないラファエルはベンチに戻ると、ヘルメットを叩きつけた。
「Calm down, Raphael!(落ち着け、ラファエル!)」
トーマス打撃コーチが宥めるが、ラファエルは憤懣やるかたない様子だ。
【2番センター唐澤 背番号1】
そんなラファエルを一瞥して、唐澤がネクストバッターズサークルから左打席に入った。
今シーズン打率2位の0.336 出塁率0.418 安打数206はリーグ最多。
【2番バッター最強説】を体現する若きスラッガー。
すると、猪木が突然
「タイム」
と要求し、ベンチに引っ込んだ。
「またかよ…」
新垣は頭を抱えた。
どうせまたトイレだろう、と呆れた表情をしている。
「あ!そう言えばアイツ、交流戦の時もタイムかけてトレイに行ってたな」
唐澤が思い出したように声を上げた。
あの時はキレて結城に宥められたが、しまいには結城がキレてそれどころじゃなかったハズ…
その猪木は戻ってくる気配が無い。
主審がベンチまで様子を見に来た。
しばらくして猪木がバツ悪そうな顔でマウンドに向かった。
マウンドに立つと、帽子を取って深々と頭を下げた。
「申し訳ありません!明日の天気が気になってスマホのウェザーニュースを見てました!」
一瞬両ベンチがシーンと静まり返る。
「な…」
「天気?」
「それだけの為にタイムかけたのかよ」
スカイウォーカーズのベンチは言葉を失ったかのようにあっけにとられる。
「天気だと?テメー、またふざけた事言ってるのか!」
唐澤がバットを持ってマウンドに駆け上がる。
「ちょ、ちょっ待ってくださいよ!どうしても明日の天気が気になったもんで、つい…」
これは意図的にではなく、ただの天然だという事がわかった。
マシンガンズがリーグ初優勝とあって、熱狂的な沖縄のファンは試合前からテンションが高い。
両チームのスターティングラインナップが発表された。
スカイウォーカーズは
1ライト ラファエル
2センター 唐澤
3ファースト 結城
4セカンド 鬼束
5サード 毒島
6レフト 中山
7指名打者 畑中
8キャッチャー 保坂
9ショート 筧
マシンガンズのスタメンは
1ショート 照屋
2セカンド 下平
3サード 比嘉
4ライト ボーン
5指名打者 吉原
6ファースト 知念
7キャッチャー 新垣
8センター 平良
9レフト 玉城
マシンガンズは1番から4番まではペナントレース時の打順だが、5番以降は調子の良い選手を起用した。
マシンガンズ監督の喜屋武は、昨年まで現役最年長野手としてマシンガンズでプレーし、引退して今年から監督に就任。
万年最下位のチームを改革する為、大幅な戦力補強を行った。
高校の後輩でメジャーリーガーだった比嘉を獲得。
同時にボーン、ルーガーというバリバリのメジャーリーガーの獲得にも成功。
ドラフトでは、大学NO.1左腕との呼び声高い猪木 貴教を引き当てる。
現役メジャーリーガーを3人獲得する事によって、チーム内に蔓延るぬるま湯体質を払拭させた。
今年は優勝とまではいかないが、Aクラスには入れるだろうという計算が嬉しい誤算でリーグを制覇した。
物事を俯瞰的に見る喜屋武は、戦力補強と同時にコンバートも積極的に行う。
比嘉が入るまでのサードは照屋だったが、守備範囲の広さと強肩を買われショートへ。
ファーストを守っていた吉原は俊足を生かした守備に適してるとセンターにコンバートされた。
新陳代謝を図るため、新人の起用も行う。
結果的には投手では猪木が、打者では知念が一軍に定着するまで成長した。
猪木は今シーズン11勝を挙げ、知念は規定打席には届かなかったが、打率299 ホームラン17 打点74 盗塁18と将来を期待できるバッターに成長した。
そのマウンド上には先発の猪木が投球練習を終え、キャッチャーの新垣と入念な打ち合わせをしている。
