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何がなんでも優勝
アクシデント
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「おい、大丈夫かワタル!」
唐澤が駆け寄る。
「グッ…」
「梁屋くん!」
「おい、担架だ!」
結城と鬼束がライトのファールゾーンまで駆け寄る。
「うぅ…ぐっ」
梁屋は脚を押さえてうずくまっている。
5回裏ドルフィンズの攻撃、バッターは3番サード陣内がライト線への打球を放った。
ライトの梁屋が打球を追い、フェンス際でジャンプしてキャッチ。
しかし、着地の際にバランスを崩し左足首を捻ってしまう。
騒然とする場内。
選手やコーチ達が梁屋の下に駆け寄る。
「歩けるか?」
「ぐぉ…ぅぅ」
激痛で顔が歪んでいる。
「マズイな…この様子じゃ折れてるかも」
「ワタル、返事出来るか?」
「はぃ…ぐっ…」
顔には脂汗が滲んでいる。
「うわ~、こりゃダメそうだな」
榊は審判に選手交代を告げた。
「ライト来栖ね」
「おい、来栖!出番だ、急げ!」
しかし、来栖はベンチに座ったままだ。
「何やってんだよ、早く守備につけ!」
「自分が守備につく理由を教えてください!」
「お前なぁ、この状況見て分からねえのかよ!」
たまらず、東雲が胸ぐらを掴んだ。
「何故、オレが守備につくのか明確な理由を教えてください!」
「そんな事言ってる場合じゃねぇだろ!テメー、ふざけてんのかっ!」
「だったら、他の選手に替えてください!自分はキチンとした理由を聞かない限り、守備にはつかないです!」
「ふざけんなっ!」
「おい、よせ!東雲!」
「止めろ、止めろ!」
「よし、分かった!」
榊が間に割って入った。
「来栖、お前は守備につかなくていい」
「えっ、でも監督!もう選手交代したじゃないですか」
「あっ、そうだっけ?」
大チョンボだ。
「来栖くん、それじゃボクがキミに聞くけど、もしキミが監督だったらああいう場合、誰を守備で使う?」
櫻井が来栖に聞いた。
「それは、自分しかいないと思います」
「それは何故?」
「何故って…自分は内野も外野も一通り守れるし、ライトは自分みたいな強肩の方がいいと思うし、相手ピッチャーは右だから、自分は左打ちで有利だと思います」
「うん、その通り。じゃあ、キミしかいないよね?」
「はい…」
「頑張って」
肩をポンと叩いた。
来栖はグラブを手にベンチを出た。
「何だ、アイツ…あれで納得したのかよ?」
「コッチが逆に聞いてみるんですよ。ああいう場合、誰が一番適してるかって」
「…何なんだ、アイツは」
ホントにそう思う。
ライトの守備位置ではまだ梁屋が倒れている。
「あ、今担架がきた!」
救急隊員が担架を持って素早く駆け寄った。
「ちょっと痛いかもしれないけどガマンしてくださいね」
二人がかりで梁屋を持ち上げると担架に乗せた。
「ウグヮッ…」
スパイクを脱がせると、足首が右と比べて倍以上腫れ上がっていた。
「これは折れてるかも」
「マジか…」
「て事は…ヘタすると今シーズン絶望かも」
「いや、そんな事よりも今は早く治療をしないと」
「ワタル!試合は必ず勝つから心配するなよ!」
「皆…申し訳ない…ぐっ…」
「いいから気にするな!それよりお前は治療に専念するんだ!」
ナインに見送られ、梁屋は担架で運ばれた。
この様子だと今シーズン復帰は不可能なのかもしれない。
梁屋と入れ替わりで来栖が来た。
「おお、来たか!」
「頼んだぜ、スーパーサブ!」
「来栖くん、期待してるよ」
「ワタルの分まで頑張ろう!」
ナインは来栖に声を掛けて守備についた。
185cm、87kgという均整のとれた体型。
何より注目するべき箇所はふくらはぎが異様に発達している。
かなり強靭な脚力の証拠だ。
【4番キャッチャー矢幡】
試合が再開した。
いまだ両チーム無得点のまま、打順は主砲の矢幡。
去年は打率こそ3割を切ったが、ホームランは35本、打点は114と優秀な成績。
今年は既にホームラン20本を打って4番としての役割りを果たしている。
