Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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何がなんでも優勝

アクシデント

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「おい、大丈夫かワタル!」


唐澤が駆け寄る。


「グッ…」


「梁屋くん!」


「おい、担架だ!」


結城と鬼束がライトのファールゾーンまで駆け寄る。


「うぅ…ぐっ」


梁屋は脚を押さえてうずくまっている。



5回裏ドルフィンズの攻撃、バッターは3番サード陣内がライト線への打球を放った。


ライトの梁屋が打球を追い、フェンス際でジャンプしてキャッチ。


しかし、着地の際にバランスを崩し左足首を捻ってしまう。


騒然とする場内。


選手やコーチ達が梁屋の下に駆け寄る。


「歩けるか?」


「ぐぉ…ぅぅ」


激痛で顔が歪んでいる。


「マズイな…この様子じゃ折れてるかも」


「ワタル、返事出来るか?」


「はぃ…ぐっ…」


顔には脂汗が滲んでいる。



「うわ~、こりゃダメそうだな」


榊は審判に選手交代を告げた。


「ライト来栖ね」



「おい、来栖!出番だ、急げ!」


しかし、来栖はベンチに座ったままだ。


「何やってんだよ、早く守備につけ!」


「自分が守備につく理由を教えてください!」


「お前なぁ、この状況見て分からねえのかよ!」


たまらず、東雲が胸ぐらを掴んだ。


「何故、オレが守備につくのか明確な理由を教えてください!」



「そんな事言ってる場合じゃねぇだろ!テメー、ふざけてんのかっ!」



「だったら、他の選手に替えてください!自分はキチンとした理由を聞かない限り、守備にはつかないです!」


「ふざけんなっ!」


「おい、よせ!東雲!」


「止めろ、止めろ!」





「よし、分かった!」


榊が間に割って入った。


「来栖、お前は守備につかなくていい」


「えっ、でも監督!もう選手交代したじゃないですか」


「あっ、そうだっけ?」


大チョンボだ。


「来栖くん、それじゃボクがキミに聞くけど、もしキミが監督だったらああいう場合、誰を守備で使う?」


櫻井が来栖に聞いた。


「それは、自分しかいないと思います」


「それは何故?」


「何故って…自分は内野も外野も一通り守れるし、ライトは自分みたいな強肩の方がいいと思うし、相手ピッチャーは右だから、自分は左打ちで有利だと思います」


「うん、その通り。じゃあ、キミしかいないよね?」


「はい…」


「頑張って」


肩をポンと叩いた。


来栖はグラブを手にベンチを出た。


「何だ、アイツ…あれで納得したのかよ?」


「コッチが逆に聞いてみるんですよ。ああいう場合、誰が一番適してるかって」


「…何なんだ、アイツは」


ホントにそう思う。




ライトの守備位置ではまだ梁屋が倒れている。



「あ、今担架がきた!」


救急隊員が担架を持って素早く駆け寄った。


「ちょっと痛いかもしれないけどガマンしてくださいね」


二人がかりで梁屋を持ち上げると担架に乗せた。


「ウグヮッ…」


スパイクを脱がせると、足首が右と比べて倍以上腫れ上がっていた。


「これは折れてるかも」


「マジか…」


「て事は…ヘタすると今シーズン絶望かも」


「いや、そんな事よりも今は早く治療をしないと」


「ワタル!試合は必ず勝つから心配するなよ!」


「皆…申し訳ない…ぐっ…」


「いいから気にするな!それよりお前は治療に専念するんだ!」


ナインに見送られ、梁屋は担架で運ばれた。


この様子だと今シーズン復帰は不可能なのかもしれない。


梁屋と入れ替わりで来栖が来た。


「おお、来たか!」


「頼んだぜ、スーパーサブ!」


「来栖くん、期待してるよ」


「ワタルの分まで頑張ろう!」


ナインは来栖に声を掛けて守備についた。



185cm、87kgという均整のとれた体型。

何より注目するべき箇所はふくらはぎが異様に発達している。


かなり強靭な脚力の証拠だ。


【4番キャッチャー矢幡】


試合が再開した。


いまだ両チーム無得点のまま、打順は主砲の矢幡。


去年は打率こそ3割を切ったが、ホームランは35本、打点は114と優秀な成績。


今年は既にホームラン20本を打って4番としての役割りを果たしている。



そして梁屋に代わりライトを守る来栖はスーパーサブの役割を果たすのか。


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