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大詰め
戦力外
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さて日本球界はというと、残り試合はスカイウォーカーズが5、マーリンズ4、キングダム5
首位から3位までは2ゲーム差という混戦。
この日、スカイウォーカーズは移動日で北陸へ。
明日から北陸レッズとの二連戦を控える。
その後は東北でマーリンズと最後の直接対決を控える。
マーリンズは四国でブラックスと、キングダムは本拠地でレボリューションズとの試合に挑む。
レッズの本拠地、北陸ブルーオーシャンドームでは試合前ベンチで榊が記者達と世間話をしていた。
「カントク、財前を獲るんですか?」
「マーリンズとキングダムは早速コンタクトをとったみたいですよ。
他にも、ヤンキースやドルフィンズ、ブラックスまでもが名乗りを上げたみたいですし」
「財前は元々スカイウォーカーズの選手だし、スカイウォーカーズに入るんじゃないかって話だけど、ホントのところはどうなんですか?」
矢継ぎ早に質問が。
「ほー、そんなに人気があるんだ?ウチも高梨が獲得するなんて言ってるけど、ぶっちゃけオレとしては、必要無いかなって思うだよなぁ」
相変わらず獲得には乗り気じゃない。
「でも、ラファエルは今年限りですよね?そうなるとライトは誰にするんですか?」
「そりゃ、ワタルしかいないじゃん!アイツは来年になれば復活するし、元々ライトのレギュラーはアイツだしな」
「でもカントク。梁屋は足首を骨折してるし、守備や走塁に影響があるんじゃないですか?」
「大丈夫に決まってんじゃん!まだ24才なんだし、若いからどうって事無いだろ」
「若いと言っても、いつまた故障するか分からないですよ?」
その心配は無い!と笑い飛ばす。
「問題ないっつーの!仮に故障したら来栖を使うし」
「でも来栖は、スーパーサブという触れ込みでベンチ入りさせてるんですよね?」
チームのバランスを考えると、無理してでも獲る必要は無いと思った。
「それなー、高梨も同じ事言うんだよ。
来栖を固定したくないって」
「そりゃそうですよ!来栖はどこでも守れるし、守備範囲も広いじゃないすか。
バッティングだって悪くない。
来栖の存在は大きいですよ」
「だから、ツープラトンで起用しようかなぁって思ってるんだけどな」
どいつもこいつも、財前って…
そんなに現役メジャーリーガーが良いのか、と疑問に思った。
「ヒロト、チョットいいか?」
外野にいる櫻井を呼び寄せた。
「ハイ、何でしょう?」
「ここじゃ何だし…」
榊は櫻井を人気の無い場所へ連れた。
ベンチ裏まで行くと、櫻井に質問した。
「なぁ、ヒロト。財前ってそんなに良い選手なのか?」
「そりゃ勿論ですよ!全てを兼ね備えた選手として、注目を浴びてるじゃないですか」
「注目ねぇ…高梨が財前を獲るって言うんだけど、オレは必要無いと思うんだよなぁ。お前はどう思う?」
「ボクも高梨さんの意見に賛成です」
櫻井も財前を獲る事に賛成らしい。
「何だよ、ヒロトも同じ意見かよ…それじゃワタルはどうするんだよ」
榊としては、梁屋をレギュラーで起用するつもりだ。
「監督…情でペナントレースは勝ち抜ける事など出来ませんよ。
確かに梁屋くんは足も速く守備範囲も広い。
だが財前くんと比較すると、格段に劣ります。
正直なところ、梁屋くんは他のチームに移籍した方が良いと思うんです」
櫻井は梁屋を来季の構想から外している。
「何言ってんだよ、ワタルは必要不可欠な存在だろ!それを必要無いって…」
だが櫻井は首を振る。
「左の俊足タイプなら唐澤くんや結城くんがいます。
ハッキリ言いますけど、梁屋くんは走攻守全てに於いて、中途半端なレベルなんです」
中途半端…一軍のレギュラーにしては物足りない。
これは事実上の戦力外通告とも言える。
「おい、ふざけんなよ!ワタルを追い出すつもりかっ!」
頭に血が上り、櫻井の胸ぐらを掴んだ。
だが櫻井は眉一つ動かさない。
「プロはそんな甘いもんじゃないっ!アナタは監督なんだ!
