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チャンピオンへの道
プロレスラーを嫌う理由
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大和が向かった先は、閑静な住宅街から少し離れた河川敷に面する中古の三階建てビルの一室だった。
ドアには、『キャッチレスリング アソシエーション CWA』と書かれている。
インディー団体であるCWAの事務所兼道場だ。
CWAは三年前、エースである御子柴 洋介(みこしばようすけ)を中心に旗揚げした団体。
御子柴は以前、大手団体WWAに所属していた主力選手だったが、理想のプロレスを追い求める為に退団。
若手時代、修行先のイギリスでランカシャースタイル(キャッチレスリング)に傾倒し、帰国後は正統派レスリングを得意とする選手として、数々のタイトルを獲得。
CWAではインディー団体ながら、デスマッチ等のキワモノ路線とは一線を画すキャッチレスリングを全面に打ち出したスタイルで、首都圏内の収容人数2~3千人程のホールを主戦場とし、概ね好評を博してる。
道場というより、フィットネスクラブのような室内では、六名の若手レスラーがリングではスパーを、フローリングの床ではスクワットや器具を用いたトレーニングで汗を流していた。
大和はそんな若手を見て、一笑に付す。
「やぁ、インチキレスラーの諸君!見せかけの強さだけじゃ、いくら練習しても強くはならないぜ!
どうだ、オレと一戦交えてみないか?」
若手のレスラー達は一斉に振り向く。
「誰だ、勝手に入って来やがって!」
スクワットをしていた坊主頭の若手が大和に詰め寄る。
「練習のジャマだから出ていけ!」
もう一人の練習生らしき若手が大和を手で押し、追い出そうとする。
「オイ、何だこの手は?」
大和はその手を掴むと、グイッと引き寄せ、その勢いを利用してエルボーを顔面に叩き込む。
バキッ…
「グァッ…」
若手が倒れ込む。
鼻から出血がドクドクと流れて床に滴り落ちる。
「道場破りか!」
「テメー、ここをどこだと思ってんだ!」
「入口を塞げ!」
一人がドアをロックした。
五体満足では帰さない…そう言いたげな雰囲気だ。
「オイオイ、先に手を出したのはコイツだぜ?オレはあくまで正当防衛でやっただけ。
それとも、プロレスラーとあろう者が、こんなモンであっさりやられるなんて…
あぁ、そうだった。
プロレスラーは所詮、八百長の集まりだしな」
そう言って若手を煽った。
「なんだと!」
「ならば、八百長かどうか、自分の目で確かめてみたらどうだ!」
「言っとくけど、今更逃げるなんて出来ないからな!
最低でも、腕の一本は覚悟しておけよ!」
若手達はヒートアップする。
「ハッハッハッハッ!笑わせんじゃねえよ!
最初から勝ち負けが決まった闘いしか出来ねえクセに、腕の一本だぁ?
やれるもんならやってみな!」
そう言うと、大和はリングに上がって挑発する。
拳にはバンテージを巻いている。
「クソがァ!」
長身の若手がリングに上がり、タックルを仕掛けた。
「バカが、顔がガラ空きなんだよ!」
カウンターで右ストレートを叩き込む。
「グハッ…」
この一撃で長身の若手は前のめりに倒れ込む。
「テメー、素手で顔面殴るのかよ!」
「ハァ?何、甘ぇ事ぬかしてんだ!プロレスはいいよな、顔面パンチも無いし、チョーク攻撃も無い…だから、インチキなショーなんだよな」
最大限におちょくる。
「…ふざけんなっ!」
今度は二人同時に襲いかかった。
「二人がかりでもムダだ」
大和は左側から襲いかかった若手に対し、左のショートフックで迎撃。
ガクッと膝が落ちたその隙に、もう一人の若手の背後に素早く回り込みチョークスリーパーを極めた。
「これだから、プロレスってのは八百長だのショーだのって言われるんだ。
ホンモノの強さの前には、オマエらみたいなニセモノは平伏すだけだ!」
「ガハッ…」
あっという間に二人を倒した。
残るは三人。
「おい、さっきの威勢はどうした?」
「クっ…オレたちはまだ新人だ。
そんな新人相手にこんなマネしてどうするつもりだ!」
「どうもしねぇよ!オレはプロレスラーって人種が大っ嫌いなんだよ!」
時間にしてものの五分足らず。
大和は道場にいた若手レスラー六人全てを倒した。
失神している者、血だらけになっている者、骨折の疑いがある者。
大和が好き放題に暴れ、あっという間にKOしてしまった。
「つまんねぇな、やっぱ。
こんな新人痛めつけても、何の練習にもならねぇ」
大和が狙っていたのは団体のエース御子柴。
「あのヤローのせいで、オレはプロレスラーを断念したんだ」
実は御子柴と大和はWWAで同期入団だった。
ドアには、『キャッチレスリング アソシエーション CWA』と書かれている。
インディー団体であるCWAの事務所兼道場だ。
CWAは三年前、エースである御子柴 洋介(みこしばようすけ)を中心に旗揚げした団体。
御子柴は以前、大手団体WWAに所属していた主力選手だったが、理想のプロレスを追い求める為に退団。
若手時代、修行先のイギリスでランカシャースタイル(キャッチレスリング)に傾倒し、帰国後は正統派レスリングを得意とする選手として、数々のタイトルを獲得。
CWAではインディー団体ながら、デスマッチ等のキワモノ路線とは一線を画すキャッチレスリングを全面に打ち出したスタイルで、首都圏内の収容人数2~3千人程のホールを主戦場とし、概ね好評を博してる。
道場というより、フィットネスクラブのような室内では、六名の若手レスラーがリングではスパーを、フローリングの床ではスクワットや器具を用いたトレーニングで汗を流していた。
大和はそんな若手を見て、一笑に付す。
「やぁ、インチキレスラーの諸君!見せかけの強さだけじゃ、いくら練習しても強くはならないぜ!