そして梁屋に代わりライトを守る来栖はスーパーサブの役割を果たすのか。
唐澤が駆け寄る。
「グッ…」
「梁屋くん!」
「おい、担架だ!」
結城と鬼束がライトのファールゾーンまで駆け寄る。
「うぅ…ぐっ」
梁屋は脚を押さえてうずくまっている。
5回裏ドルフィンズの攻撃、バッターは3番サード陣内がライト線への打球を放った。
ライトの梁屋が打球を追い、フェンス際でジャンプしてキャッチ。
しかし、着地の際にバランスを崩し左足首を捻ってしまう。
騒然とする場内。
選手やコーチ達が梁屋の下に駆け寄る。
「歩けるか?」
「ぐぉ…ぅぅ」
激痛で顔が歪んでいる。
「マズイな…この様子じゃ折れてるかも」
「ワタル、返事出来るか?」
「はぃ…ぐっ…」
顔には脂汗が滲んでいる。
「うわ~、こりゃダメそうだな」
榊は審判に選手交代を告げた。
「ライト来栖ね」
「おい、来栖!出番だ、急げ!」
しかし、来栖はベンチに座ったままだ。
「何やってんだよ、早く守備につけ!」
「自分が守備につく理由を教えてください!」
「お前なぁ、この状況見て分からねえのかよ!」
たまらず、東雲が胸ぐらを掴んだ。
「何故、オレが守備につくのか明確な理由を教えてください!」
「そんな事言ってる場合じゃねぇだろ!テメー、ふざけてんのかっ!」
「だったら、他の選手に替えてください!自分はキチンとした理由を聞かない限り、守備にはつかないです!」
「ふざけんなっ!」
「おい、よせ!東雲!」
「止めろ、止めろ!」
「よし、分かった!」
榊が間に割って入った。
「来栖、お前は守備につかなくていい」
「えっ、でも監督!もう選手交代したじゃないですか」
「あっ、そうだっけ?」
大チョンボだ。
「来栖くん、それじゃボクがキミに聞くけど、もしキミが監督だったらああいう場合、誰を守備で使う?」
櫻井が来栖に聞いた。
「それは、自分しかいないと思います」
「それは何故?」
「何故って…自分は内野も外野も一通り守れるし、ライトは自分みたいな強肩の方がいいと思うし、相手ピッチャーは右だから、自分は左打ちで有利だと思います」
「うん、その通り。じゃあ、キミしかいないよね?」
「はい…」
「頑張って」
肩をポンと叩いた。
来栖はグラブを手にベンチを出た。
「何だ、アイツ…あれで納得したのかよ?」
「コッチが逆に聞いてみるんですよ。ああいう場合、誰が一番適してるかって」
「…何なんだ、アイツは」
ホントにそう思う。
ライトの守備位置ではまだ梁屋が倒れている。
「あ、今担架がきた!」
救急隊員が担架を持って素早く駆け寄った。
「ちょっと痛いかもしれないけどガマンしてくださいね」
二人がかりで梁屋を持ち上げると担架に乗せた。
「ウグヮッ…」
スパイクを脱がせると、足首が右と比べて倍以上腫れ上がっていた。
「これは折れてるかも」
「マジか…」
「て事は…ヘタすると今シーズン絶望かも」
「いや、そんな事よりも今は早く治療をしないと」
「ワタル!試合は必ず勝つから心配するなよ!」
「皆…申し訳ない…ぐっ…」
「いいから気にするな!それよりお前は治療に専念するんだ!」
ナインに見送られ、梁屋は担架で運ばれた。
この様子だと今シーズン復帰は不可能なのかもしれない。
梁屋と入れ替わりで来栖が来た。
「おお、来たか!」
「頼んだぜ、スーパーサブ!」
「来栖くん、期待してるよ」
「ワタルの分まで頑張ろう!」
ナインは来栖に声を掛けて守備についた。
185cm、87kgという均整のとれた体型。
何より注目するべき箇所はふくらはぎが異様に発達している。
かなり強靭な脚力の証拠だ。
【4番キャッチャー矢幡】
試合が再開した。
いまだ両チーム無得点のまま、打順は主砲の矢幡。
去年は打率こそ3割を切ったが、ホームランは35本、打点は114と優秀な成績。
今年は既にホームラン20本を打って4番としての役割りを果たしている。
そして梁屋に代わりライトを守る来栖はスーパーサブの役割を果たすのか。
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