Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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弱小だった頃

暗黒時代

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垣原の次は誰を監督にするか。

高梨は悩んだ。


静岡ピストルズ時代のチームメイトに頼んでみようと思ったが、垣原の時と同じような結果になるかもしれないとして、声を掛けるのを躊躇った。


その結果、外部からの人物を招聘する事にした。


その人物とは、東京キングダムで名二塁手として名を馳せた、坂下 康夫(さかしたやすお)


守備の名手でもある坂下の下、守りの野球を掲げようとした。


だが、これも裏目に出た。


東京キングダムで育った坂下はキングダムのスタイルを強いるが、選手は猛反発。


当時スカイウォーカーズの選手で守備に定評があったのは畑中と中山のみで、後はどれも拙守で打つだけの選手というのが多数だった。


監督の坂下が守備に練習を費やすあまり、選手間では反発が起きてしまい、選手との間に溝が深まる。


「守備練習ばかりで、肝心のバッティング練習が疎かになった」


「打てなくなったのは、監督が守備に費やすあまり、バッティング練習が出来なくなったからだ」


「オレは守備をやる為にプロ野球選手になったんじゃない!」


誰が監督をやっても、チームは変わろうとしない。


最初のうちは守備がどれほど重要かという事を説いたが、次第に高まってくる反発に堪らず匙を投げた。



「こんな事言って申し訳無いが、ここの選手はあまりにも守備というものを蔑ろにし過ぎだ。
こんな調子じゃ、私が監督でいる意味が無い」


そう言って坂下も一年限りで辞任した。



「一体どうすればいいのやら…」


高梨は途方に暮れる。


「引き受けるんじゃなかった」


高梨はゼネラルマネージャーという立場に嫌気がさした。


そんな時、高梨に一本の電話が。


「オーっス、高梨!たまには飲みに行かないか?」


当時評論家をしていた榊からだ。


この頃の榊は、朝のニュース番組でスポーツコーナーのコメンテーターとして活躍。


【榊のオレが斬る!】というコーナーでは、選手が不甲斐ないプレーをすると容赦なくダメ出しをして、歯に衣着せぬ発言が好評を博していた。


「オイオイ、何だ今のプレーは?ありゃ、金払って見に来てる客に対して失礼だろ!」


「榊さん、相変わらず厳しいですね」


「厳しいんじゃなくて、プロなんだからもっと魅せるプレーをしないと!あんなのはアマチュアのやる事だぞ」


「榊さんが監督だったら、ああいうプレーをした選手に何て言うんですか?」


「オレ?いや、何も言わない。言わない代わりにパワーボムかますね!」


過激な発言をするが、視聴率はかなり高い。





「お久しぶりです、榊さん。どうしたんですか、急に?」


「えっ?いや、どうしてるかなぁと思って電話してみたんだよ。どうだ、元気でやってるか?」


「元気は無いですよ…何せ、こんな体たらくですから」


心身ともに疲れている。


「何だ、どうした?こんな時はパーっと派手にどんちゃん騒ぎすればいいんだよ!」


いつもだったらこんな誘いを断るのだが、高梨は榊の誘いを受けた。


その夜、高梨は珍しく酒に酔った。


「榊さーん!オレはねぇ、スカイウォーカーズの為にアレコレとやってきたの!それなのに…#@@#☆←×*#」


「何言ってるか、全然分からねえよ!お前飲みすぎだぞ!」


酒豪と呼ばれた高梨だが、この時ばかりは泥酔した。


「もう、GMなんて仕事辞めようかなぁ~…」


「おーおー、辞めちゃえ辞めちゃえ!スカイウォーカーズなんて、身売りしちまえばいいんだよ」


「何言ってんですかっ!スカイウォーカーズはオレたちの古巣なんですよっ!それを身売りだなんて、#☆#@@*#☆↑+/」


「だから、何言ってるのかサッパリ分からねえっつーの!」


あの榊がタジタジになる程に痛飲した。


「でもなぁ…スカイウォーカーズを強くしたいんだよなぁ」


そう言うと、テーブルに突っ伏して寝てしまった。


余程ストレスが溜まっていたのだろう。


榊はブツブツと文句を言いながら、高梨を背負って店を出た。


「ったくよォ!何で、コイツの介抱しなきゃなんないんだよ」


「榊さ~ん、スカイウォーカーズの監督やってくらさぁ~い!」


「うるせ~っ、この酔っ払いが!」


「榊さん、監督やってくださいよぉ…そして、チームを優勝…ワハハハハハ!」


「あー、分かった分かった!無職になったら監督やってやるから、大人しくしろっての!」


高梨としては、榊に監督をやってもらいたいのだが、榊はテレビ局との専属契約が後一年残っている。


「榊しゃん、監督やってくだしゃい~…」


うわ言のように何度も繰り返していた。
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