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中盤
意地
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ようやく騒ぎが収まり、2番の唐澤が打席に入った。
「いきなりコイツかよ…厄介な相手だ」
降谷は警戒する。
(降谷…本当ならお前はスカイウォーカーズでエースとして活躍してたはずなのに)
しかし、今は敵となってしまったからには、手加減はしない。
正統派オーバースローから初球を投げた。
「ボール!」
やや高目に浮いた。
しかし、球速は152kmをマーク。
シーズン中降谷が150kmを越えた事は無かった。
それだけに今日の試合は特別という事なのだろう。
二球目を投げた。
アウトコースからコースに入るカットボール。
「ストライク!」
バックドアでワンストライク。
(こんな投球が出来るようになったのか)
唐澤は気を引き締め、バットを構えた。
三球目、今度はインコースへスライダーが。
唐澤はバットを出したが、ガシッと音がしてボールは三塁線に切れた。
「ファール!」
ツーストライクに追い込まれた。
大島のサインに頷き、四球目を投げた。
再度インコースへ。
唐澤はこれをスイング。
「くっ…」
筧の時と同じようにバットが根っこに当たり、真っ二つに。
ピッチャー正面のゴロ。
降谷が捕って一塁へ送球。
「アウト」
これでツーアウト。
「カットボールの威力がスゴいです」
「なるほど、忠告ありがとう」
ネクストバッターズサークルで結城は言葉を交わすと打席に向かった。
結城の登場で場内は拍手で迎える。
かつてこの球場でヒットを量産した安打製造機がユニフォームを変えて戻ってきた。
ファンは暖かい声援を送る。
打席に入る前、ヘルメットを取って声援に応える。
観客はスタンディングオベーションで拍手が鳴り止まない。
「ここに戻ってきて良かった」
感無量の表情で打席に入った。
「スゴい声援っすね」
「あぁ、大島くんありがとう。ホントにここのファンは暖かいよね」
包み込むようにバットを持って自然体で構える。
「この男とトレードするのに、オレと吉岡の二人が出されたのかよ…」
結城に激しい憎悪を燃やす。
「打てるもんなら、打ってみろ!」
降谷が初球を投げた。
気合いの入ったストレートが低目へ。
ズドーンという音を響かせ、ミットへ。
「ストライク!」
電光掲示板のスコアボードには153kmと表示された。
「うん、いい球だ」
結城は満足そうな表情をしている。
(全球ストレートだ)
今度は降谷がサインを出す。
(バカ…結城さん相手にストレートは禁物だ)
大島は首を振った。だが、降谷はストレートにこだわる。
「タイム」
大島がタイムをかけ、マウンドに駆け寄る。
「バカ、あの人相手に全球ストレートなんて、無理に決まってるだろ!」
「あぁ、結城がどうした?オレのストレートで抑えてやるよ」
「何言ってんだ、あの人はどんな速い球がきてもそれに対応出来る技術があるんだぞ!」
「おい、オレのストレートが通用しないって言うのかよ」
降谷は詰め寄る。
「そうじゃなく、いくらなんでも全部ストレートで勝負したら、単調過ぎて打たれるだろ!」
「大丈夫だ、心配すんな」
降谷は戻れと大島を促した。
「知らねぇぞ、ホントに」
大島が納得のいかない表情でマウンドを降りた。
「フフ、ただのストレートなら打たれるけど、ストレートってのは一種類だけじゃないんだぜ」
不敵に笑みを浮かべ、二球目を投げた。
ストレートだが、先程よりも球速が遅い。
「ストライク!」
142kmと表示された。
結城は表情を変えず、マウンドの降谷に視線を送る。
(次もストレート、しかもストライクゾーンに投げてくるだろう)
結城の読みはストレート。
三球目を投げた。
「…っ」
今度は更に遅いストレートだ。
結城のバットが止まらない。
「ちっ…」
何とかバットを止めようとするが、ボールはバットの先端に当たった。
打球はショートの真正面、
ショート久住が捕って一塁へ。
「アウト!」
緩急をつけたストレートで降谷に軍配が上がった。
球速は僅か117km。
遅いストレートに翻弄された。
「全く…ストレートと言っても、球速を変えて投げてくるとは」
結城はフフフと笑うと、ベンチに戻ってグラブを手にした。
