Baseball Fighter 主砲の一振り2 後編

sky-high

文字の大きさ
上 下
15 / 125
優勝への道のり

今日こそ勝つ!

しおりを挟む
2回の裏、スカイウォーカーズの攻撃は4番の鬼束から。


「鬼束くん」

打席に向かう途中、結城が呼び止めた。


「はい」


結城はバットを差し出した。


「キミが使うバットはこれじゃないか」


鬼束は普段使用しているトップバランスのバットではなく、ミドルバランスのバットを手にしていた。


「でも、今はとにかく塁に出る事が先決じゃないですか?」


「4番がそんな事言ってどうする。キミはスカイウォーカーズの主砲なんだ。思い切ってバットを振るんだ、いいな!」


「…はい!」


「期待してるよ」


鬼束の肩をポンポンと叩いた。


トップバランスのバットに変えて鬼束が右打席に入る。


いつもの様に正面でバットを構える神主打法で、マウンドのルーガーを睨みつける。


ルーガーは落ち着きがない。


(初球ストライクゾーンにきたら打つ!)


鬼束は初球を狙っている。


プレートをガツガツと踏み鳴らし、ルーガーが初球を投げた。



唸りを上げてストレートが真ん中やや高目へ。


(振り抜くのみ!)


ガコーン!という音と共に打球はセンターへ。


鬼束は打球を行方を追わず、ゆっくりとベースを回った。


美しい放物線を描いて打球はバックスクリーンへ着弾した。


「ヨシっ、1点獲ったぞ!」


「さすが鬼束さん」


「Good job!(よくやった!)」


鬼束の17号ソロホームランでスカイウォーカーズが先制した。


「さすが4番」


結城は拍手をして出迎えた。


「ありがとうございます!結城さんのアドバイスが無ければ、中途半端なバッティングになってたところです」


「ボクはアドバイスなんかしてないよ。ただ、いつも通りに打ってくれって言っただけよ」


とおどけてハグをした。


「ちょっ…結城さん!」


鬼束が真っ赤な顔をして困惑する。


「あー、鬼束さん照れてる」


「バカ、違うよ!」


ベンチはお祭りムードだ。


「Hey guys! Let's win today!(おい、皆!今日は勝つぞ!)」


トーマスが高々に叫ぶ。


「何だって?」

筧が隣に座ってる毒島に聞いた。


「えっ!さ、さぁなんでしょ」


「今日は絶対に勝つぞって言ったんだよ」


結城が二人に教えた。


「結城さんって、英語話せるんですか?」


「ん?フフっ、少しだけね」


笑みを浮かべた。


「はぁ~…スゲーな、結城さんて」


筧が尊敬の眼差しをする。


「ほら、ここがチャンスだよ皆!ドンドン攻めよう!」



キャプテンらしく皆を引っ張る。


「結城くんをキャプテンにしたのは正解でしたね」


結城をキャプテンに指名したのは榊だ。


「ん?だって、アイツが一番ケンカ強いじゃん」


榊は結城のヤンキー気質を見込んだからこそ、キャプテンは結城しかいないと決めた。


「そんな理由で決めたんですか?」


「ワハハハハハ!何でもそうだけど、アタマ張るヤツは度胸が無いとダメなんだよ」


「まぁ…決して間違ってはいないですけどね」


櫻井は選手達を見た。


確かに結城を中心に一丸となって優勝へ向かっている。


デタラメな選出だが、あながち的外れな考えでもない。


榊なりに考えたのだろうと。




一方、マウンド上のルーガーは鬼束にホームランを打たれたせいか、さっきよりも忙しなく動き苛立っている。


「カッカしてますね。今が攻めどきです」


続いて5番の毒島が打席に入る。


遠くへ飛ばす力なら、日本球界でもトップクラスだ。


その毒島に対して初球は高目に浮いたツーシーム。


「ファイヤーっ!」

気合い一発、毒島はフルスイングした。


鬼束の時よりも更に打球が高く上がり、レフトスタンドを軽々と越えていった。


「…場外ホームランだ!」


「スゲー飛距離だ」


二者連続初球ホームランで更に1点追加。


ルーガーは

「shit!(クソっ!)」

とマウンドの土を蹴り上げている。



どうやら毒島の放ったホームランの飛距離は、150mをゆうに越えているらしい。


この回で勝負は決まった。


ルーガーは忙しなく動き回り、ピッチングも雑になって四球を連発して押し出しで更に1点追加。


片山は7回に比嘉のライト前タイムリーで1点を失ったが、完投勝利で5勝目をマーク。


交流戦四戦目でスカイウォーカーズが勝利した。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完結済】ラーレの初恋

こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた! 死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし! けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──? 転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。 他サイトにも掲載しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

処理中です...