Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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何がなんでも優勝

勝つ!

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ワンナウトランナー二塁で尚もチャンスは続く。


打席には3番の結城。


ここまでノーヒットだが、相手から見れば怖い存在だ。


ネプチューンリーグのトップを独走する362の打率で一発もある。


マウンド上では再び内野陣が集まる。


「歩かすか?」


「歩かせても、次は鬼束だぞ」


「勝負しかないよな」


「降谷、お前はどうしたい?」


「ここは勝負しかねぇだろ」


「よし、それじゃ勝負しよう」


「OK!」


結城と勝負する事に決めた。


内野陣が守備につく。打席では結城がバットをコンコンとベースを叩いてから構えた。



降谷は一度深呼吸をした。


(よし!)


初球を投げた。


146kmのストレートがズドーンと低目に決まる。


「ストライク!」


まだ球の威力は十分にある。


「この勝負、まだまだ分からないかもしれない」


結城がボソッと呟く。


1点を取ったが、まだまだ油断は出来ない。


降谷が二球目を投げた。


アウトコースからストライクゾーンに入るカットボール。


結城はこれをスイング。


しかし、打球はバックネットに当たる。


「ファール!」


カウントはツーストライク。


(さて、次は何かな)


力みの無い、自然体のフォームで待ち構える。


降谷が三球目を投げた。

真ん中やや低目のボール、結城はこれにタイミングを合わせた。


「…!」


軌道はベース手前でストンと落ちた。


「ファール!」


辛うじてバットに当ててファール。


「ここにきてこれだけのフォークを投げるとは…さすがエース」


結城は再び自然体なフォームでバットを握る。


降谷は既に100球を越えている。


見た目では分からないが、疲労はかなりある筈。


「何としてでも抑える!」


渾身の四球目を投げた。


「インコース低目へフォーク…」


結城の読み通り、インコース低目から落ちるフォーク。


「ボール!」


これは見送った。


落差があり過ぎてワンバンになる程だ。


「素晴らしい…こんな状況で鋭いフォークを投げれるとは」



結城の顔つきが変わった。


「ここで決める」


その佇まいはスラッガーとしての威圧感さえ漂う。


「絶対に抑えてやる!」


降谷が全身の躍動させ、五球目を投げた。


「打つ!」


渾身のストレートに結城はフルスイング!


乾いた打球音を響かせ、打球はグーンとライトへ。


ライト中村が懸命にバックする。


オクトパスフィールドはモンスターウォールと呼ばれる、高さ10m以上のフェンスがそびえ立つ。


だが、打球は遥か頭上へ。


「入った…」


結城の第10号ツーランが飛び出した。


マウンドでガックリと項垂れ、その後ろを淡々とした表情で二塁ベースを回った。


勝者と敗者、見事なまでのコントラストを表現している。


結城が今ホームイン。


この回3点を奪った。


ここでドジャースは降谷に代わり、右の須藤を投入。


「ナイスバッティング!」


次の打者鬼束とハイタッチした。


「次はキミの番だよ」


「はい!」


結城はベンチ前で全員とハイタッチをしてベンチに下がった。



「スゴいっすね、結城さん!あのライトフェンスをものともしないでスタンドに叩き込むなんて」


唐澤が興奮気味に捲し立てる。


「ボクのホームランより、キミがスクイズした事の方がスゴいよ。アレはキミが考えたのだろう?」


「え、ええ…まぁ、そうなんですけど」


「チームの為なら自己犠牲も厭わないというヤツかな」


「て言うか…勝たなきゃ意味が無いですし。自分の成績よりも、先ずは勝たないといけませんから」


「キミは成長したね」


唐澤の頭をポンポンと撫でた。


「あ、あの…恥ずかしいっす」


顔を真っ赤にして照れた。


鬼束はセンターフライに倒れて、5番毒島もサードゴロでスカイウォーカーズの攻撃は終了したが、7回裏から右の中継ぎ山本が投げ、8回の裏は左の中継ぎ加勢が抑えた。

そして最終回は抑えのジェイク・キムラが160kmを連発して三者凡退に抑え、スカイウォーカーズが接戦を制した。



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