1回の表、スカイウォーカーズの攻撃は三者凡退で終了した。
「いきなりコイツかよ…厄介な相手だ」
降谷は警戒する。
(降谷…本当ならお前はスカイウォーカーズでエースとして活躍してたはずなのに)
しかし、今は敵となってしまったからには、手加減はしない。
正統派オーバースローから初球を投げた。
「ボール!」
やや高目に浮いた。
しかし、球速は152kmをマーク。
シーズン中降谷が150kmを越えた事は無かった。
それだけに今日の試合は特別という事なのだろう。
二球目を投げた。
アウトコースからコースに入るカットボール。
「ストライク!」
バックドアでワンストライク。
(こんな投球が出来るようになったのか)
唐澤は気を引き締め、バットを構えた。
三球目、今度はインコースへスライダーが。
唐澤はバットを出したが、ガシッと音がしてボールは三塁線に切れた。
「ファール!」
ツーストライクに追い込まれた。
大島のサインに頷き、四球目を投げた。
再度インコースへ。
唐澤はこれをスイング。
「くっ…」
筧の時と同じようにバットが根っこに当たり、真っ二つに。
ピッチャー正面のゴロ。
降谷が捕って一塁へ送球。
「アウト」
これでツーアウト。
「カットボールの威力がスゴいです」
「なるほど、忠告ありがとう」
ネクストバッターズサークルで結城は言葉を交わすと打席に向かった。
結城の登場で場内は拍手で迎える。
かつてこの球場でヒットを量産した安打製造機がユニフォームを変えて戻ってきた。
ファンは暖かい声援を送る。
打席に入る前、ヘルメットを取って声援に応える。
観客はスタンディングオベーションで拍手が鳴り止まない。
「ここに戻ってきて良かった」
感無量の表情で打席に入った。
「スゴい声援っすね」
「あぁ、大島くんありがとう。ホントにここのファンは暖かいよね」
包み込むようにバットを持って自然体で構える。
「この男とトレードするのに、オレと吉岡の二人が出されたのかよ…」
結城に激しい憎悪を燃やす。
「打てるもんなら、打ってみろ!」
降谷が初球を投げた。
気合いの入ったストレートが低目へ。
ズドーンという音を響かせ、ミットへ。
「ストライク!」
電光掲示板のスコアボードには153kmと表示された。
「うん、いい球だ」
結城は満足そうな表情をしている。
(全球ストレートだ)
今度は降谷がサインを出す。
(バカ…結城さん相手にストレートは禁物だ)
大島は首を振った。だが、降谷はストレートにこだわる。
「タイム」
大島がタイムをかけ、マウンドに駆け寄る。
「バカ、あの人相手に全球ストレートなんて、無理に決まってるだろ!」
「あぁ、結城がどうした?オレのストレートで抑えてやるよ」
「何言ってんだ、あの人はどんな速い球がきてもそれに対応出来る技術があるんだぞ!」
「おい、オレのストレートが通用しないって言うのかよ」
降谷は詰め寄る。
「そうじゃなく、いくらなんでも全部ストレートで勝負したら、単調過ぎて打たれるだろ!」
「大丈夫だ、心配すんな」
降谷は戻れと大島を促した。
「知らねぇぞ、ホントに」
大島が納得のいかない表情でマウンドを降りた。
「フフ、ただのストレートなら打たれるけど、ストレートってのは一種類だけじゃないんだぜ」
不敵に笑みを浮かべ、二球目を投げた。
ストレートだが、先程よりも球速が遅い。
「ストライク!」
142kmと表示された。
結城は表情を変えず、マウンドの降谷に視線を送る。
(次もストレート、しかもストライクゾーンに投げてくるだろう)
結城の読みはストレート。
三球目を投げた。
「…っ」
今度は更に遅いストレートだ。
結城のバットが止まらない。
「ちっ…」
何とかバットを止めようとするが、ボールはバットの先端に当たった。
打球はショートの真正面、
ショート久住が捕って一塁へ。
「アウト!」
緩急をつけたストレートで降谷に軍配が上がった。
球速は僅か117km。
遅いストレートに翻弄された。
「全く…ストレートと言っても、球速を変えて投げてくるとは」
結城はフフフと笑うと、ベンチに戻ってグラブを手にした。
1回の表、スカイウォーカーズの攻撃は三者凡退で終了した。
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