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デッドヒート
マーリンズのエース
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1回の裏、スカイウォーカーズの攻撃はリードオフマンのラファエル。
マウンド上はマーリンズのエース中澤。
ここまで12勝5敗 防御率は2.97 奪三振は113
3度の完封勝利はリーグ最多。
安定感抜群の左腕は天海という存在の影に隠れがちだが、MAX153kmのフォーシームにツーシーム、2種類のスライダーと現役No.1と言わしめる、鋭く落ちるフォークボールで三振を奪う。
奪三振率は10.37と両リーグ通じてトップ。
今年30才を迎え、脂の乗った投球術が冴え渡る。
【1番ライトラファエル 背番号9】
スイッチヒッターのラファエルが右打席に入る。
ここまで規定打席不足ながら、打率306 ホームラン13 打点43 盗塁は28
出塁率372 長打率524 OPS0.896とかなり優秀で、現役メジャーリーガーとしての片鱗を見せつける。
マウンドには背番号34を付けたエースが立ちはだかる。
「プレイ!」
バットを寝かせ、トップの位置をやや高めにして構える。
シンプルでしなやかなスイングから放たれる打球は、ラインドライブのかかった低い弾道でフィールドに着弾する。
キャッチャーの川上がサインを出す。
このバッテリーは過去に2度、最優秀バッテリー賞を受賞している。
中澤も川上のリードに全幅の信頼を寄せる。
中澤が頷き、第一球を投げた。
インサイドに食い込む、角度のあるフォーシーム。
ラファエルは表情を変えず見送る。
「ストライク!」
145kmと表示されたが、初速と終速の差がそれ程離れていない。
言わば、ノビのある速球だ。
(いい球だ)
ラファエルはボールの軌道を見ている。
中澤がサインを覗き込む。
ノーワインドアップからの二球目を投げた。
今度は初球よりも速い球が外角へ。
(遠い…)
ラファエルは悠然と見送る。
「ボール!」
148kmのツーシームが僅かに外れた。
(目が良いな、この助っ人は)
並のバッターならば、このツーシームを引っ掛けてゴロに打ち取るが、ラファエルは選球眼も一流だ。
決してボール球には手を出さない。
ラファエルは打率よりも出塁率を重視する。
塁に出る事が自分の役割…それを忠実に守る。
出塁して自慢の脚で一つでも多くのベースを踏む。
テーブルセッターとして、出塁率は何よりも大切な数値でもある。
速いテンポから三球目を投げた。
指先から放たれたボールは、生きているかの様に方向を変えてミットに吸い込まれる。
「ストライクツー!」
曲がりはさほど大きくないが、手元で鋭く変化するスライダーがインコースに食い込む。
(まるでカットボールみたいなスライダーだ)
それだけ中澤のスライダーにはキレがあるという事だろう。
ラファエルはまだバットを振ってない。
(これでどうだ?)
川上のサインに頷き、四球目を投げた。
今度はインハイへフォーシーム。
しかもコースに入ってる。
ラファエルは腕を畳んで素早くバットを振り抜く。
だが球威に押されたのか、打球は一塁側ベンチ上のスタンドに飛び込む。
「ファール!」
スピードガンは147kmをマーク。
(イメージしていた軌道よりも上を通った。思ったよりホップしている)
想像以上に速く感じるのだろう。
続いて五球目を投げた。
真ん中やや外寄りにボールが。
(よし、もらった!)
流れるようなスイングでバットを合わせた。
「It fell!(落ちたっ!)」
ベース手前でボールは鋭角的に落ちた。
ラファエルはボールの上っ面を叩き、打球はボテボテのピッチャーゴロ。
中澤が一塁に送球してアウト。
得意のフォークボールでラファエルを打ち取った。
落差の大きい、鋭く変化するフォークは魔球と称される程で、被打率は138とほとんど打たれない。
先ずはワンナウト。
【2番センター唐澤 背番号1】
「今日の中澤さんは絶好調だな…」
ネクストバッターズサークルで、滑り止めの松ヤニスプレーをグリップに一吹きして打席に向かう。
二度、三度と素振りをして左打席に入った。
昨年の首位打者並びに最高出塁率、最多安打の三冠を獲得。
今シーズンは打率2位の332 ホームラン19 打点57 盗塁16
出塁率はトップの411 長打率534 OPS0.945と天才の名を欲しいままにする、若きスラッガー。
不動の構えで自然体、しかも脱力した状態だ。
その佇まいは凛として美しい。
【かっ飛ばせぇ、トーマ!】
【トーマくん、コッチに打って~っ!】
少年や女性に大人気で、最近はファンサービスにも気さくに応じる。
結城が常日頃から「ファンサービスも我々の仕事なんだ」という教えを守り、それまで素っ気ない態度で接していたが、憧れの選手にアドバイスされたのを機に、表情が柔らかくなった。
「ったく…この先から、バケモンみたいなバッターが続々出てくるんだから、恐ろしいよな」
