Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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X―Factor

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バットを持ち、トントンと指でリズムをとる。


「さぁ来い!」


畑中は余裕の表情で待ち構える。


「このバッターだけは何を考えてるのか全く読めない」


萩原は警戒する。


サインに頷き初球を投げた。


「おっ、スライダー」


しかし畑中はバットを出さず。


「ボール!」


僅かにコースから外れた。


「さて、次はどんな球かなぁ」


指先に加え、爪先でもリズムをとった。


その二球目はインコースへ速い球。


「ストライク!」


初めて150kmをマークした。


スタンドが湧き上がる。


「速いなぁ…」


畑中は再びバットを構え、リズムをとる。


三球目、今度は高目に外したストレート。


「ボール!」


ツーボール、ワンストライクとなった。


「うーん」


打席で何やら考え込んでいる。


「よし、決めた!」


そう言うと、タイムをかけた。


「タイム!」


萩原はプレートを外した。


すると、畑中は左打席に入った。


「えーっ!」


「左?」


「何で、また」


「That idiot...(あのバカ…)」


トーマスは深いため息をついて、手で顔を覆った。


「ヘイ、カモーンヌ!」

畑中は左打席でバットを構える。


唖然とする萩原。


「オイオイ、いくら打てないからって左に変えても打てないぞ!」


「飲みすぎてワケが分からなくなったんじゃないのか!」


「何がしたいんだ、おいっ!」


ニックスベンチも予測不可能な畑中の打席にヤジを飛ばす。


場内は物凄いブーイングだ。


【Boo!】


【Boo!Boo!】


【畑中引っ込めーっ!】


【ふざけてんのか、コラァ!】


しかし、当の本人は何処吹く風と意に返さない。

それどころか、鼻歌交じりで右打席の時よりも大きくリズムをとる。


「フフフーン、フフフー♪」


リズミカルに肩を動かし、ステップを踏むようにしてバットを持つ。


「何やってんだ、ありゃ?」


「さぁ…」


榊も櫻井も首を傾げるしかない。


「フォーク狙いなのか…それとも」


萩原は戸惑いながらもサインに頷き四球目を投げた。


「オシッ!」


真ん中低目にボールがきた。


畑中はややぎこちないスイングだが、タイミングを合わせた。


「あら…」


しかしバットを空を切り、ワンバンでキャッチャーがボールを捕った。


「ストライク!」


萩原はフォークを投げた。


ストレートの軌道からベース手前で鋭く落ちる為、バッターは空振りする。


「ほぇー、スゲー落ちるなぁ」


だが、その表情にはまだ余裕がある。


「さぁ、来い!」


左打席から変えるつもりは無いのか。


「何考えてるのか、サッパリ分からん」


五球目を投げた。


「スライダー…」


投げた瞬間、畑中は球種を読み当てた。


ギュイーンと手前で鋭く曲がる。


その曲がりっぱなを、今度はカンペキなスイングで捕らえた。


快音と共に打球はレフトへ。

しかし、打球は左へ逸れる。


畑中は打球の行方を見て、一塁へ向かった。


その打球はレフトのポールに当たり、グランドに跳ね返った。

レフトの外審が手を回した。


「ホームランだ…」


「左でホームランかよ」


「Unbelievable...(信じられない…)」


場内がどよめいた。


畑中の今シーズン第8号ソロホームランでスカイウォーカーズが先制した。


「He is an X-factor.(ヤツはエックスファクターだ)」


トーマスが口にした【エックスファクター】とは、未知の人物または、未知の物という意味だ。


つまり、畑中は未知なる能力を持つ不思議な人物という事でトーマスはエックスファクターと言った。


そのエックスファクター、畑中は今ホームを踏んだ。



「左でホームランって、スゲーなお前は!」


榊は驚いた表情でハイタッチを交わす。



「いや~、とてもボクにはマネ出来る事じゃないよ」


櫻井もビックリした表情でハイタッチを交わした。



「You're an unpredictable guy.(お前は予測不可能なヤツだ)」


トーマスは半分呆れ顔でハイタッチを交わした。



ナインも次々と畑中とハイタッチを交わし、ベンチは次第に盛り上がってきた。


「Let's win again today!(今日も勝つぞ!)」


トーマスが選手を鼓舞する。


「何だって?」


梁屋が唐澤に聞いた。


「さぁ…でも、言う事は一つしかないだろ」



「フフフ、その通り。トーマスコーチは今日も勝つぞって言ったのさ」



結城が訳した。



「スゴいっすね、結城さん。英語話せるとは」


「少しだけだけどね」


結城は微笑んだ。




「マジかよ…左でホームラン打たれるって」


マウンド上の萩原はガックリと肩を落とした。


スカイウォーカーズのエックスファクター、畑中の左打席でホームランを放ち、1点を先制した。
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