Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

sky-high

文字の大きさ
上 下
99 / 125
バトル

勝負

しおりを挟む
天海のスマホに着信が。

しかも、登録されていない番号だ。

「はい…」


【久しぶりだな…】


「誰や?」

イタズラだと思った。


【相変わらず威勢がいいな】


「何や、タチの悪いイタズラか」


電話を切ろうとした。


【イタズラしていたのはお前だろう】


フフフフっと笑う。


「何や!お前、誰や!」


【まだ分からないのか】


もしかして…


「あぁ…思い出しわ。思い出した途端、怒りが込み上げてきたわ」


【フッ…その怒りをどうやってぶつける】


「目の前にテメーがおったら、気が済むまでどつき回したるわい」

声の主は辞任した鈴木監督だ。

【ハッハッハッハー】


「何がおかしいんじゃ、コラ!」


【同じ事を考えていたとはなぁ】

と言う事は、鈴木監督も天海を…


「おい、オッサン!アンタ、目の前にオレがおらんから、そんな事が言えるんちゃうか?」


【フフフフ、救いようの無いバカだなお前は】


「何やと、コラ!何なら、これから居場所突き止めてボコボコにしてやろうか、ワレ!」


【おぅ、来るなら来い!場所は千葉だ】


鈴木監督は現在千葉にいる。


「千葉?千葉の何処じゃい!」


【お前も知ってるだろう…ヤンキースの球場だ】


何故、鈴木監督が千葉ヤンキースの本拠地に?


「何や、野球観戦かいな」


【今日はここで試合は無い。お前がここに来る度胸があるなら、私はここで待っていよう】


「あのなぁ、勝負ったって、野球で勝敗決めるんやないで!ケンカやケ ン カ!分かってんのか、ホンマに」


【ガタガタ抜かしてねぇで、サッサと来い!】


途端に声のトーンが変わった。


「ほぅ…ほなら、千葉に行ったるわ!ええか、オッサン!絶対逃げるなよ!」


【お前ごときにビビるとでも思ったのか…】


「やかましぃ!オレが来たからって、泣き入れるなや、ボケ!」


電話を切った。


秋田から千葉へ向かうとなれば、車を運転するよりも新幹線に乗った方が早い。


「クソっ、この為に電車賃使うのか!こうなりゃ、ボコボコにして電車賃請求したろ!」


一秒でも早く着いて、あの顔を殴りたい!

ここ最近、監督の顔がやけにチラつく。


「という事は、いい機会だからボコボコにせい、という知らせだったのか…」


鏡を見て、ニヤッと笑う。


「よし…シバキに行ってくるか」


家を出て、玄関で待機してたタクシーに乗り込んだ。







思ったより早く、千葉に着いた。


ヤンキースの本拠地、バーチーヤンキースタジアムは茨城県との境でもある、利根川の畔という長閑な地域だ。


交通の便はあまり良くない。


12球団で一番アクセスの悪い場所だ。


天海は駅から再びタクシーに乗って、球場に着いた。


球場は静かで人の気配が無い。


「ホンマに来てるんか」


ウソを言ってるのでは、と思った。


すると、球場入り口に球団関係者らしき人物が現れた。


スーツを着ているが、何やらただ者では無い雰囲気を身に纏っている。


その人物が近づいてきた。


「天海選手、お待ちしておりました」


見るからに、強面で体格のガッシリした中年の男が中へ案内した。


男の後を付いていくと、ベンチに繋がる廊下を通る。


「何や、グラウンドに出て勝負しろ言うんか」


男は無言だ。


すると男はベンチ手前にある、いつもは開かない扉を解錠した。


「何処へ連れてくつもりや…」


ゴゴゴッ、と扉が開くと、地下へ降りる階段が。


「何やこれ?こんなもん、初めて見たで」


やや赤錆びた手すりに手をかけ、狭い階段を降りる。


下は薄暗く、何があるのかよく見えない。


「おい、この下に何があるんや?」


「鈴木様がお待ちです」


地下に降り立った。


湿気が多いのか、ジメジメして少し蒸し暑い。


しかし、暗くて何も見えない。


「おい、こんな暗い場所であの監督がいるんか?お前、まさかオレをハメようとしてるんか、コラ!」


男はライターで火をつけた。

その火をロウソクに灯す。

火の明かりでロウソクが無数にあるのが見えた。


「ここは何なんだ…」


男は全てのロウソクに火を灯した。


「うぉっ!何や、あれは」


天海が目にしたのは、壁にそびえ立つ仁王像。

しかも、かなり広い空間だ。


床は石畳で、所々凸凹になってる。


「おい、ここは一体何をする場所なんや」


すると、奥から声が聞こえる。


「地下闘技場…揉め事があった際、優劣つける為に設けられたヤンキース伝統の修練場だ」



仁王像の足元には鈴木監督の姿が。


いつものユニフォーム姿ではなく、黒のタンクトップに迷彩柄のバギーパンツ、編上げのブーツを履いている。


「なんの事だか、オレにはよう分からん…けどな、ここでケリ着ける言うなら、相手したるわ」


羽織っていたジャケットを脱ぎ捨て、臨戦態勢をとる。


「相変わらず血の気が多いな」


「あったりまえじゃ!お前をぶちのめす為に、わざわざ秋田から来たんや!帰りの交通費はお前が出せ、コラ!」


すると、鈴木監督は足元にあるボストンバッグの中から、黒い二つの物体を放り投げた。

床に弾むと、バフっという軽い音がした。


天海は転がった黒い物体を手に取る。

「何や、これ?グローブかいな」


「知らんのか、オープンフィンガーグローブを」


総合格闘技で使用する、相手を掴む事が出来るグローブで、中には薄く綿が入っている。


「これをはめてやり合うんか?」


「そうだ。本来ならば素手といきたいところだが、商売道具でもあるし、そこまで乱暴な事はせん」


「ほぅ、素手でやるのが怖いんか?オレは素手でも構わんで。確かに手は商売道具やけど、アンタぶちのめすのに、そこまで手を使う必要無いやろ」


この時をどれだけ待ち侘びたか。

一秒でも早くぶっ飛ばす!

その事で頭がいっぱいだ。


「いつまでも意気がってんじゃねぇぞ、このクソガキがっ!!」

あまりの迫力に、さすがの天海もたじろいだ。


「素手でやるだと?テメー、大事な商売道具を下手に扱うんじゃねぇ!」


「へっ…何や、ケンカじゃ勝てないからって、威嚇してビビらそうとしてるんか?
生憎やが、オレ相手にそんなもんは通用せえへんで」


「このクソガキ…こうなりゃ、その腕へし折るまで」


いつもの鈴木監督とは違い、獰猛で獲物を狙うかのような鋭い目付きで天海を捕える。


「上等や、コラ!どっからでも掛かって来いや!!」


バトルが始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...