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天海の逆襲
冴える魔球
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サンピエールは絶好調で、続く2番の松村をショートゴロ、3番福岡をレフトフライに打ち取り三者凡退で1回の表を終了した。
【1番ライトラファエル 背番号9】
1回の裏、スカイウォーカーズの攻撃はスイッチヒッターのラファエル。
相手が左の那須川とあって、右打席に入る。
日本に来てまだ数試合だが、既に6個の盗塁を決め、本塁打は2本。
36打数の6安打全てが長打で、長打力が無いという前評判を覆す嬉しい誤算だ。
「さぁ、今日もスーパープレーを見せてくれるのかな」
獲る必要なんか無い、と酷評していた榊だが、今では高評価だ。
マウンドには前回スカイウォーカーズ打線を沈黙させた那須川。
魔球フロントドア、バックドアを駆使して並み居る強打者を牛耳る。
いつもの様にボールを手に、ブツブツと話し掛ける独自のリラックス法で気持ちを落ち着かせている。
「いきなり要注意人物だけど、どうすれば抑える事が出来るかなあ」
那須川の表情は落ち着いている。
「What is he doing?(何をしてるんだアイツは?)」
ラファエルには異様な光景に見える。
左打席とは違い、バットをやや短く持ち、肩口で後方に傾けるフォームだが、シンプルでどのコースでも対応出来そうなスタンスだ。
「It's a batting form that emphasizes batting average.(アベレージ重視のバッティングフォームだ)」
トーマスはラファエルの右打席を分析した。
スイッチヒッターのほとんどが左右どちらかの打席は率が低い。
しかし、ラファエルは左右どちらも変わらない率を残している。
「プレイ!」
キャッチャーの坂本ではなく、那須川がサインを出した。
正統派のオーバースローから第一球を投げた。
インコース胸元へ迫り来る。
ラファエルは仰け反ったが、ボールは手前で変化した。
「ストライク!」
挨拶代わりに143kmのフロントドアがコースに決まる。
「Was that in the strike zone?(今のは入ってたのか?)」
ラファエルが振り向き審判に聞いた。
「Of course, it's a strike zone.(勿論、入ってる)」
審判は毅然とした態度で答える。
日本とメジャーのストライクゾーンは若干違う。
日本に来る際、ストライクゾーンの違いを教えてもらったのだが、イザ打席に立つとその違いに戸惑う。
(そうか、日本ではインコースの方がストライクゾーンが広いのか)
「OK」
ラファエルはベース寄りから少し位置を離した。
「さてさて、先ずはワンストライク。どうやらあの黒人さんは日本のストライクゾーンにまだ慣れてないみたいだぞ」
那須川は下を向いてボールに話し掛けている。
「よし!」
那須川が二球目を投げた。
ボールの軌道はインコース低目へ向かっている。
ラファエルは見送るとストライクを取られると思い、バットを出した。
しかし、ボールは嘲笑うかのようにスっと手元で沈んだ。
「ストライクツー!」
那須川が投げたのはメジャーで言うところのシンキングファストボールと呼ばれるツーシームで、ストレートの軌道から手元で小さく沈む。
ツーシームの握りを少しズラして投げるとこの様な変化が生じるらしいが、これも人によっては違った変化をするらしい。
「I didn't know there was a pitcher in Japan who threw this kind of two-seam.(日本にもこんなツーシームを投げるピッチャーがいたとは)」
日本でもポピュラーになりつつあるツーシームだが、メジャーの様に変化量の大きいツーシームを投げるピッチャーはあまりいない。
ラファエルは早くもツーストライクと追い込まれた。
「二球でツーストライクを取ったけど、相手は現役のメジャーリーガーだから三球勝負はさすがにヤバいよな」
ボールをジッと見つめながら囁く。
「でも待てよ…裏をかいて三球勝負にいくのもアリかもな」
ハラは決まった。
再び那須川がサインを出す。
「あの野郎、調子に乗るなよ」
マスク越しに坂本が苦虫を噛み潰したような顔をした。
「よし、行くぞ」
綺麗なオーバースローから三球目を投げた。
今度は外角、しかも遠いコースだ。
(日本ではこのコースはボールのハズ…)
ラファエルは見送る。
しかし、ググッとコーナーギリギリにスライドした。
「ストライクアウト!」
「Damn it!(しまった!)」
那須川得意のバックドアで見逃しの三振。
天を仰ぎ、ラファエルは悔しがる。
まさか、バックドアなんて投げてくるとは思いもしなかった。
