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ランクイン
レスリングスタイル
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ボンヤリとスープレックスの全容が見えてきたような気がしたが、練習をすればする程、見え隠れしていく。
「ん~っ、こうでもないし…」
何度もトライしてみるが、一向に見えてこない。
既存のスープレックスは出来るが、オリジナルのスープレックスはサッパリだ。
「こうなりゃ、ぶっつけ本番しかない」
そして試合当日を迎えた。
試合会場は例の荒廃した病院。
廃墟な外観と違い、内装は煌びやかで豪華絢爛な客席と壁面。
ライトは眩く、無数のレーザー光線で入場の演出を彩る。
今道の試合は第5試合だ。
今日は第1試合から賭けに興じる観客が多く、選手のファイトマネーも通常より三割増しになっている。
今道と藤原のオッズだが、今道が12.6倍に対し、藤原は8.3倍。
下馬評では藤原がやや有利の様子。
「ただ今より、第5試合ランキング戦を行います!
青コーナーより、今道陽斗選手の入場です!」
UWPは入場曲の有無は選手の判断に任せる。
今道は入場曲に興味は無く、無音のまま登場した。
「よぉ、アンちゃん頑張れよ!」
「オメーなら、スターになれるぜ!期待してっからよ!」
「今日もぶちかましてランキングに入ってくれよ!」
普段は品行方正な富裕層も、この時だけは素の状態で声援を送る。
デビュー戦と同じく、黒のショートタイツに黒のリングシューズというシンプルなコスチュームでリングイン。
セコンドは今日も東郷が務める。
「続きまして、ランキング10位!藤原航大選手の入場です!」
レスリング出身の選手らしく、吊りパンと呼ばれる赤のシングレットを着用し、レスリングシューズを履いて入場。
こちらも入場曲は無く、プロレスラーというよりもアマチュアレスリングの選手という雰囲気を漂わせている。
華や派手さは皆無だが、実力のみでのし上がってきた選手という印象だ。
両者がリング中央で対峙する。
195cmの今道に対して藤原は182cm。
体格で言えば、ヘビー級とジュニアヘビー級程の差がある。
やや童顔で中性的な顔立ちの今道とは正反対に、坊主頭に朴訥な顔立ちの藤原。
藤原は今道を見ようとはせず、レフェリーの注意を下を向いたまま聞いている。
(何で下を向いてるんだろ?)
今道は不思議に思った。
レフェリーの説明が終わり、コーナーに戻る際、右手を差し出した。
試合前の握手だ。
すると藤原はその手を思いっきり払った。
バシーン!
「試合前の握手など必要無い!
目の前の相手は倒すだけの存在!」
低い声で威嚇する。
「ハァ…」
右手を払いのけられた今道は首を傾げる。
(倒すのは分かってるけど、試合前なんだし、握手ぐらいしてもいいのに)
そんな事を考えながらコーナーに戻った。
「今道クン、分かってるとは思いますが、藤原選手はかなり強いですよ。
今までの相手とはひと味もふた味も違います」
リング下で東郷がアドバイスする。
「強そうなのは分かります。
でも、オレは勝ってファイトマネーを手にするだけですから」
飄々とした表情で答える。
【カァァァァァァン!】
ゴングが鳴った。
共にレスリングのクラウチングスタイルでジリジリと距離を詰める。
藤原はサウスポーで、左半身を前にして構える。
今道は右構えで距離を図る。
そしてリング中央で組み合う。
ロックアップの体勢から藤原が素早くバックを取る。
今道は腰を落として腕を取った。
左手首を掴むと、そのまま肘を極めようとするが、藤原は右上腕部で顔面を覆う。
フェイスロックに捕らえようとするが、今道はこれを上手くディフェンス。
今度は今道が反転してフロントネックロックに捕える。
すると藤原は身体を捻り、逆に今道の右手をハンマーロックに極める。
そうはさせじと、今道は素早い動きでハンマーロックを外すと、藤原のバックに回る。
藤原も素早い動きでバックを取らせず、共にグラウンドでの回転体となる。
レベルの高い攻防を繰り広げ、互いに関節の取り合いをしばらく続ける。
場内からは、ほぉ~、という感嘆の声が上がる。
両者一旦離れて仕切り直す。
素早い展開に観客は拍手を送る。
スタンドの状態に戻ると、藤原はクラウチングスタイルからアップライトの構えにスイッチ。
右のローを牽制気味に放つ。
今道は膝を上げてガードする。
そして右の掌底を繰り出す。
藤原はこれを読んでいたのか、スウェーで躱すと、タックルを仕掛けた。
今道はタックルを切り、覆い被さるようにして藤原の身体に手を回し、反り投げを見舞う。
藤原は投げられながらも今道の左腕をキャッチし、腕ひしぎ十字固めに移行する。
しかし、今道は腕を引いて脱出。
グラウンドの攻防はなおも続く。
「ん~っ、こうでもないし…」
何度もトライしてみるが、一向に見えてこない。
既存のスープレックスは出来るが、オリジナルのスープレックスはサッパリだ。
「こうなりゃ、ぶっつけ本番しかない」
そして試合当日を迎えた。
試合会場は例の荒廃した病院。
廃墟な外観と違い、内装は煌びやかで豪華絢爛な客席と壁面。
ライトは眩く、無数のレーザー光線で入場の演出を彩る。
今道の試合は第5試合だ。
今日は第1試合から賭けに興じる観客が多く、選手のファイトマネーも通常より三割増しになっている。
今道と藤原のオッズだが、今道が12.6倍に対し、藤原は8.3倍。
下馬評では藤原がやや有利の様子。
「ただ今より、第5試合ランキング戦を行います!