「おい、また試合中にトイレとか言ってタイムかけるなよ」
「えっ、大丈夫ですよ。トイレにも行ってきたし、水分補給もしましたから」
猪木は試合中にもかかわず、急にタイムをかけてトレイに行ったり、水分補給をして審判に厳重注意されている。
本人は自覚してないが、空気の読めないヤツとして対戦チームから罵声を浴びる事も多々ある。
インサイドワークとして意図的に行っているのか、それとも天然故の行動なのか、それは本人だけが知る事なのだが…
打ち合わせが終わり、新垣が本塁に戻った。
【1回の表、スカイウォーカーズの攻撃は1番ライト ラファエル 背番号9】
ビジター用のピンストライプのユニフォームを着たラファエルが右打席に入る。
時刻は午後1時、主審の手が挙がりプレイボール。
外野席はマシンガンズの応援団が様々な鳴り物を用いて応援している。
沖縄ならではの三線や三板(さんば)エイサー太鼓を鳴らし、他の球場よりも幾分騒がしく感じる。
(うるさい…何なんだ、この鳴り物は?気が散るじゃないか)
ラファエルはこの鳴り物に些かナーバスになっている。
メジャーではこのような鳴り物の応援は無い。
アメリカでも騒がしく応援するケースはあるが、投球の際は静かになるのがマナーだ。
しかし、日本ではお構い無しに鳴り物を鳴らす。
シーサードームの名物でもある鳴り物がラファエルにとっては苦痛だ。
(次の打席はヘッドフォンをしよう)
ラファエルはそう思った。
そんな様子をマスク越しから観察していた新垣は、インコースへボールになるスライダーを要求した。
猪木が頷いて第一球を投げた。
新垣の要求通り、インコース膝元へボールになるスライダーだ。
ラファエルは初球から振ってきたが、芯を外されボテボテのサードゴロ。
比嘉が難なく捌いて一球でアウトをとった。
「damn it!(クソッタレめ!)」
ラファエルは怒りを露にした。
いつもならばじっくりとボールを見る待球スタイルだが、マシンガンズ応援団の鳴り物に集中力を欠いていた。
怒りが収まらないラファエルはベンチに戻ると、ヘルメットを叩きつけた。
「Calm down, Raphael!(落ち着け、ラファエル!)」
トーマス打撃コーチが宥めるが、ラファエルは憤懣やるかたない様子だ。
【2番センター唐澤 背番号1】
そんなラファエルを一瞥して、唐澤がネクストバッターズサークルから左打席に入った。
今シーズン打率2位の0.336 出塁率0.418 安打数206はリーグ最多。
【2番バッター最強説】を体現する若きスラッガー。
すると、猪木が突然
「タイム」
と要求し、ベンチに引っ込んだ。
「またかよ…」
新垣は頭を抱えた。
どうせまたトイレだろう、と呆れた表情をしている。
「あ!そう言えばアイツ、交流戦の時もタイムかけてトレイに行ってたな」
唐澤が思い出したように声を上げた。
あの時はキレて結城に宥められたが、しまいには結城がキレてそれどころじゃなかったハズ…
その猪木は戻ってくる気配が無い。
主審がベンチまで様子を見に来た。
しばらくして猪木がバツ悪そうな顔でマウンドに向かった。
マウンドに立つと、帽子を取って深々と頭を下げた。
「申し訳ありません!明日の天気が気になってスマホのウェザーニュースを見てました!」
一瞬両ベンチがシーンと静まり返る。
「な…」
「天気?」
「それだけの為にタイムかけたのかよ」
スカイウォーカーズのベンチは言葉を失ったかのようにあっけにとられる。
「天気だと?テメー、またふざけた事言ってるのか!」
唐澤がバットを持ってマウンドに駆け上がる。
「ちょ、ちょっ待ってくださいよ!どうしても明日の天気が気になったもんで、つい…」
これは意図的にではなく、ただの天然だという事がわかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる