110 / 125
デッドヒート
マーリンズのエース
しおりを挟む
1回の裏、スカイウォーカーズの攻撃はリードオフマンのラファエル。
マウンド上はマーリンズのエース中澤。
ここまで12勝5敗 防御率は2.97 奪三振は113
3度の完封勝利はリーグ最多。
安定感抜群の左腕は天海という存在の影に隠れがちだが、MAX153kmのフォーシームにツーシーム、2種類のスライダーと現役No.1と言わしめる、鋭く落ちるフォークボールで三振を奪う。
奪三振率は10.37と両リーグ通じてトップ。
今年30才を迎え、脂の乗った投球術が冴え渡る。
【1番ライトラファエル 背番号9】
スイッチヒッターのラファエルが右打席に入る。
ここまで規定打席不足ながら、打率306 ホームラン13 打点43 盗塁は28
出塁率372 長打率524 OPS0.896とかなり優秀で、現役メジャーリーガーとしての片鱗を見せつける。
マウンドには背番号34を付けたエースが立ちはだかる。
「プレイ!」
バットを寝かせ、トップの位置をやや高めにして構える。
シンプルでしなやかなスイングから放たれる打球は、ラインドライブのかかった低い弾道でフィールドに着弾する。
キャッチャーの川上がサインを出す。
このバッテリーは過去に2度、最優秀バッテリー賞を受賞している。
中澤も川上のリードに全幅の信頼を寄せる。
中澤が頷き、第一球を投げた。
インサイドに食い込む、角度のあるフォーシーム。
ラファエルは表情を変えず見送る。
「ストライク!」
145kmと表示されたが、初速と終速の差がそれ程離れていない。
言わば、ノビのある速球だ。
(いい球だ)
ラファエルはボールの軌道を見ている。
中澤がサインを覗き込む。
ノーワインドアップからの二球目を投げた。
今度は初球よりも速い球が外角へ。
(遠い…)
ラファエルは悠然と見送る。
「ボール!」
148kmのツーシームが僅かに外れた。
(目が良いな、この助っ人は)
並のバッターならば、このツーシームを引っ掛けてゴロに打ち取るが、ラファエルは選球眼も一流だ。
決してボール球には手を出さない。
ラファエルは打率よりも出塁率を重視する。
塁に出る事が自分の役割…それを忠実に守る。
出塁して自慢の脚で一つでも多くのベースを踏む。
テーブルセッターとして、出塁率は何よりも大切な数値でもある。
速いテンポから三球目を投げた。
指先から放たれたボールは、生きているかの様に方向を変えてミットに吸い込まれる。
「ストライクツー!」
曲がりはさほど大きくないが、手元で鋭く変化するスライダーがインコースに食い込む。
(まるでカットボールみたいなスライダーだ)
それだけ中澤のスライダーにはキレがあるという事だろう。
ラファエルはまだバットを振ってない。
(これでどうだ?)
川上のサインに頷き、四球目を投げた。
今度はインハイへフォーシーム。
しかもコースに入ってる。
ラファエルは腕を畳んで素早くバットを振り抜く。
だが球威に押されたのか、打球は一塁側ベンチ上のスタンドに飛び込む。
「ファール!」
スピードガンは147kmをマーク。
(イメージしていた軌道よりも上を通った。思ったよりホップしている)
想像以上に速く感じるのだろう。
続いて五球目を投げた。
真ん中やや外寄りにボールが。
(よし、もらった!)
流れるようなスイングでバットを合わせた。
「It fell!(落ちたっ!)」
ベース手前でボールは鋭角的に落ちた。
ラファエルはボールの上っ面を叩き、打球はボテボテのピッチャーゴロ。
中澤が一塁に送球してアウト。
得意のフォークボールでラファエルを打ち取った。
落差の大きい、鋭く変化するフォークは魔球と称される程で、被打率は138とほとんど打たれない。
先ずはワンナウト。
【2番センター唐澤 背番号1】
「今日の中澤さんは絶好調だな…」
ネクストバッターズサークルで、滑り止めの松ヤニスプレーをグリップに一吹きして打席に向かう。
二度、三度と素振りをして左打席に入った。
昨年の首位打者並びに最高出塁率、最多安打の三冠を獲得。
今シーズンは打率2位の332 ホームラン19 打点57 盗塁16
出塁率はトップの411 長打率534 OPS0.945と天才の名を欲しいままにする、若きスラッガー。
不動の構えで自然体、しかも脱力した状態だ。
その佇まいは凛として美しい。
【かっ飛ばせぇ、トーマ!】
【トーマくん、コッチに打って~っ!】
少年や女性に大人気で、最近はファンサービスにも気さくに応じる。
結城が常日頃から「ファンサービスも我々の仕事なんだ」という教えを守り、それまで素っ気ない態度で接していたが、憧れの選手にアドバイスされたのを機に、表情が柔らかくなった。
「ったく…この先から、バケモンみたいなバッターが続々出てくるんだから、恐ろしいよな」
もう少し楽なチーム相手に投げたかった…とでも言いたげな表情を浮かべる。
しかし、本心はこんな強打者揃いのチーム相手に投げる事を心底喜ぶ。
マーリンズのエースとして、プライドを賭けている。
マウンド上はマーリンズのエース中澤。
ここまで12勝5敗 防御率は2.97 奪三振は113
3度の完封勝利はリーグ最多。
安定感抜群の左腕は天海という存在の影に隠れがちだが、MAX153kmのフォーシームにツーシーム、2種類のスライダーと現役No.1と言わしめる、鋭く落ちるフォークボールで三振を奪う。
