Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

sky-high

文字の大きさ
上 下
33 / 125
中盤

意地

しおりを挟む
ようやく騒ぎが収まり、2番の唐澤が打席に入った。


「いきなりコイツかよ…厄介な相手だ」


降谷は警戒する。


(降谷…本当ならお前はスカイウォーカーズでエースとして活躍してたはずなのに)


しかし、今は敵となってしまったからには、手加減はしない。


正統派オーバースローから初球を投げた。


「ボール!」


やや高目に浮いた。

しかし、球速は152kmをマーク。


シーズン中降谷が150kmを越えた事は無かった。

それだけに今日の試合は特別という事なのだろう。


二球目を投げた。

アウトコースからコースに入るカットボール。


「ストライク!」

バックドアでワンストライク。


(こんな投球が出来るようになったのか)


唐澤は気を引き締め、バットを構えた。


三球目、今度はインコースへスライダーが。


唐澤はバットを出したが、ガシッと音がしてボールは三塁線に切れた。


「ファール!」


ツーストライクに追い込まれた。



大島のサインに頷き、四球目を投げた。

再度インコースへ。


唐澤はこれをスイング。


「くっ…」


筧の時と同じようにバットが根っこに当たり、真っ二つに。


ピッチャー正面のゴロ。


降谷が捕って一塁へ送球。


「アウト」


これでツーアウト。


「カットボールの威力がスゴいです」


「なるほど、忠告ありがとう」


ネクストバッターズサークルで結城は言葉を交わすと打席に向かった。


結城の登場で場内は拍手で迎える。


かつてこの球場でヒットを量産した安打製造機がユニフォームを変えて戻ってきた。


ファンは暖かい声援を送る。


打席に入る前、ヘルメットを取って声援に応える。

観客はスタンディングオベーションで拍手が鳴り止まない。


「ここに戻ってきて良かった」


感無量の表情で打席に入った。


「スゴい声援っすね」


「あぁ、大島くんありがとう。ホントにここのファンは暖かいよね」


包み込むようにバットを持って自然体で構える。


「この男とトレードするのに、オレと吉岡の二人が出されたのかよ…」


結城に激しい憎悪を燃やす。


「打てるもんなら、打ってみろ!」


降谷が初球を投げた。


気合いの入ったストレートが低目へ。


ズドーンという音を響かせ、ミットへ。


「ストライク!」


電光掲示板のスコアボードには153kmと表示された。


「うん、いい球だ」


結城は満足そうな表情をしている。


(全球ストレートだ)


今度は降谷がサインを出す。


(バカ…結城さん相手にストレートは禁物だ)


大島は首を振った。だが、降谷はストレートにこだわる。


「タイム」


大島がタイムをかけ、マウンドに駆け寄る。


「バカ、あの人相手に全球ストレートなんて、無理に決まってるだろ!」


「あぁ、結城がどうした?オレのストレートで抑えてやるよ」


「何言ってんだ、あの人はどんな速い球がきてもそれに対応出来る技術があるんだぞ!」


「おい、オレのストレートが通用しないって言うのかよ」


降谷は詰め寄る。


「そうじゃなく、いくらなんでも全部ストレートで勝負したら、単調過ぎて打たれるだろ!」


「大丈夫だ、心配すんな」


降谷は戻れと大島を促した。


「知らねぇぞ、ホントに」


大島が納得のいかない表情でマウンドを降りた。


「フフ、ただのストレートなら打たれるけど、ストレートってのは一種類だけじゃないんだぜ」


不敵に笑みを浮かべ、二球目を投げた。


ストレートだが、先程よりも球速が遅い。


「ストライク!」


142kmと表示された。


結城は表情を変えず、マウンドの降谷に視線を送る。


(次もストレート、しかもストライクゾーンに投げてくるだろう)


結城の読みはストレート。


三球目を投げた。


「…っ」


今度は更に遅いストレートだ。


結城のバットが止まらない。


「ちっ…」


何とかバットを止めようとするが、ボールはバットの先端に当たった。


打球はショートの真正面、

ショート久住が捕って一塁へ。


「アウト!」


緩急をつけたストレートで降谷に軍配が上がった。


球速は僅か117km。


遅いストレートに翻弄された。


「全く…ストレートと言っても、球速を変えて投げてくるとは」


結城はフフフと笑うと、ベンチに戻ってグラブを手にした。


1回の表、スカイウォーカーズの攻撃は三者凡退で終了した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...