UWP(Under World Prowrestling)

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デビュー

レスラー兼格闘家

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「デビュー戦の相手は誰ですか?」

今道は身を乗り出す。


「焦んじゃねぇよ。オメーの対戦相手は、西 賢治(にしけんじ)。
現在24歳のプロレスラー兼格闘家だ」


「西って人…」


「何だ、知ってるのか?」


「いや、プロレスラーと格闘家って、同時に出来るんすか?」


あまりの天然ぶりに拍子抜けする。


「ったく、オメーは…プロレスラーが格闘家になっちゃいけねぇなんてルールは無ぇよ!」


「あっ、そうなんすか?」


「オメーと話してると、身体中の力が抜けてくるわ!」


東郷はよくこんな天然をここまで鍛え上げたもんだ…と変な感心をした。


「今のプロレスラーはな、プロレスだけじゃ食っていけないのが現状だ」


「どうしてです?」


プロレスラーとなれば、少なくとも衣食住には困らないものだと思っていた。



「それはな…プロレス団体の乱立に、そこら辺のアンちゃんがプロレスラーだなんて名乗る程の低レベルだからだ」


現在国内のプロレス団体は把握出来ないが、メジャー、インディ合わせると40~50の団体が存在する。


中には、バイトをしながらプロレスをする者もいる。


「へぇ~、そんなにプロレスラーが多いんですか」


プロレスって、そんな誰でもなれるようなもんなのか、と思った。


「だがな、ホンモノのプロレスラーと呼べるヤツは数える程度しか居ない。
しかも、170にも満たないヤツや、体重が50kg以下のヤツさえもプロレスラーだなんて名乗りやがる。
これじゃ、プロレスの質が落ちたと言われても反論は出来ないわな」


かつての最強レスラーが寂しそうな表情を浮かべる。


「大したお金も貰えないのに、プロレスやってるって…プロレスラーって、変な人の集まりなんですね?」


「ガハハハハハ!そうかもしんねぇな!
確かにオメーの言う通り、プロレスラーってのは、頭のネジが緩んでるヤツが多いけどな」


神宮寺がここまで笑うのは珍しい。


普段は仏頂面でピリピリしているせいで、周囲は常に緊張感に包まれている。


そんな神宮寺が今道と話をしていると、悩み事なんてどうでもよくなり、心の底から笑えるようになる。



「で、その対戦相手の西って人は格闘家でもあるんすか?」


「ちょっと待ってな」


そう言うと、神宮寺は西の写真と共にプロフィールが記載されている資料を渡した。


写真には、オープンフィンガーグローブを着けているスキンヘッドの西がファイティングポーズをとっている。


側頭部には炎をイメージしたタトゥーが彫られている。


一重まぶたに少し潰れた鼻筋。

とても端正な顔とは言い難いが、中々迫力のある強面な顔つき。

両腕から肩、胸には梵字のようなタトゥーがビッシリ。


「この人、ヤクザですか?」


「今は一般人でさえも彫り物をしているのが多い。
ボーズ、オメーは間違っても彫り物なんかやるんじゃねぇぞ」


鍛え上げた肉体にわざわざ落書きを彫るなんて、バカげてる。


神宮寺はタトゥー否定派だ。


「やらないですよ!だって、痛そうじゃないですか」


タトゥーなんて、と考えた事は一度も無い。


「そうか。で、この西ってヤツなんだが、以前はインディ団体に所属していたプロレスラーなんだがな」


という事は、元プロレスラーなのか。



「インディって、東郷さんが言ってたセミプロのレスラー団体の事ですか?」


東郷はインディ団体のレスラーを、


「彼らはプロレスというより、ショーという意識でリングに上がるレスラーもどきです」

と切り捨てた。


「東郷さんがそんな事を言ってたのか。
まぁ、確かにプロレスラーと呼ぶには些か疑問が残るがな」


「西って選手はプロレスを辞めちゃったんですか?」


「辞めたというか…辞めさせられたというべきか」


解雇処分されたようだ。


「そこはデスマッチ主体のインディ団体で、画びょうや蛍光灯、バットに有刺鉄線をグルグル巻いて凶器攻撃にするのが特徴らしい。」


「そ、そんな事やったら死んじゃますよ!」



プロレスに疎い今道には、デスマッチ路線は殺し合いの様にも思える。



「そういうプロレスもあるってこった」


「ホントにプロレスなんすか、それ?」


「さぁな。プロレスラーにとって、一番の凶器は鍛え上げた肉体だ。
それなのに、この連中のやるプロレスは、こんなモン使って互いに血を流し合う事に快感を得るイカれたヤツらだ」


「ホントにイカれてますね。
っ…まさか、今度の試合でもそんな物騒な凶器を使うつもりじゃ…」


「UWPで凶器の持ち込みは禁止だ。
そんな事したら、その場で制裁を加える」


ルールを破った者には容赦しない。

それがUWPの掟だ。





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