Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

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近所に格闘技のジムがあるのを思い出した。


改めてそのジムをよく見ると【キックボクシング 柔術 レスリング】と書いてある。

所謂、総合格闘技のジムだった。


中では選手と思われる二人がオープンフィンガーグローブを手に、スパーリングを行っていた。

パンチ、キック、寝技。


(これだ!)


結城少年は家に帰ると親を説得した。

ジムに行きたいと。


勿論、親は猛反発。


しかし、結城少年は何度も頼み込む。


さすがに折れて、結城少年は総合格闘技ジムに通う事となった。


まだ中学に上がったばかりという事で、インストラクターは基礎体力を重点においたトレーニングを指導する。


一日でも早く格闘技をマスターしたい彼は、メキメキと力を付ける。


やがて打撃技の練習をするようになる。

飲み込みの早い結城少年はあっという間に打撃をマスターする。


寝技は別に覚えなくていい、パンチとキックさえ覚えてしまえばそこら辺の連中なんて、ソッコーで勝てる。


そもそも、ケンカに寝技なんて必要無いだろうと。


打撃を覚えると、スパーリングで実戦感覚を養った。


最初のうちは防御が不安定でパンチやキックをもらい、ダウンする。


ヘッドギアやプロテクターで身を覆っているが、それでもダメージは残る。


結城少年は考えた。

彼は頭の回転が速い。その回転の速さが今日のバッティングにも表れている。



結城少年が辿り着いた答えは【相手の攻撃を読む】事だった。


中学に上がったばかりの少年が思いつくには、かなり高度な答えだったが、彼は他の選手がスパーリングをしている際、食い入るように見つめ、メモをとった。


この選手は右のフックが、強烈だから要注意。

この選手はローキックが得意だから脚に警戒、と言った感じで相手の動きを読んだ。


この作戦が功を奏し、スパーリングでは大人でも苦戦する程の卓越した技術で相手を圧倒する。


(よし、こんなもんでいいだろ)


ある程度打撃を身につけると、彼はジムを辞めてしまった。


元々ケンカに勝つ為の手段に過ぎず、これ以上ジムに在籍すると試合に出ろと言われてしまうので、見切りをつけてしまった。


ジムを辞めた後は実戦と称して、そこら辺にいるヤンキーとケンカするべく、街中を彷徨いた。


いかにもケンカしそうな雰囲気のヤツを見つけ、わざと目付きを悪くして歩く。


外見がおぼっちゃんのような顔立ちをしている為、ヤンキーはナメてかかる。


(よし、コイツをケンカデビューの相手にしよう)


頭の中でどうやって倒すかシュミレーションした。


「おい!何ガン飛ばしてるんじゃ、コラぁ!」


引っかかった!


「別に…ガン飛ばしてるのはソッチだろ!」


「テメー、いい度胸してんな!ボッコボコにしてやんよ」


「やれるもんなら、やってみな!」


相手をおちょくる。そうすると、相手はキレて殴りかかってくるだろうと読んだ。


案の定、ヤンキーから仕掛けた。

だが、ジムの練習生に比べればスローなパンチで大した事ない。

結城少年は流れるようなパンチとキックのコンビネーションで、一方的に打ちのめした。


「勝った…ィヤッター!勝ったぞ、勝った!」

恍惚の表情を浮かべ、暴力で制した自分の攻撃性が解き放たれた。



ここから彼のケンカがエスカレートする。


時には数人、時には上級生と言った具合に、相手からケンカを売られるように仕向け、誘いに乗った相手を叩きのめす。


何度もケンカを繰り返したある日、金を取られたヤンキー数名と出くわす。


(コイツらだ!)


早くボコボコにしたくてウズウズしている。


結城少年は途端に悪い目付きをした。


勿論、それに気づいたヤンキーが絡んでくる。


「おい!今、コッチにガン飛ばしたろ!」


「だったら、どうだって言うんだ」


「あれ、コイツこの前オレたちがボコボコにしたヤツだろ?」


一人が思い出した。


「何だ、あの時のダサボーかよ!」


ヤンキー達はニヤニヤしている。


「お前らなんか、一人で十分だ!掛かってこいよ、おい!」


「テメー…殺してやる!」


バキッ!ドカッ!グシャッ!


あっという間に全員をボコボコにした。


今度はヤンキー達が路上でうずくまっている。


結城少年は一人ずつのポケットを漁り、サイフを取り出した。


「あっ!オレのサイフ…」


「うるせえんだよ!」


ドゴッ!


更に蹴りを見舞う。


「うげぇ!」



鳩尾を蹴られ、のたうち回る。


全員のサイフから中身を抜き取り、空になったサイフを放り投げる。


(よし!やっと目的を達成出来た!)


積年の恨みをはらすがごとく、結城少年は喜びに打ち震えていた。


「ようやく!ようやく、アイツらを倒したぞ!」



結城少年のケンカ道は始まったばかりだ。
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