Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

sky-high

文字の大きさ
上 下
55 / 125
弱小だった頃

一切口出ししないのが条件

しおりを挟む
「高梨くん、何とかして榊くんを監督に引っ張ってきてくれんかぬ?
これはオーナーとしての命令でもあるし、スカイウォーカーズを変えるには彼しかいないんだぬーーん!」


「オーナーの考えは分かりました。ただ、いくら榊さんとは言え、そう簡単にチームを変えることは容易ではないですよ。
時間を掛けて徐々に変えていく事なら可能だとは思いますが」


「時間掛かってもいいんだぬ!スカイウォーカーズを立て直すには、榊くんの監督が絶対条件なんだぬ!」


阿佐は子供の頃、父親の阿佐太智雄(あさたちお)がオーナーをしていた静岡ピストルズのエースだった榊のファンでもある。


傍若無人に振る舞うが、野球に対する情熱とファンを大切にしていた榊は憧れの人物だった。

闘志溢れるプレーでピストルズを牽引した大エースを監督として迎えるのが夢でもあった。


「分かりました…榊さんに打診してみますが、良い返事を貰えるかどうか」


「ミーは榊くんの条件は全て飲むから、是非とも監督になってくれと伝えてくれぬ!」


「分かりました。早速交渉してみます」


かくして、高梨は榊にスカイウォーカーズの監督を要請する段取りを進めた。


後日、高梨は榊と都内の料亭で会談した。



「高梨ぃ、オレはどうもこういう雰囲気が苦手なんだよなぁ」


ここは財政界の有名人がお忍びで訪れる高級料亭。


広々とした座敷で高梨と向かい合わせで上座で落ち着かない様子だ。


「私もこういう場は苦手ですが、まさか大事な話を居酒屋の一室でするワケにもいかないでしょう」


「んで、大事な話ってなんだよ?」

杯を貰い、グイッと飲み干す。


高梨は姿勢を正した。


「榊さん…来季のスカイウォーカーズの監督をやっていただけないでしょうか?」


そう言うと、深々と頭を下げた。


「あー…やっぱ、そういう事だったか」


驚いた様子はない。


「ていう事は…薄々感づいてたというワケでしょうか」


「だってお前、この前酔っ払ってた時にオレに監督になってくれって、何度も言ってたんだぜ」


「いや、その…その節は大変ご迷惑をおかけしました」


泥酔したせいか、高梨は記憶に無いらしい。


「監督ったって、オレはお前も知っての通り、これと言った野球理論も無いし、人脈だってほとんど無いんだぜ?そんなヤツが監督になったって、チームは良くならないぜ」


一応、身の程は弁えているらしい。


「榊さんに野球理論とか、そういうのは求めてません。求めるのは、スカイウォーカーズを変えて欲しい事です」


「変えるねぇ…どうやってあのチームを変えればいいのやら」


さすがの榊でも、そう簡単には変えられないと思っているようだ。


「時間は掛かってもいいんです。とにかくあの負け犬根性を変えて欲しいんです」


榊は無言で杯を傾けた。


「オーナーは、榊さんの出す条件を全て飲むと言っています。そして何より、オーナー自身が榊さんに監督になって欲しいと願っています」


「へぇー、あのバカ息子がね」


「今は立派なオーナーに成長しましたよ。ですから、榊さん…何卒、監督を引き受けてもらえないでしょうか?」

高梨は再度頭を下げた。


「条件はただ一つ。オレのやる事にありがとう一切の口出しは無用。これはオーナーだけじゃなく、お前もオレのやる事には口出しをしない。それでいいと言うなら、監督を引き受けてもいいぜ」


「口出し無用ですか…」


嫌な予感がする。


「おぅ、契約年数とか年俸に関してはそっちの出す条件で構わない。どうだ、これで?」


「ありがとうございます。これでオーナーも喜びますよ」


少しホッとした気分だ。


「チームを変えるってなると、トレードとかFAで補強しなきゃならないだろ?後は助っ人外国人を獲るとか、色々と忙しいな」


「えぇ、まぁそうなんですが…変えるとなると、どのようなお考えがあるんですか?」


「うーん…何せ、今この話を受けたばっかだし、まだ分からんけど、まぁ何とかなるだろ」


(ホントに大丈夫かな…)


そんなワケで、榊は監督就任となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...