Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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天海の逆襲

強気のリード

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喜屋武は2番唐澤をレフトフライに、3番結城をサード正面のライナーで三者凡退に打ち取り、1回の表を終了した。


1回の裏、マシンガンズの攻撃はトップバッターの照屋が左打席に入る。

テーブル・セッターとして、塁に出て3番比嘉、4番ボーンがランナーを返すという攻撃パターンでマシンガンズは快進撃を続ける。


マウンド上には先発の中邑と、久しぶりにマスクを被る毒島が入念な打ち合わせをする。


「サインはお前が出してくれ。その方がいいだろ」


毒島は久々のキャッチャーでリードに不安がある。

「じゃあ、それでいきましょう」


「頼んだぞ」


そう言うと毒島はマウンドを降りた。



「プレイ!」


中邑がサインを出す。


毒島はミットをポンと叩いて構える。


中邑の初球はストレート。


ゴオォという唸り声が聞こえそうな剛球がミットに吸い込まれた。


「ストライク!」


スピードガンは154kmを計測。


(コレコレ、この感じだ)


ブランクのある毒島はキャッチングの感覚を思い出していた。


中邑の球は走ってる。

今日は調子が良さそうだ。


サインを出し、早いテンポから二球目を投げた。


初球と同じストレートで今度はアウトコース低目へ。


「ボール!」


これは僅かに外れた。


(これが保坂だったらフレーミングでストライクにするんだが…仕方ない、何せブランクがあるんだし)


中邑はキャッチングに違和感を感じるが、配球に影響は無さそうだ。


「たまにはいいもんだな、キャッチャーも」


ここ最近スランプに陥ってる毒島にとって、キャッチャーは気分転換になりそうだ。



中邑のサインにミットを構える。

ノーワインドアップから三球目を投げた。


アウトコースからインコースへ鋭く変化する。


「ボール!」


あまりの変化にコースが外れてしまう程のスライダーだ。

照屋はまだ一度もバットを振ってない。


サインを出し、四球目を投げた。

今度は真ん中低目へ変化するツーシーム。


照屋がバットを出すが、打球は左に切れる。


「ファール!」


カウントはツーナッシング。


(ここは一球外さずに勝負にいった方がいいかも)


毒島は思った。


中邑も同じ考えでサインを出す。


「よし、こいっ!」


毒島が座り直しミットを構えた。


五球目を投げた。

今度は緩いカーブだ。


「うゎっ…」

タイミングを外された照屋は辛うじてバットに当てるが、打球はボテボテのサードゴロ。


来栖が軽快に捌いて一塁へ送球。


「アウト!」


113kmの緩いカーブで先ずは一つアウトを取った。


【2番セカンド下平 背番号4】


続いて下平が右打席に入る。


照屋と同じくテーブル・セッターという役割だが、ミートに関しては下平の方が上だ。

典型的な2番タイプで、バンドやエンドラン、右打ちと器用で選球眼も良い。


スタンダードなフォームでバットをやや短く持つ。


塁に出すと厄介な存在だ。


「タイム」


ここで毒島がタイムを取り、マウンドに駆け寄る。


「どうしたんすか?」


「やっぱ、オレがサインを出してもいいか?」


「えぇ、いいですけど」


どうやらリードを思い出したみたいだ。


「もし、納得しなかったら首を振ってくれ」


「はい、分かりました」


ここから毒島がサインを出すようだ。



本塁に戻り、しゃがんでミットを構える。

先程よりもサマになってきた。

一年近くマスクを被ってないせいか、徐々に感覚を思い出してきた。


その毒島がサインを出す。


(えー、強気だな毒島さんは)


強気のサインに頷き初球を投げた。


インコース低目、ハーフスピードの球だ。


下平は初球からスイングした。


「あっ、…」


下平は思わず声を上げた。


ストーンと落差のあるフォークに空振り。


「ストライク!」


初球から決め球のフォークを投げた。


「OK、いい落ち方だ」


ノッてきたのか、強めに返球する。


「思い出した、この人のリードは強気だったんだよな」


保坂というキャッチャーに慣れてしまったせいか、毒島のリードが強気だという事を忘れていた。


(んじゃ、次はこれだ)


サインを出す。


(はぁ~…とことん強気だねぇ)


二球目を投げた。


今度はアウトコース低目へ。


下平は逆らわず左におっつける様なスイングをした。


「しまっ…」


しかし、これも手前で嘲笑うように大きく沈んだ。


「ストライクツー!」


二球続けてフォーク。


(まさか、次もフォークでは)


下平は三球目もフォークだろうと読んだ。


毒島のサインに頷き三球目を投げた。


「あっ、…」


一変して高目の釣り球。

下平は思わず手が出た。


「ストライクアウト!」


158kmのストレートに中途半端なスイングをして三球三振。


「よし、いいぞ!」

毒島はサードの来栖にボールを回した。


「ツーアウトだ!」

ボールを内野に回し、ファーストの結城が中邑に返球した。


【3番サード比嘉 背番号33】


続いて前回の対戦でホームランを打たれた比嘉が打席に向かう。


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