青コーナーより、今道陽斗選手の入場です!」
UWPは入場曲の有無は選手の判断に任せる。
今道は入場曲に興味は無く、無音のまま登場した。
「よぉ、アンちゃん頑張れよ!」
「オメーなら、スターになれるぜ!期待してっからよ!」
「今日もぶちかましてランキングに入ってくれよ!」
普段は品行方正な富裕層も、この時だけは素の状態で声援を送る。
デビュー戦と同じく、黒のショートタイツに黒のリングシューズというシンプルなコスチュームでリングイン。
セコンドは今日も東郷が務める。
「続きまして、ランキング10位!藤原航大選手の入場です!」
レスリング出身の選手らしく、吊りパンと呼ばれる赤のシングレットを着用し、レスリングシューズを履いて入場。
こちらも入場曲は無く、プロレスラーというよりもアマチュアレスリングの選手という雰囲気を漂わせている。
華や派手さは皆無だが、実力のみでのし上がってきた選手という印象だ。
両者がリング中央で対峙する。
195cmの今道に対して藤原は182cm。
体格で言えば、ヘビー級とジュニアヘビー級程の差がある。
やや童顔で中性的な顔立ちの今道とは正反対に、坊主頭に朴訥な顔立ちの藤原。
藤原は今道を見ようとはせず、レフェリーの注意を下を向いたまま聞いている。
(何で下を向いてるんだろ?)
今道は不思議に思った。
レフェリーの説明が終わり、コーナーに戻る際、右手を差し出した。
試合前の握手だ。
すると藤原はその手を思いっきり払った。
バシーン!
「試合前の握手など必要無い!
目の前の相手は倒すだけの存在!」
低い声で威嚇する。
「ハァ…」
右手を払いのけられた今道は首を傾げる。
(倒すのは分かってるけど、試合前なんだし、握手ぐらいしてもいいのに)
そんな事を考えながらコーナーに戻った。
「今道クン、分かってるとは思いますが、藤原選手はかなり強いですよ。
今までの相手とはひと味もふた味も違います」
リング下で東郷がアドバイスする。
「強そうなのは分かります。
でも、オレは勝ってファイトマネーを手にするだけですから」
飄々とした表情で答える。
【カァァァァァァン!】
ゴングが鳴った。
共にレスリングのクラウチングスタイルでジリジリと距離を詰める。
藤原はサウスポーで、左半身を前にして構える。
今道は右構えで距離を図る。
そしてリング中央で組み合う。
ロックアップの体勢から藤原が素早くバックを取る。
今道は腰を落として腕を取った。
左手首を掴むと、そのまま肘を極めようとするが、藤原は右上腕部で顔面を覆う。
フェイスロックに捕らえようとするが、今道はこれを上手くディフェンス。
今度は今道が反転してフロントネックロックに捕える。
すると藤原は身体を捻り、逆に今道の右手をハンマーロックに極める。
そうはさせじと、今道は素早い動きでハンマーロックを外すと、藤原のバックに回る。
藤原も素早い動きでバックを取らせず、共にグラウンドでの回転体となる。
レベルの高い攻防を繰り広げ、互いに関節の取り合いをしばらく続ける。
場内からは、ほぉ~、という感嘆の声が上がる。
両者一旦離れて仕切り直す。
素早い展開に観客は拍手を送る。
スタンドの状態に戻ると、藤原はクラウチングスタイルからアップライトの構えにスイッチ。
右のローを牽制気味に放つ。
今道は膝を上げてガードする。
そして右の掌底を繰り出す。
藤原はこれを読んでいたのか、スウェーで躱すと、タックルを仕掛けた。
今道はタックルを切り、覆い被さるようにして藤原の身体に手を回し、反り投げを見舞う。
藤原は投げられながらも今道の左腕をキャッチし、腕ひしぎ十字固めに移行する。
しかし、今道は腕を引いて脱出。
グラウンドの攻防はなおも続く。
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