どうだ、オレと一戦交えてみないか?」
若手のレスラー達は一斉に振り向く。
「誰だ、勝手に入って来やがって!」
スクワットをしていた坊主頭の若手が大和に詰め寄る。
「練習のジャマだから出ていけ!」
もう一人の練習生らしき若手が大和を手で押し、追い出そうとする。
「オイ、何だこの手は?」
大和はその手を掴むと、グイッと引き寄せ、その勢いを利用してエルボーを顔面に叩き込む。
バキッ…
「グァッ…」
若手が倒れ込む。
鼻から出血がドクドクと流れて床に滴り落ちる。
「道場破りか!」
「テメー、ここをどこだと思ってんだ!」
「入口を塞げ!」
一人がドアをロックした。
五体満足では帰さない…そう言いたげな雰囲気だ。
「オイオイ、先に手を出したのはコイツだぜ?オレはあくまで正当防衛でやっただけ。
それとも、プロレスラーとあろう者が、こんなモンであっさりやられるなんて…
あぁ、そうだった。
プロレスラーは所詮、八百長の集まりだしな」
そう言って若手を煽った。
「なんだと!」
「ならば、八百長かどうか、自分の目で確かめてみたらどうだ!」
「言っとくけど、今更逃げるなんて出来ないからな!
最低でも、腕の一本は覚悟しておけよ!」
若手達はヒートアップする。
「ハッハッハッハッ!笑わせんじゃねえよ!
最初から勝ち負けが決まった闘いしか出来ねえクセに、腕の一本だぁ?
やれるもんならやってみな!」
そう言うと、大和はリングに上がって挑発する。
拳にはバンテージを巻いている。
「クソがァ!」
長身の若手がリングに上がり、タックルを仕掛けた。
「バカが、顔がガラ空きなんだよ!」
カウンターで右ストレートを叩き込む。
「グハッ…」
この一撃で長身の若手は前のめりに倒れ込む。
「テメー、素手で顔面殴るのかよ!」
「ハァ?何、甘ぇ事ぬかしてんだ!プロレスはいいよな、顔面パンチも無いし、チョーク攻撃も無い…だから、インチキなショーなんだよな」
最大限におちょくる。
「…ふざけんなっ!」
今度は二人同時に襲いかかった。
「二人がかりでもムダだ」
大和は左側から襲いかかった若手に対し、左のショートフックで迎撃。
ガクッと膝が落ちたその隙に、もう一人の若手の背後に素早く回り込みチョークスリーパーを極めた。
「これだから、プロレスってのは八百長だのショーだのって言われるんだ。
ホンモノの強さの前には、オマエらみたいなニセモノは平伏すだけだ!」
「ガハッ…」
あっという間に二人を倒した。
残るは三人。
「おい、さっきの威勢はどうした?」
「クっ…オレたちはまだ新人だ。
そんな新人相手にこんなマネしてどうするつもりだ!」
「どうもしねぇよ!オレはプロレスラーって人種が大っ嫌いなんだよ!」
時間にしてものの五分足らず。
大和は道場にいた若手レスラー六人全てを倒した。
失神している者、血だらけになっている者、骨折の疑いがある者。
大和が好き放題に暴れ、あっという間にKOしてしまった。
「つまんねぇな、やっぱ。
こんな新人痛めつけても、何の練習にもならねぇ」
大和が狙っていたのは団体のエース御子柴。
「あのヤローのせいで、オレはプロレスラーを断念したんだ」
実は御子柴と大和はWWAで同期入団だった。
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