UWP(Under World Prowrestling)

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デビュー

デスマッチ反対派

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「それで、この人は何で団体を辞めさせられたんですか?」


「うーん…まぁ、早い話が考え方の違いというべきか」


「どういう事です?」


「西はデスマッチ反対派だったんだ。
だが、この団体のエースだった梶原優吾(かじわらゆうご)はゴリゴリのデスマッチ派でな。
その結果、西はプロレスを辞めて総合格闘家になったというワケだ」


「そうですか、それならよかった」


「だがな」


神宮寺は更に話を続けた。


西が所属するインディ団体SHARK(シャーク)はデスマッチ路線を売りとする過激なプロレスでコアなファンを獲得していった。


エースの梶原はデスマッチなら何でも来いばかりに、段々過激な凶器をリングに持ち込むようになった。


そこに異を唱えたのが西だった。


こんなモン、プロレスじゃない!
プロレスとは、力と技のぶつかり合いだと主張。


そして西と梶原は対立する。


こんな団体にはついて行けないと西は退団を申し出る。


会社側は西の退団を認めたが、梶原はそれを許さず、最終的にはリングの上で決着をつける事となった。


リング上には画びょう、蛍光灯、有刺鉄線でぐるぐる巻きにされた金属バットが置かれ、それらを使用して闘う危険なデスマッチを敢行。


凶器を使う梶原に対して、西は己の肉体のみで勝負。


試合前の取り決めでは、梶原が勝つというシナリオだった。


試合は互いに大流血の展開になったが、西が突如シュートを仕掛けた。



膝の側面に関節蹴りを叩き込み、梶原の膝及び、靭帯を破壊。

そして用意しておいたオープンフィンガーグローブを着用し、マウントの状態からパウンドを叩き込み、最後はチョークスリーパーを極め、梶原を失神KOで葬った。



この試合を最後に西はプロレスラーを廃業して総合格闘家に転向。


以降は総合格闘技のイベントに参戦し、好成績を挙げる活躍をしている。






「へぇ~、でも良かったじゃないすか。
やりたくない事やるより、好きな事やった方がいいと思うし」



「それで生活出来ればいいんだがな」


「エッ、どういう事です?」


ブック破りはプロレス界のタブーを犯したも同然。


西は仕方なく総合格闘家に転向したが、本心はまだプロレスをやりたがっていたらしい。


「おそらく、西は表舞台のプロレスからは復帰は出来ないだろう。
だから、総合格闘家に転向せざるを得なかった」


「そうなんですか」


UWPのスタッフが調査をした結果、表舞台のプロレスとのしがらみは一切無いと判断し、オファーを出した。



「でも、デビュー戦が総合格闘家って…プロレスの試合だから、プロレスが出来るかどうか」


今道は不安を口にする。


「バカヤロー、オメーにプロレス的なものは求めてねぇよ」


「エッ?」


「何も、プロレス技を出すだけがプロレスラーってワケじゃねぇ。
プロレスラーってのは、さっきも言った通り、タフな肉体と精神、そして覚悟が必要だってな」


「ハァ」


どう闘えばいいのやら。


「一つ良いことを教えてやる」


「なんですか?」


「デビュー戦に勝てば、ファイトマネーが貰えるのは解るよな?」


「それはまぁ…」


全く気にしてなかったが、デビュー戦のファイトマネーはいくら貰えるのだろうか。


「負けたら一円も貰えないのがUWPだが、オメーが勝ったらこれだけは貰える予定だぜ」


そう言うと、神宮寺は五本の指を出した。


「5万円すか?」


デビュー戦だからそんなモンだろうと思った。


「何言ってやがる。オメーがデビュー戦する舞台は地下プロレスだぜ?
しかも、賭けの対象になってるんだ。
少なくとも、その百倍は手に入るだろうな」


「百倍っ?となると…ご、500万?マジっすか!?」


信じられない額だ。


「ウソですよね?」


「ウソなもんか!勝てばの話だがな」


500万あれば、家族が今住んでるアパートを引き払ってもう少し良い場所に引っ越せる。



「ホントに貰えるんですか?」

念を押す。


「しつけぇな、それはオレは保証しよう」


「わかりました!こうなりゃ、何が何でも勝ちます!いや、勝つしかない!」


俄然、闘志が湧く。


「それとな…」


神宮寺が付け加えた。


「はい?」


「一つぐらい、プロレス技を覚えておいてもいいだろう」


技を伝授するらしい。


「どんな技ですか?」

 

「この技でKO出来たら、特別ボーナスとして、プラス300万出してやろう」


合計で800万…考えただけで目が眩む金額だ。


「や、やります!絶対その技でKOします!
で、その技は何ですか?」


「その技ってのは、これだ」


「エッ…」


その瞬間、神宮寺の太い右腕が眼前に迫る。


「ガッ…」


対応出来ず、喉元に食らい、そこで意識は途絶えた。



「オメーが最初に覚える技、それはラリアットだ」


神宮寺は身体に叩き込む事で技を伝授した。

後は今道がラリアットを練習してモノにするだけ。
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