奪三振率は10.37と両リーグ通じてトップ。
今年30才を迎え、脂の乗った投球術が冴え渡る。
【1番ライトラファエル 背番号9】
スイッチヒッターのラファエルが右打席に入る。
ここまで規定打席不足ながら、打率306 ホームラン13 打点43 盗塁は28
出塁率372 長打率524 OPS0.896とかなり優秀で、現役メジャーリーガーとしての片鱗を見せつける。
マウンドには背番号34を付けたエースが立ちはだかる。
「プレイ!」
バットを寝かせ、トップの位置をやや高めにして構える。
シンプルでしなやかなスイングから放たれる打球は、ラインドライブのかかった低い弾道でフィールドに着弾する。
キャッチャーの川上がサインを出す。
このバッテリーは過去に2度、最優秀バッテリー賞を受賞している。
中澤も川上のリードに全幅の信頼を寄せる。
中澤が頷き、第一球を投げた。
インサイドに食い込む、角度のあるフォーシーム。
ラファエルは表情を変えず見送る。
「ストライク!」
145kmと表示されたが、初速と終速の差がそれ程離れていない。
言わば、ノビのある速球だ。
(いい球だ)
ラファエルはボールの軌道を見ている。
中澤がサインを覗き込む。
ノーワインドアップからの二球目を投げた。
今度は初球よりも速い球が外角へ。
(遠い…)
ラファエルは悠然と見送る。
「ボール!」
148kmのツーシームが僅かに外れた。
(目が良いな、この助っ人は)
並のバッターならば、このツーシームを引っ掛けてゴロに打ち取るが、ラファエルは選球眼も一流だ。
決してボール球には手を出さない。
ラファエルは打率よりも出塁率を重視する。
塁に出る事が自分の役割…それを忠実に守る。
出塁して自慢の脚で一つでも多くのベースを踏む。
テーブルセッターとして、出塁率は何よりも大切な数値でもある。
速いテンポから三球目を投げた。
指先から放たれたボールは、生きているかの様に方向を変えてミットに吸い込まれる。
「ストライクツー!」
曲がりはさほど大きくないが、手元で鋭く変化するスライダーがインコースに食い込む。
(まるでカットボールみたいなスライダーだ)
それだけ中澤のスライダーにはキレがあるという事だろう。
ラファエルはまだバットを振ってない。
(これでどうだ?)
川上のサインに頷き、四球目を投げた。
今度はインハイへフォーシーム。
しかもコースに入ってる。
ラファエルは腕を畳んで素早くバットを振り抜く。
だが球威に押されたのか、打球は一塁側ベンチ上のスタンドに飛び込む。
「ファール!」
スピードガンは147kmをマーク。
(イメージしていた軌道よりも上を通った。思ったよりホップしている)
想像以上に速く感じるのだろう。
続いて五球目を投げた。
真ん中やや外寄りにボールが。
(よし、もらった!)
流れるようなスイングでバットを合わせた。
「It fell!(落ちたっ!)」
ベース手前でボールは鋭角的に落ちた。
ラファエルはボールの上っ面を叩き、打球はボテボテのピッチャーゴロ。
中澤が一塁に送球してアウト。
得意のフォークボールでラファエルを打ち取った。
落差の大きい、鋭く変化するフォークは魔球と称される程で、被打率は138とほとんど打たれない。
先ずはワンナウト。
【2番センター唐澤 背番号1】
「今日の中澤さんは絶好調だな…」
ネクストバッターズサークルで、滑り止めの松ヤニスプレーをグリップに一吹きして打席に向かう。
二度、三度と素振りをして左打席に入った。
昨年の首位打者並びに最高出塁率、最多安打の三冠を獲得。
今シーズンは打率2位の332 ホームラン19 打点57 盗塁16
出塁率はトップの411 長打率534 OPS0.945と天才の名を欲しいままにする、若きスラッガー。
不動の構えで自然体、しかも脱力した状態だ。
その佇まいは凛として美しい。
【かっ飛ばせぇ、トーマ!】
【トーマくん、コッチに打って~っ!】
少年や女性に大人気で、最近はファンサービスにも気さくに応じる。
結城が常日頃から「ファンサービスも我々の仕事なんだ」という教えを守り、それまで素っ気ない態度で接していたが、憧れの選手にアドバイスされたのを機に、表情が柔らかくなった。
「ったく…この先から、バケモンみたいなバッターが続々出てくるんだから、恐ろしいよな」
もう少し楽なチーム相手に投げたかった…とでも言いたげな表情を浮かべる。
しかし、本心はこんな強打者揃いのチーム相手に投げる事を心底喜ぶ。
マーリンズのエースとして、プライドを賭けている。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
致死量の愛と泡沫に+
藤香いつき
キャラ文芸
近未来の終末世界。
世間から隔離された森の城館で、ひっそりと暮らす8人の青年たち。
記憶のない“あなた”は彼らに拾われ、共に暮らしていたが——外の世界に攫われたり、囚われたりしながらも、再び城で平穏な日々を取り戻したところ。
泡沫(うたかた)の物語を終えたあとの、日常のお話を中心に。
※致死量シリーズ
【致死量の愛と泡沫に】その後のエピソード。
表紙はJohn William Waterhous【The Siren】より。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる