Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

sky-high

文字の大きさ
上 下
28 / 125
中盤

X―Factor

しおりを挟む
バットを持ち、トントンと指でリズムをとる。


「さぁ来い!」


畑中は余裕の表情で待ち構える。


「このバッターだけは何を考えてるのか全く読めない」


萩原は警戒する。


サインに頷き初球を投げた。


「おっ、スライダー」


しかし畑中はバットを出さず。


「ボール!」


僅かにコースから外れた。


「さて、次はどんな球かなぁ」


指先に加え、爪先でもリズムをとった。


その二球目はインコースへ速い球。


「ストライク!」


初めて150kmをマークした。


スタンドが湧き上がる。


「速いなぁ…」


畑中は再びバットを構え、リズムをとる。


三球目、今度は高目に外したストレート。


「ボール!」


ツーボール、ワンストライクとなった。


「うーん」


打席で何やら考え込んでいる。


「よし、決めた!」


そう言うと、タイムをかけた。


「タイム!」


萩原はプレートを外した。


すると、畑中は左打席に入った。


「えーっ!」


「左?」


「何で、また」


「That idiot...(あのバカ…)」


トーマスは深いため息をついて、手で顔を覆った。


「ヘイ、カモーンヌ!」

畑中は左打席でバットを構える。


唖然とする萩原。


「オイオイ、いくら打てないからって左に変えても打てないぞ!」


「飲みすぎてワケが分からなくなったんじゃないのか!」


「何がしたいんだ、おいっ!」


ニックスベンチも予測不可能な畑中の打席にヤジを飛ばす。


場内は物凄いブーイングだ。


【Boo!】


【Boo!Boo!】


【畑中引っ込めーっ!】


【ふざけてんのか、コラァ!】


しかし、当の本人は何処吹く風と意に返さない。

それどころか、鼻歌交じりで右打席の時よりも大きくリズムをとる。


「フフフーン、フフフー♪」


リズミカルに肩を動かし、ステップを踏むようにしてバットを持つ。


「何やってんだ、ありゃ?」


「さぁ…」


榊も櫻井も首を傾げるしかない。


「フォーク狙いなのか…それとも」


萩原は戸惑いながらもサインに頷き四球目を投げた。


「オシッ!」


真ん中低目にボールがきた。


畑中はややぎこちないスイングだが、タイミングを合わせた。


「あら…」


しかしバットを空を切り、ワンバンでキャッチャーがボールを捕った。


「ストライク!」


萩原はフォークを投げた。


ストレートの軌道からベース手前で鋭く落ちる為、バッターは空振りする。


「ほぇー、スゲー落ちるなぁ」


だが、その表情にはまだ余裕がある。


「さぁ、来い!」


左打席から変えるつもりは無いのか。


「何考えてるのか、サッパリ分からん」


五球目を投げた。


「スライダー…」


投げた瞬間、畑中は球種を読み当てた。


ギュイーンと手前で鋭く曲がる。


その曲がりっぱなを、今度はカンペキなスイングで捕らえた。


快音と共に打球はレフトへ。

しかし、打球は左へ逸れる。


畑中は打球の行方を見て、一塁へ向かった。


その打球はレフトのポールに当たり、グランドに跳ね返った。

レフトの外審が手を回した。


「ホームランだ…」


「左でホームランかよ」


「Unbelievable...(信じられない…)」


場内がどよめいた。


畑中の今シーズン第8号ソロホームランでスカイウォーカーズが先制した。


「He is an X-factor.(ヤツはエックスファクターだ)」


トーマスが口にした【エックスファクター】とは、未知の人物または、未知の物という意味だ。


つまり、畑中は未知なる能力を持つ不思議な人物という事でトーマスはエックスファクターと言った。


そのエックスファクター、畑中は今ホームを踏んだ。



「左でホームランって、スゲーなお前は!」


榊は驚いた表情でハイタッチを交わす。



「いや~、とてもボクにはマネ出来る事じゃないよ」


櫻井もビックリした表情でハイタッチを交わした。



「You're an unpredictable guy.(お前は予測不可能なヤツだ)」


トーマスは半分呆れ顔でハイタッチを交わした。



ナインも次々と畑中とハイタッチを交わし、ベンチは次第に盛り上がってきた。


「Let's win again today!(今日も勝つぞ!)」


トーマスが選手を鼓舞する。


「何だって?」


梁屋が唐澤に聞いた。


「さぁ…でも、言う事は一つしかないだろ」



「フフフ、その通り。トーマスコーチは今日も勝つぞって言ったのさ」



結城が訳した。



「スゴいっすね、結城さん。英語話せるとは」


「少しだけだけどね」


結城は微笑んだ。




「マジかよ…左でホームラン打たれるって」


マウンド上の萩原はガックリと肩を落とした。


スカイウォーカーズのエックスファクター、畑中の左打席でホームランを放ち、1点を先制した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。

新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

処理中です...