時には非情になる事も必要なんです!」
「…」
榊は何も言えなかった。
我々はプロ…能力に見合わない選手は必要無いという事だ。
梁屋を一軍に上げたのは榊だ。
甲子園優勝投手という経歴を持ちながら、プロでは失格の烙印を押された。
崖っぷちに立った梁屋は野手に転向。
俊足を生かしたトップバッターに生まれ変わり、成功したかに見えたが、櫻井の目には中途半端な選手にしか見えない。
それまで不動の1番打者だったが、櫻井は9番の筧の入れ替えた。
梁屋はフォアボールを選ぶよりもヒットで塁に出る事にこだわる。
1番打者はどんな形でも塁に出てホームに帰る事を要求される。
盗塁よりも出塁率と得点の高さが重要視される。
梁屋はヒットで塁に出て盗塁を決めるという、従来の1番打者だ。
櫻井が求めるリードオフマンとは、相手ピッチャーに一球でも多く投げさせ塁に出る。
リスクの高い盗塁は避け、クリーンナップの一打でホームに生還する事を理想とする。
それに対し、梁屋は早打ちで盗塁は多いが失敗も多い。
櫻井の求める1番打者とは程遠い。
梁屋を巡り、榊と櫻井は対立する。
首位から3位までは2ゲーム差という混戦。
この日、スカイウォーカーズは移動日で北陸へ。
明日から北陸レッズとの二連戦を控える。
その後は東北でマーリンズと最後の直接対決を控える。
マーリンズは四国でブラックスと、キングダムは本拠地でレボリューションズとの試合に挑む。
レッズの本拠地、北陸ブルーオーシャンドームでは試合前ベンチで榊が記者達と世間話をしていた。
「カントク、財前を獲るんですか?」
「マーリンズとキングダムは早速コンタクトをとったみたいですよ。
他にも、ヤンキースやドルフィンズ、ブラックスまでもが名乗りを上げたみたいですし」
「財前は元々スカイウォーカーズの選手だし、スカイウォーカーズに入るんじゃないかって話だけど、ホントのところはどうなんですか?」
矢継ぎ早に質問が。
「ほー、そんなに人気があるんだ?ウチも高梨が獲得するなんて言ってるけど、ぶっちゃけオレとしては、必要無いかなって思うだよなぁ」
相変わらず獲得には乗り気じゃない。
「でも、ラファエルは今年限りですよね?そうなるとライトは誰にするんですか?」
「そりゃ、ワタルしかいないじゃん!アイツは来年になれば復活するし、元々ライトのレギュラーはアイツだしな」
「でもカントク。梁屋は足首を骨折してるし、守備や走塁に影響があるんじゃないですか?」
「大丈夫に決まってんじゃん!まだ24才なんだし、若いからどうって事無いだろ」
「若いと言っても、いつまた故障するか分からないですよ?」
その心配は無い!と笑い飛ばす。
「問題ないっつーの!仮に故障したら来栖を使うし」
「でも来栖は、スーパーサブという触れ込みでベンチ入りさせてるんですよね?」
チームのバランスを考えると、無理してでも獲る必要は無いと思った。
「それなー、高梨も同じ事言うんだよ。
来栖を固定したくないって」
「そりゃそうですよ!来栖はどこでも守れるし、守備範囲も広いじゃないすか。
バッティングだって悪くない。
来栖の存在は大きいですよ」
「だから、ツープラトンで起用しようかなぁって思ってるんだけどな」
どいつもこいつも、財前って…
そんなに現役メジャーリーガーが良いのか、と疑問に思った。
「ヒロト、チョットいいか?」
外野にいる櫻井を呼び寄せた。
「ハイ、何でしょう?」
「ここじゃ何だし…」
榊は櫻井を人気の無い場所へ連れた。
ベンチ裏まで行くと、櫻井に質問した。
「なぁ、ヒロト。財前ってそんなに良い選手なのか?」
「そりゃ勿論ですよ!全てを兼ね備えた選手として、注目を浴びてるじゃないですか」
「注目ねぇ…高梨が財前を獲るって言うんだけど、オレは必要無いと思うんだよなぁ。お前はどう思う?」
「ボクも高梨さんの意見に賛成です」
櫻井も財前を獲る事に賛成らしい。
「何だよ、ヒロトも同じ意見かよ…それじゃワタルはどうするんだよ」
榊としては、梁屋をレギュラーで起用するつもりだ。
「監督…情でペナントレースは勝ち抜ける事など出来ませんよ。
確かに梁屋くんは足も速く守備範囲も広い。
だが財前くんと比較すると、格段に劣ります。
正直なところ、梁屋くんは他のチームに移籍した方が良いと思うんです」
櫻井は梁屋を来季の構想から外している。
「何言ってんだよ、ワタルは必要不可欠な存在だろ!それを必要無いって…」
だが櫻井は首を振る。
「左の俊足タイプなら唐澤くんや結城くんがいます。
ハッキリ言いますけど、梁屋くんは走攻守全てに於いて、中途半端なレベルなんです」
中途半端…一軍のレギュラーにしては物足りない。
これは事実上の戦力外通告とも言える。
「おい、ふざけんなよ!ワタルを追い出すつもりかっ!」
頭に血が上り、櫻井の胸ぐらを掴んだ。
だが櫻井は眉一つ動かさない。
「プロはそんな甘いもんじゃないっ!アナタは監督なんだ!
時には非情になる事も必要なんです!」
「…」
榊は何も言えなかった。
我々はプロ…能力に見合わない選手は必要無いという事だ。
梁屋を一軍に上げたのは榊だ。
甲子園優勝投手という経歴を持ちながら、プロでは失格の烙印を押された。
崖っぷちに立った梁屋は野手に転向。
俊足を生かしたトップバッターに生まれ変わり、成功したかに見えたが、櫻井の目には中途半端な選手にしか見えない。
それまで不動の1番打者だったが、櫻井は9番の筧の入れ替えた。
梁屋はフォアボールを選ぶよりもヒットで塁に出る事にこだわる。
1番打者はどんな形でも塁に出てホームに帰る事を要求される。
盗塁よりも出塁率と得点の高さが重要視される。
梁屋はヒットで塁に出て盗塁を決めるという、従来の1番打者だ。
櫻井が求めるリードオフマンとは、相手ピッチャーに一球でも多く投げさせ塁に出る。
リスクの高い盗塁は避け、クリーンナップの一打でホームに生還する事を理想とする。
それに対し、梁屋は早打ちで盗塁は多いが失敗も多い。
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梁屋を巡り、榊と櫻井は対立する。
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