UWP(Under World Prowrestling)

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デビュー

ストロングスタイル

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その日から神宮寺とのスパーリングが開始した。

東郷とのスパーリングも地獄だが、神宮寺のスパーリングは東郷とは違った地獄を見せつけられた。


スパーの初日、今道は神宮寺からプロレス技の洗礼を受ける。



「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」


「痛ぇか、ボーズ!」


「ギ、ギブギブギブギブ…」


「この技は、ボストンクラブ。別名逆エビ固めだ!
相手の背骨と腰にダメージを与える。
ヘタすりゃ、身体が真っ二つになるぞ!」


「や、止めてぇぇ~っ!!」


更には、


「これはフィギュアフォーレッグロック。日本では足4の字固めと言う。
このままだと足が折れてしまうぞ!」


「痛ぇ~っ!!!ギブギブギブ!」


「オラ、返してみろっ!」


「無理ですぅ~~~っ!!」



こんな調子で、キャメルクラッチ、STF、インディアンデスロック、サソリ固めといった、プロレス流の関節技を一通り受けた。





スパーリングの前に神宮寺は、


「いいか、ボーズ。オメーは攻撃せず、ひたすらオレの技を受けろ」

と無慈悲な事を言われる。


「エェっ!技を受ける…イヤイヤ、無理ですって!」


「バカヤローっ!!プロレスラーってのは、相手の技を受けるのも仕事だ!」


「し、仕事?」


(バッカじゃねぇの!何の為に相手の技を受けるんだよ?
プロレスラーってのは、頭の悪い連中ばっかだな!)


今道はこの時、プロレスラーという人種を侮蔑していた。


(試合する前から勝ち負けが決まっていたり、相手の技を受けるなんて…早い話が、八百長じゃねぇか!)


とてもじゃないが、自分には到底理解出来ないと思った。


(オレは家族を助けるためにプロレスラーになったけど、オレはオレのやり方で勝つだけだ!)


イメージしていたのは、総合格闘技のように、相手の攻撃を受けずに勝つというスタイルだ。


そして無敗のままチャンピオンになって、家族を楽にさせたい。


そんな思いだけでハードな練習にも音を上げずに耐え抜いた。



それなのに…



技を受けろとは、どういう事だ。





「どうだ、ボーズ!プロレスの技は痛えだろう?」


神宮寺はニヤリと笑う。


この男、人をいたぶるのが趣味のドS人間なのか…

今道はそう思った。



「…し、死ぬ…こ、こんな技受けたら、負けるに決まってるでしょうが!」


大の字になった今道は語気を荒げる。


「ボーズ、オメーに一つ教えてやる」


神宮寺は今道の上にドカッと腰掛けた。


「ウゴッ…」


「プロレスラーにとって、一番の敵は何だと思う?」


「…?」


そんなモン、対戦相手に決まってる。

誰だってそう思うだろ、と。


「そ、そんなの…対戦相手に決まってるでしょ」


すると、神宮寺はガハハハハハと高笑いをした。


「な、何がおかしいんですか?一番の敵は、目の前の相手でしょうが!」



「分かってねぇなぁ、オメーは」


呆れた顔をしながら神宮寺は答える。


「いいか!プロレスラーにとって、最大の敵は観客だ!」


「観客…?」



今道の頭が混乱する。



「レスラーってのはな、試合開始から終了まで、観客を魅了して熱狂させるのが仕事なんだ。
それには、相手の攻撃を受けて、受けて、受けまくって、最後は客を納得させる必殺技で勝利するのが、一流の証だ」



「…何故?」


プロレスというものを全く観なかった今道にとって、プロレスラーは異世界の生物に思えた。



「プロレスラーは、タフネスがウリだ!
その為には、ハードな練習とハンパねぇメシを食って頑丈な身体を作り上げる。
長時間闘っても、バテない無尽蔵のスタミナが必要なんだ」



「ハ、ハァ」


「オメーも、東郷さんのとこでハードな練習をしてきたろ?
それは、相手の攻撃を食らってもビクともしない鋼の身体を作る為だ!」


「あ…」


言われてみれば、多少の事ではダメージを受けない程の耐久力を身につけたような気がした。


この身体はその為に作ったのか、と。



「ボーズ、オメーはこのオレが認めた唯一のプロレスラーだ!
今こそ、カイザー大和が提案するストロングスタイルを復活させるんだ、いいな?」


「ストロングスタイル?…」


よく分からないが、とにかく神宮寺からは期待されてる事は理解出来た。


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