UWP(Under World Prowrestling)

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デビュー

怒涛のフィニッシュ

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今道の反撃が始まった。

東郷とのスパーで会得した打撃で西を追い詰める。

左のローを膝の内側に叩き込むと、バチーン!という音が響いた。

あまりにも速く鋭い蹴りで西はディフェンスが間に合わず、モロに食らってダウン。


「カウントなんて数えさせねぇぞ!」


膝を抑えて苦悶の表情を浮かべる西を無理矢理立たせ、今度は右のローでふくらはぎに一撃。 


これもバチーン!という音を立て、再びダウン。


総合格闘技やキックで頻繁に見られるカーフキックだ。


「グァァァァ!」

断末魔の様な悲鳴を上げ、西はのたうち回る。


「だから、ダウンカウントなんていらねぇんだよ!」


今度は倒れた西の右足を取り、うつ伏せにしてレッグロックに移行する。


更に背後から覆い被さり、その太い腕で顔面を締め上げる。


STF(ステップオーバートゥーホールドwithフェイスロック)が完璧に極まった。


「西、ギブアップ?」


「ノ、NO!」


西の両足はローキックで破壊された。


この状態からロープブレイクに逃れる事は不可能だ。


万力の様な今道の顔面締めに左足がロックされ、身動き出来ない。


このまま締め上げればギブアップ、もしくはレフェリーストップで勝利となるが、神宮寺から課せられたラリアットでのフィニッシュは失敗に終わってしまう。


何としてでもボーナスをゲットしたい今道はSTFを解いた。



「何で技を解いたんだ?」


「ギブアップするのは時間の問題だったじゃないか?」


「まさか、八百長か?」


客席からそんな声が聞こえる。


「何言ってやがる…コッチはボーナス貰う為にワザと外したんだよ!」


倒れている西に対し、立てとジェスチャーする。


「クソッ…このオレがデビューしたばかりの新人にここまで追い詰められるとは…」


闘ってみてわかった。


今道は並の新人ではない。


パワー、スピード、技のタイミング、どれをとっても表舞台のトップレスラーに引けを取らない程のレベルだ。



(アァ、オレがやりたかったプロレスはこれだったんじゃないか?)


西が長年求めていたプロレスがここにある。


「…だったら、ここでくたばるワケにはいかねぇよな…」


歯を食いしばって立ち上がった。


「こ、こんなモン、いらねぇな」


西はオープンフィンガーグローブを外し、放り投げた。



「オレはプロレスラーとして闘う…」


足を引きずりながらも、前へ出る。


「ヨシ、こっからはプロレスで勝負だ」


「何、ブツブツ言ってんだ?」


今道が距離を詰める。


すると西は両手を広げ、ロックアップの体勢に入った。


「アッ…」


不用意に前へ出た今道の頭部を抱えると、強烈なヘッドロックで締め上げる。


「グァ…」


今度は今道が苦痛に顔を歪める。


足に力が入らないが、今道と遜色の無い太い腕でギリギリと締め上げる。


今道が片膝を着いた。


それでも西はヘッドロックを外さない。


この技でギブアップを奪うつもりだ。



「今道、ギブアップか?」


「す、するわけねぇだろ…」


とは言え、頭が割れる程の激痛で気を失いそうだ。


「ギブアップしろ、このままだと、オマエの頭蓋骨が砕けてしまうぞ!」


「…絶対にギブアップはしない!」


「なら仕方ない…その頭を砕いてやる!」


更に力を込めた。


「グゥオオオオオオオオオオオ!」


またしても今道の驚異的なパワーで立ち上がると、腰に手を回し、物凄い勢いで後ろに叩きつけた。


スダーン!とマットが一瞬バウンドする。


力技で放ったバックドロップを炸裂。


その衝撃でヘッドロックが外れ、西は後頭部を強かに打った。



立ち上がった今道は頭部を抑えている。



「痛ってぇな、コノヤロー!」



普段は天然な今道だが、攻撃を受けると怒りのバロメーターが上昇する。




西の腕を取り、強引に起こすと、片腕ごと胴体に手を回し、先程よりも鋭角に速い投げを打った。


ダダーン!と更に強い衝撃音と共に西はマットに沈む。



神宮寺が現役時代に使用していた、グレコローマン式のバックドロップで追撃する。


「つ、強ぇ…オレとは次元が違いすぎる…」


この時点で西は負けを悟った。


「さぁ、早く立てよ」


今道は立ってこいと促す。


「…世の中は広すぎる…こんなに強いヤツがいるなんてな…」


満身創痍で尚も立ち上がろうとする。



その瞬間、今道の身体が分身したかのように素早くサイドにステップ。


目の前に太い左腕が迫り来る。



バキッ…と喉元に衝撃を受けたと同時に107kgの身体が吹っ飛んだ。


(…コリャ、オレの完敗だ…)


そこで西の意識は絶たれた。



レフェリーは即座にゴングを要請。



【カンカンカンカンカン!】



会場はウォーっという歓声に包まれた。



「や、やった…何とか勝てた…そして、大金ゲットだぜ!」


そう言うと今道も安堵の表情を浮かべながら倒れた。



12分43秒、ノーモーションラリアットからのKOで今道が勝利した。



「今道クン、しっかりしなさい!」


リングに上がった東郷が頬を叩く。



パチーン!



「東郷さん…何とかデビュー戦勝てました」


「おめでとうございます。これであなたも真のプロレスラーです」


「あ、ありがとうございます…」


勝った喜びよりも、ホッとした気持ちの方が強い。



「東郷さん…オレのファイトマネーは?」


「本日のファイトマネーは、508万6千7百23円です。それに、神宮寺さんからの特別ボーナスが支給され、合計808万6千7百23円となります」



「…は、800万…夢じゃないよな?」


桁違いのファイトマネーに頭がクラクラした。



「夢ではありません…とにかく、あなたはプロレスラーとしての第一歩をスタートさせたのです」


「シンドいっす…」


ともあれ、今道はデビュー戦を白星で飾った。


今道のプロレスラー人生は始まったばかりだ。



デビュー戦


対西賢治


12分43秒 KO勝ち


1戦1勝
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