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畑中は三杯目のビールをお代わりした。
結城はビールから梅酒に変え、唐澤はあまり飲めないと言いつつ、半分以上口にしていた。
「なんつーか、人の人生には色んなドラマがあるという事だな、うん」
「ドラマか…という事は、結城さんもドラマがあるんじゃないですか?」
慣れないアルコールを口にしたせいか、唐澤いつになく饒舌だ。
「ボ、ボク?いや、ボクはまぁ」
グラスを置き、ネクタイを締め直す。
「おぉ、そうだ!チサトの話も聞きたいよな?なんてったって、泣く子も黙る超ヤンキーだったお前が、何で更生したのかっ、てところが気になるなぁ」
畑中が興味津々で聞いてきた。
「いや…ボクは…まぁ、いいじゃないですか、ハハッ」
「あっ、その話聞きたいです!今や球界のジェントルマンと呼ばれる結城さんが、昔ワルだった頃の話を」
「あのー、唐澤くん…キミは酔っ払ってるんじゃないのかな?」
「いえ、大丈夫です!このぐらいの量なら、全然平気です」
そう言うと、残りを一気に飲んだ。
「おい、お前そんなに飲んで大丈夫なのか?」
みるみるうちに顔が真っ赤になった。
「え、えぇ…たまにはいいですよね、こうやって酒を飲むのも」
一気に身体中がカァっと熱くなった。
「よし、ここからはチサトの話だ」
「えーっ!ホントに話すんですか?」
「あたりめーだろ!お前がどうやってヤンキーから更生して、安打製造機になったって話を聞きたいワケよ」
「はい、自分も聞きたいです」
屈託のない笑顔で促す。
「ハァ…ボクの話なんかしても、大して面白くないのに」
「面白いか、面白くないかはコッチが聞いてみなきゃ分からないしなぁ、なぁ唐澤?」
「はい、そう思います」
二人で満面の笑みを浮かべた。
「大した話ではないんですが…」
当時を振り返り、結城は複雑な表情を浮かべた。
「テメー!どこ中だ、あぁ!」
「うるせぇ!オレァ、二中の結城だ!」
「お、おい!結城って、あの」
「マジかよ!二中の結城っていや、族相手に一人でケンカして全滅させたヤツだろ!」
相手は二人で、コッチは一人。
お互いヤンキーっぽい出で立ちで目付きが悪い。
道ですれ違いざま、ガンを飛ばしたとか何とか難癖をつけてケンカを売ってきた。
コッチは決してケンカを売らないが、売られたからには買うしかない。
「オラ、どうした!やるのかやらないのか、どっちなんだ!」
二人組は結城の武勇伝を伝え聞いているせいか、怖気付いた。
「い、いや…ケンカは良くない…良くないな、うん」
「そ、そう…しかも、こんな街中でケンカなんかしたらダメでしょ」
しかし、結城は既に臨戦態勢だ。
「ガタガタ抜かしてねぇで、掛かってこいや!」
バキ ドカっ!ガシーン!
数分後、二人組が顔面血だらけで路上にうずくまっていた。
「今度ケンカする時は、相手をよく見てケンカしろ!分かったか、コラぁ!」
バゴッ!
「グヘッ…」
強烈な蹴りをお見舞いして、その場を去った。
結城千聖15才。
中学三年生で本来ならば受験生なのだが、勉強は全くダメ。
小学生の頃、少年野球チームでピッチャーをやっていた。
サウスポーの彼はカーブを投げていた。
しかし当時の監督から、その年で変化球を使うとヒジを痛めるから使うなと禁止された。
結城少年はそれでも試合でカーブを投げた。
カーブを投げると、バッターは必ず三振する。
三振を獲りたくて、カーブを多用する。
しかしある時、試合中カーブを投げた際にヒジに激通が走った。
まだ関節が完全に成長しきってない年代で変化球を覚えると手首やヒジに負担がかかり、最悪の場合投げられなくなってしまう。
結城少年は運良く手術をして元に戻ったが、監督からこっぴどく怒られた。
(何で怒られなきゃならないんだ)
三振を獲ったのに怒られる。
こんなんじゃ、やっても面白くない!
結城少年は野球を辞めてしまった。
中学に上がると、結城少年は野球の事などすっかり忘れ、ゲームに没頭した。
ヒマさえあれば、テレビに接続してゲームをしている。
そのうち、新しいゲームソフトが欲しくなり親から貰ったお小遣いでソフトを買いに行く途中、前方から数人のヤンキーが。
(何かイヤだなぁ)
そう思いながら、視線を逸らしていると「おい、待てよ!」と声を掛けられた。
「お前、今オレの事ジロジロと見てたろ!」
「い、いえ、見てないです」
結城少年はビビった。
このヤンキー達は他校の上級生で、数名でたむろしては悪さばかりしていた。
「見てたよな、見てたろ?なぁ!」
更に追い打ちをかける。
「み、見てないです」
実際目を逸らしたのだから、見るわけがない。
しかし、ヤンキー達はしつこかった。
「おい、ホントの事言わないとボコボコにするぞ」
「ホントに見てないです!」
「テメー、ナメてんのか!」
不意にパンチが飛んできた。
こめかみの辺りにヒットして、一瞬真っ暗になった。
そこから数名でボコボコにされ、鼻や口から血が流れた。
「おい!コイツ、ケッコーな金持ってるぜ」
一人が財布を巻き上げた。
「あ!それは…」
「うるせぇんだよ!」
土手っ腹に蹴りを食らい、胃液が逆流しそうになるほどの苦しさでのたうち回る。
ヤンキー達はサイフの中身を抜き取ると、サイフを投げつけ、去っていった。
激痛の中、結城少年は悔しくて泣いた。
(クソっ!アイツら…絶対に許さない!)
あの連中を叩きのめすには、ケンカに強くなるしかない。
結城少年はこの日を境に、暴力的な人物へと変わっていった。
結城はビールから梅酒に変え、唐澤はあまり飲めないと言いつつ、半分以上口にしていた。
「なんつーか、人の人生には色んなドラマがあるという事だな、うん」
「ドラマか…という事は、結城さんもドラマがあるんじゃないですか?」
慣れないアルコールを口にしたせいか、唐澤いつになく饒舌だ。
「ボ、ボク?いや、ボクはまぁ」
グラスを置き、ネクタイを締め直す。
「おぉ、そうだ!チサトの話も聞きたいよな?なんてったって、泣く子も黙る超ヤンキーだったお前が、何で更生したのかっ、てところが気になるなぁ」
畑中が興味津々で聞いてきた。
「いや…ボクは…まぁ、いいじゃないですか、ハハッ」
「あっ、その話聞きたいです!今や球界のジェントルマンと呼ばれる結城さんが、昔ワルだった頃の話を」
「あのー、唐澤くん…キミは酔っ払ってるんじゃないのかな?」
「いえ、大丈夫です!このぐらいの量なら、全然平気です」
そう言うと、残りを一気に飲んだ。
「おい、お前そんなに飲んで大丈夫なのか?」
みるみるうちに顔が真っ赤になった。
「え、えぇ…たまにはいいですよね、こうやって酒を飲むのも」
一気に身体中がカァっと熱くなった。
「よし、ここからはチサトの話だ」
「えーっ!ホントに話すんですか?」
「あたりめーだろ!お前がどうやってヤンキーから更生して、安打製造機になったって話を聞きたいワケよ」
「はい、自分も聞きたいです」
屈託のない笑顔で促す。
「ハァ…ボクの話なんかしても、大して面白くないのに」
「面白いか、面白くないかはコッチが聞いてみなきゃ分からないしなぁ、なぁ唐澤?」
「はい、そう思います」
二人で満面の笑みを浮かべた。
「大した話ではないんですが…」
当時を振り返り、結城は複雑な表情を浮かべた。
「テメー!どこ中だ、あぁ!」
「うるせぇ!オレァ、二中の結城だ!」
「お、おい!結城って、あの」
「マジかよ!二中の結城っていや、族相手に一人でケンカして全滅させたヤツだろ!」
相手は二人で、コッチは一人。
お互いヤンキーっぽい出で立ちで目付きが悪い。
道ですれ違いざま、ガンを飛ばしたとか何とか難癖をつけてケンカを売ってきた。
コッチは決してケンカを売らないが、売られたからには買うしかない。
「オラ、どうした!やるのかやらないのか、どっちなんだ!」
二人組は結城の武勇伝を伝え聞いているせいか、怖気付いた。
「い、いや…ケンカは良くない…良くないな、うん」
「そ、そう…しかも、こんな街中でケンカなんかしたらダメでしょ」
しかし、結城は既に臨戦態勢だ。
「ガタガタ抜かしてねぇで、掛かってこいや!」
バキ ドカっ!ガシーン!
数分後、二人組が顔面血だらけで路上にうずくまっていた。
「今度ケンカする時は、相手をよく見てケンカしろ!分かったか、コラぁ!」
バゴッ!
「グヘッ…」
強烈な蹴りをお見舞いして、その場を去った。
結城千聖15才。
中学三年生で本来ならば受験生なのだが、勉強は全くダメ。
小学生の頃、少年野球チームでピッチャーをやっていた。
サウスポーの彼はカーブを投げていた。
しかし当時の監督から、その年で変化球を使うとヒジを痛めるから使うなと禁止された。
結城少年はそれでも試合でカーブを投げた。
カーブを投げると、バッターは必ず三振する。
三振を獲りたくて、カーブを多用する。
しかしある時、試合中カーブを投げた際にヒジに激通が走った。
まだ関節が完全に成長しきってない年代で変化球を覚えると手首やヒジに負担がかかり、最悪の場合投げられなくなってしまう。
結城少年は運良く手術をして元に戻ったが、監督からこっぴどく怒られた。
(何で怒られなきゃならないんだ)
三振を獲ったのに怒られる。
こんなんじゃ、やっても面白くない!
結城少年は野球を辞めてしまった。
中学に上がると、結城少年は野球の事などすっかり忘れ、ゲームに没頭した。
ヒマさえあれば、テレビに接続してゲームをしている。
そのうち、新しいゲームソフトが欲しくなり親から貰ったお小遣いでソフトを買いに行く途中、前方から数人のヤンキーが。
(何かイヤだなぁ)
そう思いながら、視線を逸らしていると「おい、待てよ!」と声を掛けられた。
「お前、今オレの事ジロジロと見てたろ!」
「い、いえ、見てないです」
結城少年はビビった。
このヤンキー達は他校の上級生で、数名でたむろしては悪さばかりしていた。
「見てたよな、見てたろ?なぁ!」
更に追い打ちをかける。
「み、見てないです」
実際目を逸らしたのだから、見るわけがない。
しかし、ヤンキー達はしつこかった。
「おい、ホントの事言わないとボコボコにするぞ」
「ホントに見てないです!」
「テメー、ナメてんのか!」
不意にパンチが飛んできた。
こめかみの辺りにヒットして、一瞬真っ暗になった。
そこから数名でボコボコにされ、鼻や口から血が流れた。
「おい!コイツ、ケッコーな金持ってるぜ」
一人が財布を巻き上げた。
「あ!それは…」
「うるせぇんだよ!」
土手っ腹に蹴りを食らい、胃液が逆流しそうになるほどの苦しさでのたうち回る。
ヤンキー達はサイフの中身を抜き取ると、サイフを投げつけ、去っていった。
激痛の中、結城少年は悔しくて泣いた。
(クソっ!アイツら…絶対に許さない!)
あの連中を叩きのめすには、ケンカに強くなるしかない。
結城少年はこの日を境に、暴力的な人物へと変わっていった。
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