Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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クライマックス

攻略法その1

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ここ東京ボールパークでは、東京キングダムVS武蔵野スカイウォーカーズの一戦がスタートする。


今日の先発は、スカイウォーカーズが昨日の雨により、スライド登板となった真咲。

対するキングダムは10勝7敗のアンダースロー、井上。


スカイウォーカーズのスタメンは

1ライト ラファエル
2センター 唐澤
3ファースト 結城
4セカンド 鬼束
5サード 毒島
6レフト 来栖
7キャッチャー 保坂
8ピッチャー 真咲
9ショート 筧


レフトを守る中山は今日もベンチスタート。

ケガをしたという情報は入ってないが、二日続けてのベンチスタートは何かあるのだろうか。


キングダムのスタメンは

1セカンド 湯原
2ショート 倉澤
3ライト ロドリゲス
4ファースト 翔田
5サード 坂上
6レフト スナイダー
7センター 篠田
8キャッチャー  丸藤
9ピッチャー 井上


ケガから復帰の翔田は今日も4番ファーストで出場。


骨折した右腕はまだ完治してないが、バッティングと一塁の守備には影響は無いと言う。


「アイツ、ムリしてんじゃねぇのか?」


三塁側ベンチでは、榊が守備につく翔田の動きを観察している。


「左バッターは右腕で引っ張るから、バッティングの時に骨折箇所が響くハズ…
それでも強行出場したという事は、彼抜きではキングダムの優勝は有り得ない…
そんな感じですかね」


櫻井は笑みを浮かべる。


「オレが浅野だったら、ここで無理はさせないけどなぁ」


「フツーならばそうしますよね…でも浅野監督は彼をスタメンで使う。
ホントは使いたくないんでしょうけど、翔田くんが直訴したと思いますよ」


「そうは言っても、いくら優勝争いしてるからって、スタメンで使わないだろう。
翔田はまだ先があるんだし、ここで潰れる可能性だってあるワケじゃん」

どういうワケか、翔田の肩を持つ。


「じゃあ、潰しちゃいましょう…
ここで息の根を止める為には、潰すのが一番ですよ」


事も無げに言い放つ。


「ヒロト…お前、随分物騒な事言うよな」


「何言ってるんですか、監督。
これは戦いなんですよ…
相手を完膚無きまで叩きのめす。
勝負の鉄則じゃないですか」


勝負師としては、榊より櫻井の方が上手だ。


「翔田翼…確かに二刀流として、投打共に優秀な成績を挙げる。
しかし、敵である事には違いない。
敵ならば…潰すのみ」


ボソッと呟き、冷酷な微笑をする。




マウンドでは、キングダムの先発井上が投球練習を終えてプレイボールを待つ。


【1回の表、スカイウォーカーズの攻撃は…1番ライト ラファエル 背番号9】


場内アナウンスのコールでラファエルが左打席に入った。

コンコン、とバットでベースを叩く。

黒人特有のしなやかでバネのある身体。

長いリーチで外角の球も難なく打ち返す。


マウンドでは背番号21を付けた井上が立ちはだかる。


「プレイボール!」

午後6時、主審の手が上がり試合はスタートした。


井上がノーワインドアップからグーンと下へ潜る様に、地面スレスレの所からボールを投げた。


下から上へホップする様な軌道は、アウトコース高目に構えたミットへ。


「ストライク!」


東京ボールパークのオーロラビジョンには、127kmストレートと表示された。


この球場は球速だけではなく、球種も表示される。


観戦するファンに分かりやすいようにと、趣向を凝らした。




ラファエルはいつもの様に初球を見送る。



127kmとは言え、下から浮き上がるような軌道はタイミングが取りずらい。


ラファエルは、メジャーでもアンダースローと対戦した記憶が無い。


(下から浮き上がる…少々手こずるかも)


今まで見た事無い、ボールの軌道にやや困惑気味だ。



(とにかく待球戦法でジックリと球筋を見よう)


バッターボックスの後ろに立ち、様子を見る事にした。


井上が二球目を投げた。


地面スレスレのボールがインハイまで浮き上がる。


ラファエルは思わず仰け反る。


「ストライク!」


「It's a strike?(ストライクだと?)」


ラファエルが思わず審判に詰め寄る。


ボールの出所が低いせいか、インハイが高く感じる。


「Strike!」


主審は毅然とした態度でストライクを宣告する。


「おい、ラファエル!もう止めろ、ストップ!」


唐澤がネクストバッターズサークルから飛び出し、ラファエルをなだめる。



「Raphael, calm down!(ラファエル、落ち着くんだ!)」


結城までベンチから飛び出し、ラファエルを制する。


「しつこいと退場にするぞ!」


「Raphael, this course is a strike!(ラファエル、今のコースはストライクだ!)」


結城がジェスチャーしながら説明する。


ラファエルも徐々に落ち着きを取り戻し、

「I'm sorry I was upset.(取り乱して悪かった)」

と非を詫びた。


「Don't be misled by the ball's orbit!(ボールの軌道に惑わされるな!)」


「okay、thx(分かった、ありがとう)」


結城はアドバイスすると、ベンチに下がった。


「行こう、唐澤くん。ラファエルはもう大丈夫だ」


「あ、ハイ」


(スゲーな、結城さん…英語も話せるし、カッコイイな)

尊敬の眼差しを向けた。


「プレイ!」


主審はプレイを再開した。


(チサトはボールの軌道に惑わされるなと言った…もう一球様子を見てみよう)


リラックスした構えをする。


(結城の一言で落ち着きを取り戻したな…でも、この打席で打つ事は不可能だ)


井上が三球目を投げた。


フワッと浮き上がり、ベース手前で斜めに変化した。


「ボール!」


井上のスライダーがインコース低めに外れた。


ラファエルは微動だにしない。


(…そうか、思い出した!)


ラファエルは何かを思い出す。

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