Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

sky-high

文字の大きさ
上 下
38 / 125
何がなんでも優勝

屁理屈野郎

しおりを挟む
「来栖悠介 プロ三年目。社会人野球からドラフト三位で入団。
右投げ左打ちで、背番号55おぉー、何かすごそうなヤツじゃん!」


「経歴は立派なんですけどね」


「何々…非常に頑固で試合に出場するにも、確固たる理由が無いと試合に出ないと主張する、自分勝手な性格。
打力や守備、走塁に関しては一軍クラスだが、協調性ゼロ…か。試合出るのに、キチンと理由を話せばいいって事なのか」


何だか、物凄い面倒臭いタイプだ。


「二軍の首脳陣も手を焼いてるみたいですよ」


「ふーん…後で中ちゃんに連絡して直接聞いてみるかな」


「中田監督も相当困ってるみたいですから」


「なる程ねぇ…」






その夜、榊は二軍監督の中田に電話を入れた。



「もしもし、中ちゃん?オレオレ、どうそっちは?」


【は?どちらさん?】


「オレだよ、オレ!分かんねぇのかよ!」


【オレと言われても…どちらさんです?】


「何ふざけてんだよ!オレだってば!」


榊はスマホを忘れ、球団スタッフのスマホを借りて電話していた。


【誰なんだ、一体!ふざけてんのか、全く!】


そう言うと、電話を切ってしまった。


「何だ、あのヤロー!いつもならフツーに出てくるのに、ったく…あ!そうだった、このスマホ球団スタッフのやつだった」


ホントに大丈夫なんだろうか…


再度電話をかけた。



【はい】


「悪い、悪い!中ちゃん、オレだよ榊!」


【何だ、お前かよ!知らない番号だったから、誰かと思ったじゃないか!】


「いやー、スマホ忘れちゃってさぁ!そうそう、中ちゃんに聞きたい事があって電話したんだよ」


【何だ、聞きたい事って?】


「下にさぁ、来栖とか言うヤツいるじゃん?」


【…アイツかよ】


「ん、どうした?」


声のトーンが下がった。


【冗談じゃねえよ、あのヤローは!試合に出るって言うのに「何で、自分を使うんですか?その理由を明確に教えてください」とか言うんだぜ!】


「ならば、こういう理由でお前を使うんだって言えばいいじゃん」


【それならコッチだって苦労しないよ】


一癖も二癖もありそうな選手らしい。


「じゃあ、何だって言うんだよ?」


【この試合、お前は外野で使う。だからスタメンで起用するんだって言ったら、何て言ってたと思う?】


「さぁ…」


【「もっと具体的に言ってください!そんな曖昧な理由じゃ試合に出たくありません!」だとよ!ホントに、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったよ】


「ぶっ飛ばしちゃえよ、そんな生意気なヤツ!」


【今そんな事したら大問題だよ!】


「しかしまぁ、屁理屈というかなんと言うか…」


相当な捻くれ者らしい。


【もう、ホント嫌になるよ】


「で、肝心の実力はどうなの?」


【あぁ、それは間違いなくレギュラークラスの実力だよ。それさえ無ければ、どこのチームに行っても即レギュラーになれるよ】


実力は一軍クラスだが、問題はそのひねくれた性格だ。


「中ちゃんさぁ、ソイツ一軍に上げたいんだよね」


【はぁ?何言ってんだ、お前!あんな屁理屈ヤローを一軍に上げたってロクなこと無いぞ!】


「んー、そうなんだけどさぁ…実力はレギュラークラスならば、一軍で使ってみようかと思ってるんだよね」


大丈夫なのだろうか。


【知らねぇぞ、オレは。後になって、後悔するなよ】


「大丈夫、大丈夫。イザとなったら、パワーボムかますから」


【だから、そういうのがダメなんだっつーの!】


心配だ…


かくして、来栖は一軍に昇格する事となった。


早速、ドルフィンズとの一戦からベンチ入りした。



「はぁ…これが一軍の雰囲気か…なる程ね」


「お、もしかして今日一軍に上がってきたヤツか?」


畑中が話しかけてきた。


「はぁ、来栖です」


帽子を取って頭を下げた。


「おぅ、こちらこそヨロシク!まぁ、気楽にやってくれよ」


「気楽ですか…」


「そうそう!肩の力を抜いて楽にしてくれたまえ!初っ端から、そんなガチガチだといいプレイが出来ないぞ」


「いや、これはいつも通りでそんなに固くはなってないですけど」


「おお、そうか!とにかく、キミはスカイウォーカーズのスーパーサブとして一軍にいるんだから、期待してるよっ!」


すると、来栖の表情が一変した。


「スーパーサブって、なんですか?」


「ん?何って、今言った通りの事だが」


「そうじゃなくて、何でスーパーサブなんですか?」


「あぁ、ほらウチは層が厚いだろ?レギュラーを獲るのは、今のところ難しいかもしれないが、イザという時、守備固めや代走で出るって事だ」


「そうじゃなくて、もっと明確な理由を聞きたいんです」


「め、明確な理由?」


何だか面倒くさそうなヤツだ。


「そうです!人を動かすには、それなりの理由がある筈です!もっと、自分に理解出来るような明確な理由を言ってもらわないと、納得出来ません!」


「はぁ?何言ってんだ、お前?」


「自分は正論を言ってるだけです!いいですか、指示するからには、キチンと理路整然とした説明が必要なんです!」


「お前…相当、面倒臭いヤツだな」


「ほら!すぐそうやって、面倒臭いの一言で片付ける!自分は正当な主張をしているだけです!それなのに、二言目には面倒臭い!自分は理由を聞きたいだけです!」


こりゃまた、かなり面倒臭いキャラだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】限界離婚

仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。 「離婚してください」 丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。 丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。 丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。 広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。 出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。 平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。 信じていた家族の形が崩れていく。 倒されたのは誰のせい? 倒れた達磨は再び起き上がる。 丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。 丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。 丸田 京香…66歳。半年前に退職した。 丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。 丸田 鈴奈…33歳。 丸田 勇太…3歳。 丸田 文…82歳。専業主婦。 麗奈…広一が定期的に会っている女。 ※7月13日初回完結 ※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。 ※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。 ※7月22日第2章完結。 ※カクヨムにも投稿しています。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

処理中です...