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優勝への道のり
バラバラなファッション
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試合後のロッカールームにて。
「おーい、チサトー!」
「あ、はい!何でしょうか?」
畑中が呼んでいる。
「チサト、これから一杯どうだ?」
夜のお誘いだった。
「えーっと…出来ればキャバクラとかそういうのではなく、普通の居酒屋とかなら大丈夫ですが」
結城はそういう場所へは行かない。
今どきのイケメンな顔で女性ファンも多いのだが、結城は女性が苦手だ。
「何だよ、ああいうとこはダメなのか」
「ええ、まぁ…ちょっと苦手というか」
「お前、モテるんだから行けばいい思い出来るぞ」
「いやぁ、何を話せばいいのかちょっと戸惑ってしまうので」
「何って、フツーの事を話せばいいだろ」
「フツーの事と言われても…」
とにかく苦手らしい。
「でも二人きりじゃな…誰か誘うか?」
「えぇ、そうですね…あ、唐澤くん」
ロッカーの一つ隣を使っていた唐澤に声を掛けた。
「はい、何ですか?」
「この後、予定とかあるのかな?」
「いえ、何も無いです」
「そうか…たまには一杯付き合ってもらえないかな?」
「えっ…ああ、少しだけなら大丈夫です」
憧れの結城に誘ってもらえるなんて…と唐澤の表情は綻ぶ。
「おぅし、じゃあこの三人で行くか!」
「えっ、畑中さんも?」
「そうだよ、オレもだよ!何だ、オレがいちゃダメなのか?」
「いや…そういうワケじゃ…」
露骨に嫌な表情をした。
「唐澤くん…いいじゃないか、たまには。大丈夫だよ、無理して飲めなんて言わないから」
「まぁ…結城さんがそう言うなら。はい、行きます」
「よし、じゃあ着替えて地下の駐車場で待ち合わせな!」
「はい、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした!」
畑中はシャワーを浴びに行った。
「唐澤くん、それじゃまた後で」
「はい、分かりました」
地下の駐車場で結城は待っていた。
「お待たせしました、結城さん」
「ようやく来たか…」
結城は球界のジェントルマンらしく、ビシッとスーツでキメている。
それに対して唐澤は今どきの若者らしく、ベースボールキャップを被り、柄物のパーカーにフードを被せ、ダボダボのハーフパンツにスニーカーというスタイル。
「唐澤くん」
「はい」
その服装に眉をひそめた。
「ボクたちはプロ野球選手なんだ。細かい事を言うかもしれないが、プロ野球選手たる者、常に見られていると思わなきゃダメだ。
そのキミの格好は、いかがなものだろうか?
決してそのファッションがダメというんじゃなく、球場に行く時の服装には似つかわしくないと思うんだが」
結城は常にスーツを着用する。
野球選手たる者、グランドを離れたら紳士であれという考えの持ち主だ。
「は…はぁ、分かりました…」
すると後方から
「オーッス!待たせたな!」
ジャージ姿の畑中が遅れてやってきた。
「結城さん…ジャージですよ、畑中さん?」
「ん?んんん、う、うん!まぁ、たまにはこういう服装もいいんじゃないのか、アハハハハハ」
さすがの結城も畑中には逆らえない。
もしこの二人がケンカしたらどっちが勝つのだろうか。
服装から何から全く違う三人は、吉祥寺の夜の繁華街へ繰り出した。
「おーい、チサトー!」
「あ、はい!何でしょうか?」
畑中が呼んでいる。
「チサト、これから一杯どうだ?」
夜のお誘いだった。
「えーっと…出来ればキャバクラとかそういうのではなく、普通の居酒屋とかなら大丈夫ですが」
結城はそういう場所へは行かない。
今どきのイケメンな顔で女性ファンも多いのだが、結城は女性が苦手だ。
「何だよ、ああいうとこはダメなのか」
「ええ、まぁ…ちょっと苦手というか」
「お前、モテるんだから行けばいい思い出来るぞ」
「いやぁ、何を話せばいいのかちょっと戸惑ってしまうので」
「何って、フツーの事を話せばいいだろ」
「フツーの事と言われても…」
とにかく苦手らしい。
「でも二人きりじゃな…誰か誘うか?」
「えぇ、そうですね…あ、唐澤くん」
ロッカーの一つ隣を使っていた唐澤に声を掛けた。
「はい、何ですか?」
「この後、予定とかあるのかな?」
「いえ、何も無いです」
「そうか…たまには一杯付き合ってもらえないかな?」
「えっ…ああ、少しだけなら大丈夫です」
憧れの結城に誘ってもらえるなんて…と唐澤の表情は綻ぶ。
「おぅし、じゃあこの三人で行くか!」
「えっ、畑中さんも?」
「そうだよ、オレもだよ!何だ、オレがいちゃダメなのか?」
「いや…そういうワケじゃ…」
露骨に嫌な表情をした。
「唐澤くん…いいじゃないか、たまには。大丈夫だよ、無理して飲めなんて言わないから」
「まぁ…結城さんがそう言うなら。はい、行きます」
「よし、じゃあ着替えて地下の駐車場で待ち合わせな!」
「はい、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした!」
畑中はシャワーを浴びに行った。
「唐澤くん、それじゃまた後で」
「はい、分かりました」
地下の駐車場で結城は待っていた。
「お待たせしました、結城さん」
「ようやく来たか…」
結城は球界のジェントルマンらしく、ビシッとスーツでキメている。
それに対して唐澤は今どきの若者らしく、ベースボールキャップを被り、柄物のパーカーにフードを被せ、ダボダボのハーフパンツにスニーカーというスタイル。
「唐澤くん」
「はい」
その服装に眉をひそめた。
「ボクたちはプロ野球選手なんだ。細かい事を言うかもしれないが、プロ野球選手たる者、常に見られていると思わなきゃダメだ。
そのキミの格好は、いかがなものだろうか?
決してそのファッションがダメというんじゃなく、球場に行く時の服装には似つかわしくないと思うんだが」
結城は常にスーツを着用する。
野球選手たる者、グランドを離れたら紳士であれという考えの持ち主だ。
「は…はぁ、分かりました…」
すると後方から
「オーッス!待たせたな!」
ジャージ姿の畑中が遅れてやってきた。
「結城さん…ジャージですよ、畑中さん?」
「ん?んんん、う、うん!まぁ、たまにはこういう服装もいいんじゃないのか、アハハハハハ」
さすがの結城も畑中には逆らえない。
もしこの二人がケンカしたらどっちが勝つのだろうか。
服装から何から全く違う三人は、吉祥寺の夜の繁華街へ繰り出した。
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