Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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新戦力

漆黒の弾丸

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真咲はスイスイとヤンキースのバッターを嘲笑うかの様なピッチングで、2番若菜、3番李を簡単に打ち取り、1回の裏は三者凡退で終了した。


しかも僅か六球という、省エネピッチング。


「スゲーな、光寿!お前、いつの間に140kmなんて出せるようになったんだよ!」


興奮気味に榊が聞いた。


「まぁ、企業秘密というヤツで…」


真咲ははぐらかす。


「下半身の強化だよね?見た目には分からないけど、足腰はかなり強靭になって、おまけに柔軟性も増している。自主トレの期間に相当鍛えたんだよね」


櫻井が一目で見抜いた。


「さぁ…どうでしょうかね?何せ自分、練習嫌いですから」


飄々とした表情でベンチの中央に腰を下ろした。


(ソッコーで見破るとは、さすが伝説のスラッガー)


どうやら図星のようだ。




2回の表は三者凡退で終了し、その裏ヤンキースの攻撃も三者凡退で終了。


3回の表、打順は9番のラファエルから。


【9番 ライトフィルダー!ナンバー9、ラファエル・バティストゥータ!】


新外国人ラファエル・バティストゥータがゆっくりと左打席に入った。


長い手足にしなやかな身体付き。

全身是バネという、黒人特有の身体能力の高さがうかがえる。


「ヒロト、コイツホントに使えそうなのかよ?」


獲得したにも関わらず、榊は未だ半信半疑だ。


「スイッチヒッターですけど、特筆すべき点は左打席で276に対し、右打席では283
出塁率だと、左打席で367なんですが右打席だと406
これはスゴいですよ。左投げのスイッチヒッターなのに、右打席の成績はかなり優秀です」


櫻井のメモ帳にはラファエルのデータが記載されている。


「それはメジャーでの成績だろ?日本でも同じような成績を残せるとは限らないだろ」


「多分日本では、メジャーみたいな成績を挙げる事は出来ないでしょう」


アッサリと認めてしまった。


「じ、じゃあ獲ったの失敗なんじゃないか?」


「まぁまぁ、この打席を見てみましょうよ」



ラファエルはややバットを寝かせ、トップの位置で構え、左脇を大きく開けている。


「オイオイ、あんなに脇を大きく開けたらスイング出来ないだろ」


「いえ、あれでいいんです」


櫻井は事も無げに言い切る。


「いや、ダメだろ!フツー、バッティングフォームってのは脇を閉めてガッ!て打つもんだろ」


「メジャーではほとんどのバッターは後ろの脇を開けてます。スイングの際、脇を閉めて回転するから反動で鋭いスイングが出来るんです」


その初球はインコースへツーシーム。


「ボール!」


これは見送った。


「見ましたか、今の。全く頭がブレてない…日本のバッターは初動の際、動きすぎるせいか頭が前後に動いてしまう。それだとボールを捕らえるのが難しいんですが、彼は頭が全く動いてない。これだとボールをよく見る事が出来るから、出塁率も高くなるんです」


「ほー、そんなもんなんだ」


二球目はアウトコースへツーシーム。


ラファエルはバットを出した。


「ファール!」


打球は三塁側スタンドに入った。


「それと、今のバッティングフォームですが、肩が動いてない。全く動かないというワケでは無いですが、ほとんど動かないというのはかなり理想的です。
おまけにトップの位置からコンパクトにスイングしている。
ムダな動きが無く、シンプルなフォームで素晴らしいです」


櫻井は珍しく力説する。


「でもよぉ、コッチと向こうはストライクゾーンが違うだろ?それはどう対応するんだ?慣れた頃には契約が終わって、アメリカに帰ったら意味無いじゃん」


「23才にして、メジャーでシーズンを通してプレーしたんです。
それなりの対応力が備わってますし、問題ありません」


技術的には問題無い。


後はラファエルが日本の野球にどう対応出来るかだ。


工藤が三球目を投げた。


インコースへのスライダー。


ラファエルはトップで構えたバットをそのまま反動もつけず、身体の中心を軸にして素早く回転した。

頭も肩も動かさず、シンプルかつコンパクトなスイングでボールを捕らえた。


「打った!」


打球はライトへグーンと伸びた。


ラファエルは全速力で駆け回る。


「速っ!」


一気にトップスピードで一塁を蹴って二塁へ。


打球はライトライン際のフェンスに当たって跳ね返った。


ラファエルは打球の行方を見ずに二塁を蹴って三塁へ。


走り出して僅か三歩目からトップスピードを出せる脚力。


ライトから矢のような返球がサードへ。


「アウトになるぞ!」


ラファエルはダイナミックなヘッドスライディング。


188cmの長身が飛んだ。


サード若菜がタッチする。

ズサーっ!と砂煙が巻き上がった。


「セーフ!」


間一髪でセーフ。


初打席は三塁打という華々しいデビューを飾った。


「はぁ…スゲーな、あのバッティングフォームといい、走塁といい」



「はい…これで梁屋くんの穴は埋まりますよ」


ノーアウト三塁という、追加点のチャンス。


ラファエル・バティストゥータの能力はそんなもんじゃない。
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