もう少し楽なチーム相手に投げたかった…とでも言いたげな表情を浮かべる。
しかし、本心はこんな強打者揃いのチーム相手に投げる事を心底喜ぶ。
マーリンズのエースとして、プライドを賭けている。
マウンド上はマーリンズのエース中澤。
ここまで12勝5敗 防御率は2.97 奪三振は113
3度の完封勝利はリーグ最多。
安定感抜群の左腕は天海という存在の影に隠れがちだが、MAX153kmのフォーシームにツーシーム、2種類のスライダーと現役No.1と言わしめる、鋭く落ちるフォークボールで三振を奪う。
奪三振率は10.37と両リーグ通じてトップ。
今年30才を迎え、脂の乗った投球術が冴え渡る。
【1番ライトラファエル 背番号9】
スイッチヒッターのラファエルが右打席に入る。
ここまで規定打席不足ながら、打率306 ホームラン13 打点43 盗塁は28
出塁率372 長打率524 OPS0.896とかなり優秀で、現役メジャーリーガーとしての片鱗を見せつける。
マウンドには背番号34を付けたエースが立ちはだかる。
「プレイ!」
バットを寝かせ、トップの位置をやや高めにして構える。
シンプルでしなやかなスイングから放たれる打球は、ラインドライブのかかった低い弾道でフィールドに着弾する。
キャッチャーの川上がサインを出す。
このバッテリーは過去に2度、最優秀バッテリー賞を受賞している。
中澤も川上のリードに全幅の信頼を寄せる。
中澤が頷き、第一球を投げた。
インサイドに食い込む、角度のあるフォーシーム。
ラファエルは表情を変えず見送る。
「ストライク!」
145kmと表示されたが、初速と終速の差がそれ程離れていない。
言わば、ノビのある速球だ。
(いい球だ)
ラファエルはボールの軌道を見ている。
中澤がサインを覗き込む。
ノーワインドアップからの二球目を投げた。
今度は初球よりも速い球が外角へ。
(遠い…)
ラファエルは悠然と見送る。
「ボール!」
148kmのツーシームが僅かに外れた。
(目が良いな、この助っ人は)
並のバッターならば、このツーシームを引っ掛けてゴロに打ち取るが、ラファエルは選球眼も一流だ。
決してボール球には手を出さない。
ラファエルは打率よりも出塁率を重視する。
塁に出る事が自分の役割…それを忠実に守る。
出塁して自慢の脚で一つでも多くのベースを踏む。
テーブルセッターとして、出塁率は何よりも大切な数値でもある。
速いテンポから三球目を投げた。
指先から放たれたボールは、生きているかの様に方向を変えてミットに吸い込まれる。
「ストライクツー!」
曲がりはさほど大きくないが、手元で鋭く変化するスライダーがインコースに食い込む。
(まるでカットボールみたいなスライダーだ)
それだけ中澤のスライダーにはキレがあるという事だろう。
ラファエルはまだバットを振ってない。
(これでどうだ?)
川上のサインに頷き、四球目を投げた。
今度はインハイへフォーシーム。
しかもコースに入ってる。
ラファエルは腕を畳んで素早くバットを振り抜く。
だが球威に押されたのか、打球は一塁側ベンチ上のスタンドに飛び込む。
「ファール!」
スピードガンは147kmをマーク。
(イメージしていた軌道よりも上を通った。思ったよりホップしている)
想像以上に速く感じるのだろう。
続いて五球目を投げた。
真ん中やや外寄りにボールが。
(よし、もらった!)
流れるようなスイングでバットを合わせた。
「It fell!(落ちたっ!)」
ベース手前でボールは鋭角的に落ちた。
ラファエルはボールの上っ面を叩き、打球はボテボテのピッチャーゴロ。
中澤が一塁に送球してアウト。
得意のフォークボールでラファエルを打ち取った。
落差の大きい、鋭く変化するフォークは魔球と称される程で、被打率は138とほとんど打たれない。
先ずはワンナウト。
【2番センター唐澤 背番号1】
「今日の中澤さんは絶好調だな…」
ネクストバッターズサークルで、滑り止めの松ヤニスプレーをグリップに一吹きして打席に向かう。
二度、三度と素振りをして左打席に入った。
昨年の首位打者並びに最高出塁率、最多安打の三冠を獲得。
今シーズンは打率2位の332 ホームラン19 打点57 盗塁16
出塁率はトップの411 長打率534 OPS0.945と天才の名を欲しいままにする、若きスラッガー。
不動の構えで自然体、しかも脱力した状態だ。
その佇まいは凛として美しい。
【かっ飛ばせぇ、トーマ!】
【トーマくん、コッチに打って~っ!】
少年や女性に大人気で、最近はファンサービスにも気さくに応じる。
結城が常日頃から「ファンサービスも我々の仕事なんだ」という教えを守り、それまで素っ気ない態度で接していたが、憧れの選手にアドバイスされたのを機に、表情が柔らかくなった。
「ったく…この先から、バケモンみたいなバッターが続々出てくるんだから、恐ろしいよな」
もう少し楽なチーム相手に投げたかった…とでも言いたげな表情を浮かべる。
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