ラファエルにしては珍しい三球三振で打ち取られ、ワンナウトを喫した。
「よし、先ずはワンナウトだ」
幸先の良いスタートで次の打者唐澤を迎える。
【1番ライトラファエル 背番号9】
1回の裏、スカイウォーカーズの攻撃はスイッチヒッターのラファエル。
相手が左の那須川とあって、右打席に入る。
日本に来てまだ数試合だが、既に6個の盗塁を決め、本塁打は2本。
36打数の6安打全てが長打で、長打力が無いという前評判を覆す嬉しい誤算だ。
「さぁ、今日もスーパープレーを見せてくれるのかな」
獲る必要なんか無い、と酷評していた榊だが、今では高評価だ。
マウンドには前回スカイウォーカーズ打線を沈黙させた那須川。
魔球フロントドア、バックドアを駆使して並み居る強打者を牛耳る。
いつもの様にボールを手に、ブツブツと話し掛ける独自のリラックス法で気持ちを落ち着かせている。
「いきなり要注意人物だけど、どうすれば抑える事が出来るかなあ」
那須川の表情は落ち着いている。
「What is he doing?(何をしてるんだアイツは?)」
ラファエルには異様な光景に見える。
左打席とは違い、バットをやや短く持ち、肩口で後方に傾けるフォームだが、シンプルでどのコースでも対応出来そうなスタンスだ。
「It's a batting form that emphasizes batting average.(アベレージ重視のバッティングフォームだ)」
トーマスはラファエルの右打席を分析した。
スイッチヒッターのほとんどが左右どちらかの打席は率が低い。
しかし、ラファエルは左右どちらも変わらない率を残している。
「プレイ!」
キャッチャーの坂本ではなく、那須川がサインを出した。
正統派のオーバースローから第一球を投げた。
インコース胸元へ迫り来る。
ラファエルは仰け反ったが、ボールは手前で変化した。
「ストライク!」
挨拶代わりに143kmのフロントドアがコースに決まる。
「Was that in the strike zone?(今のは入ってたのか?)」
ラファエルが振り向き審判に聞いた。
「Of course, it's a strike zone.(勿論、入ってる)」
審判は毅然とした態度で答える。
日本とメジャーのストライクゾーンは若干違う。
日本に来る際、ストライクゾーンの違いを教えてもらったのだが、イザ打席に立つとその違いに戸惑う。
(そうか、日本ではインコースの方がストライクゾーンが広いのか)
「OK」
ラファエルはベース寄りから少し位置を離した。
「さてさて、先ずはワンストライク。どうやらあの黒人さんは日本のストライクゾーンにまだ慣れてないみたいだぞ」
那須川は下を向いてボールに話し掛けている。
「よし!」
那須川が二球目を投げた。
ボールの軌道はインコース低目へ向かっている。
ラファエルは見送るとストライクを取られると思い、バットを出した。
しかし、ボールは嘲笑うかのようにスっと手元で沈んだ。
「ストライクツー!」
那須川が投げたのはメジャーで言うところのシンキングファストボールと呼ばれるツーシームで、ストレートの軌道から手元で小さく沈む。
ツーシームの握りを少しズラして投げるとこの様な変化が生じるらしいが、これも人によっては違った変化をするらしい。
「I didn't know there was a pitcher in Japan who threw this kind of two-seam.(日本にもこんなツーシームを投げるピッチャーがいたとは)」
日本でもポピュラーになりつつあるツーシームだが、メジャーの様に変化量の大きいツーシームを投げるピッチャーはあまりいない。
ラファエルは早くもツーストライクと追い込まれた。
「二球でツーストライクを取ったけど、相手は現役のメジャーリーガーだから三球勝負はさすがにヤバいよな」
ボールをジッと見つめながら囁く。
「でも待てよ…裏をかいて三球勝負にいくのもアリかもな」
ハラは決まった。
再び那須川がサインを出す。
「あの野郎、調子に乗るなよ」
マスク越しに坂本が苦虫を噛み潰したような顔をした。
「よし、行くぞ」
綺麗なオーバースローから三球目を投げた。
今度は外角、しかも遠いコースだ。
(日本ではこのコースはボールのハズ…)
ラファエルは見送る。
しかし、ググッとコーナーギリギリにスライドした。
「ストライクアウト!」
「Damn it!(しまった!)」
那須川得意のバックドアで見逃しの三振。
天を仰ぎ、ラファエルは悔しがる。
まさか、バックドアなんて投げてくるとは思いもしなかった。
ラファエルにしては珍しい三球三振で打ち取られ、ワンナウトを喫した。
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